妄想小説
監禁された女巡査
第八章 回想
その日も真穂は、廻ってきた電車内巡回の痴漢撲滅キャンペーンの為に、早出をして超満員状態の都心へ向う通勤電車の中に、私服で乗り込んでいた。真穂が目を付けていたのは、先ほどから制服姿の女子高生にぴったり張り付くようにして後ろから寄り添っている若者だった。まだ未成年かと思われる風貌で、大学生のようでもあった。その男の不自然な肩の動きを真穂は見逃さなかった。明らかに目には見えない下腹部の辺りで指を動かしているのが、力の篭めようで肩の不自然な動きとして現れるのだ。大学生の目の前の女子高生は先ほどから顔を俯かせていて、よく見ると涙を浮かべているようにも見える。
真穂は男に気づかれないように、周りの乗客を押しのけながら、じわりじわりと男の背後に近づいていた。超満員のスシ詰め状態なので、自由に行き来出来る訳ではない。それでも電車が大きく揺れる度に、少しずつ身体の向きを替えながら、乗客の間をすり抜け、何とか男に近づこうとしていたのだ。
真穂が男まで1m位のところまで何とか辿り着いたところで、乗客と乗客の間から、ちらっとだけ男の手が女子高生のスカートの中に潜り込んでいるのを認めた。女子高生の襞スカートは大きく乱れて、腰の付近まで捲りあがっていて、少女の白い腿がちらっと垣間見られた。
(よし、現行犯逮捕だ。)
素早く動いた真穂の手が、男の手首を確実に捉えた。そのまま合気道の技を使って肩の上へ捩じ上げる。
「いてててっ・・・・。」
男は突然の痛みに堪えかねて、悲鳴を挙げかかったが、何とか言葉を飲み込んだ。その男の耳元に真穂は周りの乗客にはあまり聞こえないように小声で囁く。
「次の駅で降りて貰うわよ。」
真穂のほうを向き返した顔は、蒼褪めていた。睨みつける真穂の形相は、普通の乗客ではないことを物語っていた。男は観念したように、軽く頷くと手を取られたまま、顔を落とした。
電車が減速を始め、車両は駅のホームに滑り込んでいく。乗客がどっと前向きに倒れかかってくるが、真穂は抑えた手首の力を緩めず、何とか持ち堪える。
電車が停まり、ドアが開いたところで、男の手首を捉えたまま、まわりに「降りま~す。」と声を掛けながら、ドアに向う。傍に居た女子高生にも声を掛けるのを忘れない。
「貴方も一緒に降りてっ。事情を聞かせて貰うから。」
真穂は万が一少女が被害を申告しない場合でも、警察官の現行犯逮捕で立件は出来ると踏んでいたが、被害者の申告があるほうが、話は早く進むのも事実だった。
男を先に突き出し、真穂も続いて車両の外に出ようとした瞬間、誰かの肘がまともに真穂の脇腹を打った。
(うっ・・・。)
一瞬、男の手首を握っていた手の力が緩んでしまった。それを気づいたのか、男が真穂の手を一気に振り切って、走り出した。それを見て、真穂も慌てて追い駆けようと走り出たところに誰かが足を引っ掛けたようで、真穂はホームにそのまま転んでしまった。得意の合気道で普段から受身を訓練しているので、咄嗟に身体を回わしてコンクリートの床に肩をもろにぶつかるのは避けたが、完全にバランスを失ってしまったので、無様に脚を開いて転がる結果となってしまった。通勤のOLに見せかける為に、態とタイトなビジネススーツ風のスカートにしていたのも、真穂にとっては、運が悪かった。無理して体勢を取ろうと脚を開いたので、タイトスカートは大きく裾が割れて太腿のかなり際まで覗いてしまった。傍に居た男たちの視線を一斉に浴びるのを感じて、慌てて手で裾を抑える。
周りの視線に一瞬身体が凍り付いてしまったが、すぐにはっと正気に返り、逃げていく男のほうへ視線を移す。男はちょうどホーム途中の階段から階下にある改札のほうへ走り抜けていくところだった。
ずきんとする痛みを肩に感じたが、堪えて立ち上がり、真穂も階段へ向って走り始めた。服の下の何処かで擦り剥いて、血を滲ませているだろうと思いながらも、そんなところを庇っている余裕もなかった。階段を殆ど跳ぶように駆け下りたが、階下の通路は人ごみで一杯に溢れていて、男の姿はその中に紛れてしまっていた。特に特徴のない黒っぽい服だったのは記憶していたが、あまりの人の多さに、その中から特定の男を見つけ出すのは最早不可能だった。
(しまった。取り逃げしてしまった。)
落胆しながら、一応ホームへ戻ってみた真穂だったが、最早電車は出た後で、被害にあっていた筈の女子高生も居なかった。
真穂は電車を降りる瞬間のことを思い返していた。確かに誰かが肘で突いてきて、真穂の足を引っ掛けたのだ。しかし、真穂のほうはそちらを気にしている余裕は無かったのだ。肘を当ててきて、足を引っ掛けた輩のほうは、真穂は全く見ることが出来なかったのだ。女子高生さえ見つかれば、そっちは見ているかもしれないと思われたが、その少女のほうも消えてしまっていた。
その日が真穂にとって、初めての検挙失敗の経験だった。以来、キャンペーンで電車に乗る度に逃がした痴漢を探していたのだが、同じ男にはもう出遭うことは無かったのだ。しかし、それが若と呼ばれていた男であったことに、真穂は漸く気づいたのだった。しかし、真穂にはその男を検挙することが出来ない。そればかりか、周り中にいる痴漢たちに自分の身体を好き放題させて何の手出しもしないよう命じられてそれに従わざるを得ないのだった。
真穂は、痴漢たちの責めを甘んじて受けながら、その様子を垣間見ている若と呼ばれる男のほうを、吃とした目で睨むように捜した。目が合った時、男のへの字に捻じ曲がった唇がにやりとほくそえんだ気がした。
(そうだ。あの男は仕返しをしているのだ。痴漢として捕らえようとした自分に、罰を与えるかのように・・・。)
真穂は男の意図に初めて気づいて、改めて口惜しさに唇を噛んだ。
痴漢たちの手の動きは、真穂が逃げることも抵抗することもないことを知って、どんどんエスカレートしていく。間違って触れたかのような感触だったものが、今では露骨に触りまくってきていた。手が出せない尻たぶのほうでは、スカートが捲り上げられ始めていた。真穂は首輪から手錠へ繋がれた背中の鎖のせいで、お尻のほうへ手を下ろすことさえ出来ない。それをいいことに、最初はスカートの上から触っていたのを、スカートの裾を引っ張り上げ始めたのだ。満員すし詰め状態なので、真穂の捲られたスカートから覗く太腿は誰かに見られるということは無かったが、逆に真穂の窮地を誰にも救っては貰えないということも意味していた。後ろの男の手はとうとうスカートの中に潜り込んで、尻たぶの下の生脚の肌に触れてきた。男の手の冷やっとした感触に背筋にぞくっとしたものが走るのを真穂は感じた。そのままその手が股の付け根に這い上がってくるのは時間の問題だった。
前のほうでは、鞄の取っ手を握り締めるような振りをしながら、手の甲をくの字に折って、その角を真穂の恥骨の上へぐりぐりと押し当ててきていた。その指の動きはあるときは速くなり、ある時はじっくり、ゆっくりと感触を楽しむかのようで、明らかに真穂が反応するのを確かめながら、刺激を与えてくるのだった。その男は横を向いて、知らぬ振りをしてはいたが、呼吸は明らかに荒くなっていた。目で確かめることは出来ないが、もう一方の手は自分の股間に当てられているようで、おそらく勃起し始めているその一物を手で慰めているに違いなかった。
その電車は通勤快速というタイプのもので、都心に近づくにつれ、停車しないで通過する駅が増えていった。そのことは、痴漢たちにたっぷりと楽しむ時間を与えてしまっていた。真穂にとっては地獄の責め苦の時間だった。無理に振り払うことは許されていない。すぐ近くで後ろから次郎が見張っている筈だった。逆らえば、人質の少女の安全は保障されない。真穂は痴漢たちに自分が嬉しがっていると思われるかもしれないと危惧しながらも、じっと責め苦に堪えているしかないのだった。
後ろからスカートを捲り上げていた男の手は、とうとう真穂の下着の端にまで届いていた。真穂がじっとしているのを了解と取ったのか、今度は指を捻じ曲げて、下着の中に指を忍ばせようとしてきた。これには真穂も慌てた。痴漢にそこまでされるとは思っていなかったのだ。真穂には腿を閉じ合わせて男の手を抑え込むことしか出来ない。しかし、それは男の手を受け入れているようにも取られかねないのだ。腿と腿をぴったり閉じあわせたところで、脚の付け根では所詮、隙間が出来てしまうのだ。男の指は尻タブの割れ目へぴったりと押し当てられ、指先だけがショーツの端から内部へ滑り込んできてしまった。その指の先はゆっくりと尻の割れ目にそって降りてゆき、鼠蹊部にまで到達し、更にその先の陰唇を目指しているのは明らかだった。
(い、嫌っ。)
真穂は思わず声を挙げそうになるのを、必死で堪え、悲鳴を呑み込んだ。
前の方の男も、指の甲で恥骨の上を擦っているだけでは飽き足らなくなったのか、指を二本にしてクリトリスの上を挟み込むようにしながら、揉みしだき始めた。真穂は腿の横のほうにも誰かの手が伸びてきていることに気づいていたが、そんなことが気にならないくらい、真穂の股間は前からと後ろからの責めで危機的状況にあった。
遂に後ろの男の指が真穂の陰唇を捉えてしまった。指がするっと滑り込んできたことで、自分が潤んでしまっていることを知った。真穂は情けなさに再び唇を噛み締める。男達に屈してしまった思いだった。ぬるっとした陰唇の内部を男の指が非情にも責め捲る。後ろの男はすっかり、真穂が気持ちよがっていると思い込んでいるようだった。もはや遠慮は全くといってなかった。
後ろの男の指が大胆に動くことで、前から指を押し当てていた男のほうにも異変が感じられたようだった。横を向いていたのが、真穂のほうへ向き直ってきたのだ。甲のほうの手で触れていたのが、掌が返され、スカートを前からも捲り上げ始めた。前の男も遠慮がなくなってきたのだ。
前の男は陰唇が既に他の痴漢に占拠されているのに気づいているようだった。前の方の男は別のアプローチを仕掛けてきた。男が真穂と真正面に向き合うように向きを変えてくると、真穂は太腿に熱くなった肉棒が押し付けられてきたことを感じた。当初それはスカートを通して真穂の腿のほうに押し当てられていたのだが、その間にあるスカートの布地を、男の股間に当てられていた手が、スカートをずり上げてしまったのだ。肉棒の先端はすでに濡れているようだった。べとっとしたぬめりが生脚の肌を濡らすのが判った。男は更に向きを変え、なんとか怒張したペニスを真穂の脚の間に割り込ませようとしているようだった。が、そこには既に後ろから伸ばされた手が塞いでいる。男はペニスの先を上へ引っ張りあげ、持ち上げたスカートの中に滑り込ませる。ペニスが恥骨の上の部分に押し当てられるようになると、今度はスカートの下に手を突っ込んで、真穂のショーツを脱がせに掛かったのだった。熱くなった怒張は力を篭めたり緩めたりを繰り返している。男が真穂に押し当てているペニスを真穂の身体にあてたまま暴発させようとしているのが、真穂にも感じられた。しかしそれから逃れる術はないのだ。
ショーツは前からは脱がせ難い。仕方なく、男はショーツのゴム部分を引っ張りさげて、無理やりペニスを捩じ込もうとする。ショーツがずり下がって、裸の腹にペニスが触れた途端にそれは暴発したのだった。生暖かい温もりが、下腹部と下着を濡らすのを真穂は感じた。
その時、電車は漸く次の駅へ向けて減速を始めたのだった。
電車の中の痴漢たちに散々弄ばれた末に、漸く真穂は男達のアジトへ連れ戻されたのだった。駅で待っていた車に乗せられると、すぐに目隠しが嵌められ、声も立てられないように猿轡が噛まされた。男達は自分たちのアジトの場所を悟られないように用意周到だった。監禁されていた同じ柱の前で天井の梁から吊られて動けないように括りつけられてから、漸く目隠しと猿轡が外された。
「どうだい、楽しかったかい。随分とあそこを濡らしていたようだからな。」
目の前には若と呼ばれていた男が、サングラスはしたままだったが、真穂の真正面に立っていた。次郎とマサは柱の背後に控えている様子だった。
「貴方、私が以前に捕まえそこなった痴漢でしょう。」
真穂は若のほうを吃と睨みすえながら、声を荒立てた。
「やっぱり判ったかい。そんな目付きを電車の中でもしていたからな。」
「いったい、どういうつもりなの。仕返しのつもり、これは。」
若は不敵な含み笑いを浮かべながらゆっくりと真穂に向って話し始めた。
「仕返しか。・・・。そんな甘いものじゃあないな。まあ、言わば懲らしめってやつかな。電車の中で余計なことをしていたことの罰を受けるってことだな。」
「な、何ですって・・・。」
「お前たちが、余計なパトロールをして、しかもその上に俺様を捕まえようなってふざけた真似をしてくれた報いを受けるのさ。二度と痴漢を捕らえようなんて気を起こさなくなるまでな。」
真穂には、開いた口が塞がらない思いがした。痴漢を捕らえる女性警察官に懲らしめを与えるなどとは、真穂には許し難い行為だった。
「私たちは公務でやっているのよ。それに痴漢は犯罪行為なのよ。そ、それを・・・・。」
「犯罪行為をされて、股の間を濡らしてよがっていたのは、どこのどいつだっ、ええっ。」
若は拘束されて手出し出来ない真穂の顎を手でしゃくりあげようとする。
「嫌っ。」
真穂は、顔を背けると、痴漢行為を受けて居た時の自分の身体の反応を思い出して、恥かしさに下を向いてしまう。
「次郎の話じゃ、あの最中に、ぴちゃ、ぴちゃ、音がしていたそうだぜ。公務執行中の女警官が、あそこに指入れられて、濡らして音と立ててちゃ、拙いだろう。ええっ。」
若は真穂のことを嘲るように俯いている真穂の髪の毛を掴むと、無理やり上向かせる。真穂は口惜しさに唇を噛み締めながら、若のほうを睨み返した。
「そうだ。お前が電車の中でどれだけ下着を汚したか、組のやつらにも見せてやろう。おい、マサっ。こいつのパンツを脱がして裏返してから、こいつの胸元に広げて見世物にしてやれ。」
「い、嫌っ。そんなこと・・・。」
若の陰険な虐めの言葉に、真穂は戦慄を感じながら、うろたえ始めた。
真穂は、次郎とマサの二人掛かりで後ろ手に吊られたまま、下着を引き剥がされた。真穂の目の前で脱がされたばかりのショーツが裏返され、陰唇があたっていた部分に出来ている沁みを真穂にも見せ付けてから、そのショーツを裏返したまま、安全ピンで真穂のブラウスの上から留められてしまったのだった。真穂は、恥かしさになんとか隠そうとするのだが、後ろ手に繋がれたままでは、どうにも出来なかった。
その格好はまさに晒し物だった。その日も、組の男たちらしい者が真穂の捕えられ繋がれたホールを何人も入れ替わりで通り過ぎた。男達は次郎やマサから聞かされているらしく、真穂のほうへ近寄ってきては、胸元の汚れた下着の中心をじっくり眺め回し、真穂に辱めの言葉を与えては去っていくのだった。
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