照明暗転

あざとアイドルへのお仕置き折檻



 六

 薄っすらと点いていた明かりも落されて、みづなは暗闇の中で繋がれたまま一人で立たされていた。突然、聞き覚えのあるミュージックが大音響で流れる。みづなが昔、デビュー当時にやっていたアイドル系グループ、スキャンティ・セブンの登場音楽なのだった。この音楽を聴きつけた緞帳の向こう側にいるらしい客席の男たちからはどっというどよめきと共に大歓声が上がっていた。その中には「ミヅナチャーン」と自分を呼ぶ声も混じっているのをみづなは確かに聴きとっていた。
 その時、突然目の前の壁が動き出したような気がする。壁と思っていたのは暗かったせいで、明らかにそれは緞帳なのだ。それが静かに上にあがっていく。すると観客席の薄明りが洩れてきて、次第に状況がみづなの目にも明らかになっていく。上ってゆく分厚い緞帳の向こう側に見えてきたのは、嘗て慣れ親しんでいた小劇場の観客席だ。五十人も入れば満席になってしまう程度の広さしかないのだが、デビュー仕立てのみづなたちが出演した頃はその席すらも全てが埋まることは稀だった。

 突然、背後に照明が点いたのを感じる。みづなにはスポットライトが当たっていないので観客席からはシルエットでしか見えない筈だ。それでも観客たちはそこに立っているのがみづなであることを既に悟っているようにみえた。
 「お待たせしました。皆さん。元、スキャンティ・セブンのトップアイドル、みづなの登場でえ~す。」
 舞台の袖に移っていた朱美のおどけたような紹介の声がマイクから響く。そして一気にみづなの身体に左右両方から煌めくようなスポットライトが浴びせられる。みづなの両手が頭の上で括りつけられて吊られている様子が一気に観客の目に入ってくる。みづなが観に付けているのは超が付くようなミニドレスで、両手を挙げている為に裾がずりあがって、下着が覗くぎりぎりまでしか身体を蔽ってくれていない筈だった。ストッキングさえ着けていない生足の太腿がこれみよがしに男達の目に飛び込んでくるのだ。男達はよく見ると皆、顔の上半分を隠す目の部分だけが開いたマスクを着けている。袖にいる朱美たちまでもが何時の間にか両端が尖ったピンクのアイマスクを着けている。素顔を晒しているのは小劇場の中でみづな独りなのだった。
 「本日は、これまでのスシャンティ・セブンの舞台とは趣向を変えて、ここに居りますみづな本人が皆さまに心ゆくまでサービスをするエンターテインメントショーとなっております。お客様は普段の鬱憤を晴らすべく最後までお愉しみください。」
 晒し者にされている自分の立場に気づいて何とかその場を逃れようともがくみづなだったが、両手首に食い込む縄はびくともしないのだった。
 「イェーイ。みづなチャーン。いい格好だぜ。パンツ、見えそう。」
 ふひゃひゃひゃというような下品な笑い声が唱和する。アイドル時代のような温かい声援とは全く異なるものだった。明らかにみづなの窮状を楽しんでいる様子だった。

静香

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