妄想小説
監禁された女巡査
第五章 折檻
真穂は、男達の前で正座させられていた。相変わらず後ろ手に手錠は掛けられたままで、首輪には二本の鎖が嵌められ、左右に立つ屈強そうな男等のその端が握られている。男等は車座になって、柱の前に正座させられている真穂を囲うように対峙していた。そして真穂の背後には柱の更に後ろに「若」と皆から呼ばれている青年風の男が椅子に座っているらしかった。真穂には振り返ってみる自由が与えられていないので、声だけでしかその存在を確認することが出来ないのだった。
「立ちションベンで、俺達におしっこを引っ掛けるとは、とんでもねえスケだぜ。この粗相の落とし前はきっちり付けてもらおうじゃねえか。」
さっきから真穂の横で竹刀を手威嚇しながら、息巻いているのは、マサという顎鬚の男だ。
「ちったあキツーいヤキを入れてやって、性根据えかえさしてやったらいいんだ。」
真穂の目の前で胡座を掻いて、腕組みしているのは、禿頭の小太りの男だ。真穂の真正面に座り込んで陣取っているのは、真穂が正座を強いられている為に、短いタイトスカートが更にずり上がって、両腿が脚の付け根ぎりぎりまで露わになってしまっていて、その奥のデルタゾーンが今にも覗いてしまいそうなのが気になって仕方ないからなのだ。両腿をぴっちり合わせている為にかろうじて下着は覗いて見えないが、ちょっと立て膝でもしようものなら、間違いなくパンツが覗く筈なのだ。
放尿シーンを演じさせられていた時は膝まで下ろされていたショーツだが、このホールへ男達に無理やり連れてこられる前に、朱美がきて、内腿の濡れをティッシュで拭い、下着もそっと引揚げたのだ。どうも朱美は真穂のシモの始末役を命じられている様子だった。
男達はホールに真穂を引き立てると、どうやって粗相の罰を与えるかを相談しているのだった。男達が真穂をいろいろ酷い目に遭わせようと提案するのだが、後ろからことごとく「若」に却下されている。「若」は、男達に真穂の身体を自由にすることを許していないのだった。
「おしっこを引っ掛けられて憤慨しているお前たちの気持ちは分からないでもないが、この女警官は僕のものだから、勝手な処分をさせる訳にはゆかない。でも、まずは、こいつの口から詫びのひとつも入れさせたらどうかな。」
「そりゃ、そうだ。おい、どうなんだ。てめえの不始末、俺等みんなの前で詫びてみろい。」
正座させられている真穂の肩を、竹刀の先でこずくマサだった。真穂の方は唇をきっと結んで無言で頭を垂れていた。
(小水を撒き散らしたのは、無理やりにそうさせられたのだ。それを謝らせるとは何と理不尽なことを要求するのだろう。)腹の中でそう思っていたが、男達を逆上させるだけなので、押し黙っているのだった。朱美に塗り込められた催淫クリームは大量の放尿で洗い流されたのか、だいぶ収まっていたが、まだ真穂の股間の芯のほうで、鈍く疼いてはいた。
「おい、何とか言ってみろ。女ポリ公っ。」
マサが今度は竹刀の先を真穂の頭に当ててこずこうとする。
「マサっ、勝手に僕のモノに手を出すな。」
背後から、若の声がぴしゃりとマサを制する。
「分かったよ。じゃあ、こうしよう。お前たちの気の済むように、この女を懲らしめるチャンスをやろう。但し、普通にしたんじゃ面白くない。おい、次郎。朱美を連れてこっちへこい。」
若と呼ばれている青年は二人を近くへ呼び寄せ、何やらヒソヒソと相談を始めたのだった。
「ふんふん、そいつはおもしれえや。早速、用意しよう。おい、おめえら。一旦、外へ出て待ってろい。」
次郎が男等に声を掛けると、男達は不承不承に立ち上がって、ぞろぞろと外へ向っていった。
次郎とマサと朱美が準備したのは、奇妙な舞台設定だった。ホールの玄関側に一本の縄が張られ、その向こう側が見物席ということらしかった。天井の梁の玄関から遠い側に新たに縄が結わえつけられ、その縄の下に真穂は首輪で繋がれる。縄は殆ど余裕なく張られているので、吊られた場所から逃れようとすると首が絞まり、真穂が立っていられる場所は殆ど固定されてしまっている。真穂の目の前に腰の高さよりちょっと高いぐらいの衝立が持ってこられる。古風な和座敷の入口にあるような、唐獅子の描かれた木製の衝立だ。それは観客席から真穂の下半身を隠す為のものらしかった。そこまで準備が整うと、次郎もマサも衝立の向こうへ行くように命じられ、若と朱美だけが衝立より真穂側に立つ。
「よしっと。じゃあ、朱美。この女のスカートとパンツを取っちゃって。」
朱美が嬉しそうに、真穂に近づいてくる。
「い、嫌っ。やめて、そんなこと。」
真穂は身体をくねらせて免れようとするが、所詮首輪で繋がれているので、どうにもならない。朱美は真穂のスカートのホックを外し、一気にずり下げる。脚の蹴りで抵抗することも出来たが、所詮手錠を掛けられた状態で暴れても、男達に抑え込まれるだけと判っているので、真穂は為されるがままになることにする。
ショーツも剥かれて足首から抜き取られると、股間の叢を隠す術もなく、ただ首をうな垂れて辱めに堪えるしかなかった。
「よし、マサっ。みんなを連れて来い。ただし、そのロープの向こう側だけだぞ。居ていいのは。」
若が玄関の傍に立っていたマサに声を掛けると、マサは(待ってました)とばかりに外へ飛び出していく。再び男連中がぞろぞろとホールの中に入ってきて、不思議な仕掛けに首を捻らせていた。
「ようし。それじゃあ、これから西瓜割りならぬ、目隠し尻叩き大会を始める。いいか。お前等、一人ずつにチャンスをやる。この革のベルトを鞭にして、目隠ししたまま、一振りだけさせてやる。上手く女の尻をぶち当てられたら、褒めてやるぞ。」
「な、何ですって・・・。」
真穂は若という青年の残酷な思いつきに戦慄を感じて震えあがった。
男達はしかし、その趣向にやんやの喝采で囃し立てている。若が手にしているのは、5cmほどは幅のある分厚い革のベルトで、鋲が並んで打たれているものだ。まともに打たれたら、腫れ上がってしまうのは目に見えている。
男達はすぐに籤を引いて順番を決めている。早速、最初の男が、真穂が着けさせられていたのと同じようなアイマスクを嵌めて、鞭になる革ベルトを受け取って試し振りをしている。
ビューンという鋭い空気を切り裂く音がすると、思わず真穂は身を竦めてしまう。
「おおい、サブっ。しっかりやれよ。」
「一発綺麗にお見舞いして思い知らせてやれっ。」
「外してもいいぞお。俺がやってやるからあ。」
それぞれが思い思いに掛け声をかけている。
サブと呼ばれた最初の男がベルトの鞭を構えて手探りで真穂の方へ近寄ってくる。
「おお、もっと右だ。右っ。」
「あと、3mくらい。」
「ちょっと待て。・・・。駄目だ。教えるのは無しだ。いいか、真剣勝負でやれっ。それで一番真芯に当てた奴だけに褒美をやることにする。」
皆が真穂の位置を声で教えようとするので、若と呼ばれる男が応援を制した。褒美と言われて、ちょっと皆の目の色が変わる。今度は俺だけが当ててやるとなって、お互いに教えあわない。最初の男が狙いを定めて、鞭を振るう。その先が空を切った。
「ひゃっほう。外れたあ。」
今度は真穂を懲らしめて仕返しをする本来の目的も忘れて、自分が褒美を取ろうと、仲間が外すのを囃し立て始める。
次の男も大きく外したが、ベルトが振られる度に、真穂は身を反らして悲鳴を挙げる。
「ちょっと待て。意外に難しそうだな。・・・。ふうむ。よし、次の次の奴も横でアイマスクをして待機をしろ。女の声で、位置の感覚を掴むんだ。いいな。」
今度は少し真穂に不利になった。三番目の男が近づいてくる。ベルトを持った手を大きく振り上げ、真下に振り下ろす。
ビューン!
「ひやあっ。」
ベルトは真穂のほんの少し右の空に反れた。しかし、思わず上げた悲鳴が次の男に、真穂の居る位置の見当を与えてしまう。
「ようし、次は俺だな。今の声でわかったぞ。いち、にい、さん、し、・・・」
次の男が、声で数えながら、確実に真穂のほうへ向って近づいてくる。真穂は、覚悟を決めて唇を噛み締めて待つ。
ビューン!
再び鞭はほんの少し外側へ逸れてしまった。
「・・・。」
今度は真穂は声を立てるのをかろうじて堪えた。声が次の男へ位置を教えてしまうのだと悟ったのだ。
「お、今度は声が聞こえなかったぞ。くそう。ヒントがないじゃないか。」
次の男は、真穂が声を挙げなかったのを口惜しがっている。歩いてくる方向が少しずれている。真穂がほっと安堵するが、真穂の期待は裏切られることになる。
「ようし、そんならこっちにだって考えがあるぞ。皆な縦に振るから外すんだ。こうやって横に払えば絶対に当てられる筈さあ。」
次の男が言うのを聞いて、真穂ははっとなった。今までは何とかかろうじて外れて助かったが、男の言うように、鞭を横に払われたら、かなりの確実さで鞭が当たるのは避けられそうにない。
「いくぞおっ。」
ビューン、ピシン。
「あううっ。」
鞭の先が真穂の腿の後ろ側を掠めたのだ。掠めただけなので、ダメージはそれほどではなかったが、打ち据えられる恐怖感に思わず、真穂は声を出してしまっていた。
「惜しいな。尻は外れたぞ。」
若が後ろ手冷静に判定する。鞭を横に振るのは、考えているほど容易いことではなかったのだ。当てやすい代わりに力が篭め難い。しかもベルトを水平に振っているつもりでも、ベルトは重力で意外と曲がってしまうのだ。
「おいおい、もう後二人しか居ないぜ。」
誰かが不満そうにそう言うのが真穂にも聞こえてきた。
(あと二人なのだ・・・。)
真穂には、あと二人が外してくれるのを神に祈るしかなかった。
「ようし。今の声で大体の場所は判ったからな。横に払うのは難しそうだから、今度は斜めに振り下ろしてやる。」
その言葉に真穂は絶望的になる。
「いち、にい、さん、しい・・・。」
男が確実に近づいてくるのが判った。真穂は目を瞑って身構える。
「とうりゃあ。」ビューン、バシッ。「ううっ、・・・くくっ。」
男が振り下ろした鞭は鈍い音を立てていた。近づきすぎた為に、真穂の肩を打ったのだ。肩は着衣があって剥き出しでは無かった分、救われたが、それでも衝撃は大きく、真穂はつい声を立ててしまったのだった。
「残念だな。あと一人だぞ。」
「おう。大丈夫さ。俺が仕留めてやる。」
真穂は声から最後になったのが、次郎であるのを知った。次郎は真穂がつい立ててしまった声の位置を確実に覚えていた。真直ぐ真穂に近寄ってくる。
「・・・・。」
真穂は、生唾を呑んだ。
「そりゃあ。」ビューン、パシーン。「ぎゃあああ・・・。」
真穂が大きな悲鳴を挙げた。しかし、次郎が振り下ろした鞭は真穂の剥き出しの腿を打ったのだった。
「さすがに次郎は勘がいい。しかし、そこは尻じゃなくて、腿だった。惜しいな。」
腿の激しい痛みに、真穂は口をへしまげて堪えていた。しかし、やっとこれで解放されると安堵を感じ始めていたのが、若の次の言葉で裏切られる。
「しょうがないな。見本を見せてやる。今度は僕がやってみせるから。お前達のリベンジだ。」
若が吊るされている真穂のすぐ後ろをすり抜けて反対側へ行くと、隅に居た朱美からアイマスクを受け取って装着する。続いてベルトを受け取るとその重さ、振り具合を確かめている。
「おい、朱美っ。女の尻をちょいと突いてやれ。」
朱美が言われた通りに真穂の背後に回りこむと、両手の人差し指を合わせて構えると、裸の尻たぶ目掛けて突き上げた。
「きゃあっ。」
子供が悪戯でやる、所謂カンチョーというやつだ。衝撃は激しくはないが、つい声を挙げてしまう。それが、若への位置の合図だったのだ。
ヒタ、ヒタ、ヒタ、・・・。若は真直ぐに真穂の真横へやってきた。くるりと踵を返すと、真穂の方へ向き直る。それから両手でベルトを二つに折ると、束ねて短くしてから輪になった側を狙いをつけた場所に振り回す。
パシーン。
小気味よい音が部屋じゅうに木霊すると、男達が一斉に歓声を挙げる。
「大当たりでえす。」
朱美が、若に代わって、判定の声をあげた。
「いいかい、尻を打つ鞭ってのは、こうして使うものなのさ。」
そう言うと再びベルトを束ねた鞭を振るう。
パシーン。
「あううっ・・・。」
再び小気味よい音が響き渡ると、真穂の眼尻に涙が溜まる。
「どうだ、皆なに詫びる気持ちになったかな。」
揶揄するように真穂に声を掛けると、若は再度鞭を振るう。
パシーン。
「あううっ、い、嫌っ。」
パシーン
「ひいっ・・・。ま、待って・・・。」
真穂はうな垂れていた首をゆっくり挙げて、歓声を挙げている男達を見つめる。
「も、申し訳、あ、ありません、でした・・・。わ、わたくしが、・・・私が悪うございました。」
それだけやっと言うと、涙ながらにうな垂れるのだった。
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