静香への折檻
八
顔を仰け反らせるようにしてキスしようとしてくる男から顔を背けていた静香だったが、両手を縛られて吊られている身では逃げるにも限度があった。男の唇が静香の口を捉えるといきなり舌を突っ込んできた。舌を刺し入れられるともう観念するしかなかった。男の執拗な舌の動きに静香も舌を合わせて絡めるしかなかった。やがて男のものだか、静香自身のものかも判別がつかないような唾液が二人の口の周りから溢れて垂れてくるのだった。
男の執拗なディープキスは永遠に続くかに思われたが、さすがの男も舌の筋肉が攣りそうになってきて、ようやく静香の口から顔を離したのだった。
「はあい。そこまでぇ。お疲れさんでしたあ。」
おしぼりを手にしたエツ子がキス男の顔を拭いてやる。しかし静香の方には見向きもしない。
「あら、口紅がすっかり取れちゃったわね。そんなすっぴんじゃ色気もないから口紅だけは塗ってあげるわよ。」
朱美がそういうと、唾液でべとべとになっている口の周りをさけてスティック状のリップを静香の唇にあてる。それはしかし娼婦がするような真っ赤な濃い色のルージュなのだった。
「さあ、皆さあん。次のゲームに入りますよぉ。お次は痴漢ごっこゲームでえすぅ。」
「ち、痴漢ごっこ・・・ゲーム? どういう事?」
静香が不安気に朱美に問いかけるが、朱美は静香のほうを見向きもしなかった。
「さっき、一人の方がこの静香ちゃんと濃厚のキッスを楽しみましたが、外れてしまった皆さんへのリベンジとなりまあす。今度はキッスは禁止だけど、濃厚なタッチプレイが楽しめますよぉ。今回参加出来るのはお二人でぇすぅ。参加したい方は、アシスタントが籤を持って廻りますので、お手を挙げて参加意志をご表明くださいませぇ。」
朱美のアナウンスに、再びエツ子が籤を持って会場を廻ってゆく。観客の殆どの者が籤を引いてゆく。
「お、当たったぞお。やったあ。」
「あ、畜生。だけどもう一つ当たりがある筈だ。きっと当ててやるっ。あ、ちぇえっ。外れかあ。」
「あ、当たった。当たったぞう。」
会場で二人の男が歓声を上げていた。
「それでは当たり籤を引かれたお二人は檀上へお上がりください。ただいまからルールを説明させて頂きまあすぅ。」
二人の男が仮面を着けたまま、檀上の静香と朱美の傍へやってくる。
「お二人にはさきほどの方と同じ様に両手を後ろ手にこのハンカチで縛らせていただきまあす。痴漢ですが、手は使えないルールなので御了解くださあい。そしてもうひとつ禁止事項がありまあすぅ。それはキッスはご法度。あ、とはいっても唇へのキスが禁止なだけで、うなじや耳元を嘗めたりすることはご自由に出来まあす。それからご自分の身体を静香ちゃんに擦りつけるのもご自由になさっていただけまあす。」
朱美が説明している間にも、二人の後ろに廻ったエリ子が二人の両手をハンカチで緩く縛ってゆく。
「もうひとつ。男性にはハンデを付けさせていただきます。この目隠しも着けて頂きまあす。お二人には静香ちゃんが洩らす声で静香ちゃんの居る場所を探し出していただきまあす。」
いつの間にか用意していたアイマスクを二人の男の仮面の上から被せてしまう。
「痴漢ごっこゲームはゲームですので勝敗がつきまあす。静香ちゃんが『もう止めてっ』て声を挙げたら男性お二人の勝っ。静香ちゃんは敗けになるので罰を受けて貰いまあす。静香ちゃんが『もう止めてっ』って声を挙げる前に、男性側のほうが射精してしまったら男性の方の敗けです。その時は静香ちゃんはご褒美を貰えまあす。ルールは判りましたかあ?それじゃあ始めまあす。ミュージック、スタート。さ、男性、二人を目隠しのままぐるぐる廻してっ。」
そう朱美が声を掛けると、エツ子とエリの二人が男性の方をそれぞれ取ってぐるぐる廻していく。
「あれっ、どっちだ。静香ちゃんは何処にいるんだ?」
二人の目隠しされた男が静香の身体を求めて嗅ぎまわっている。その姿に観客たちはやんやの歓声を上げる。
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