静香への折檻
七
「それでは、ショーの最初は静香からのキスのプレゼントがございます。キスを受けられるのはこれから場内を回りますアシスタントが持っている籤をご希望される方ひとりずつ一本引いて頂き、めでたく当選した方ひとりのみとなります。それではアシスタントが会場を廻りますので、籤を希望の方は手を挙げて御意志を表示くださいませ。」
ハーイ、ハーイとあちこちで声がかかり手も上がってゆく。
「い、嫌よ。知らない男とキスだなんて。」
「お前には断るって選択肢はないんだよ。」
いつの間にか背後に近寄ってきていた朱美が手にした鞭の柄をしごきながら静香に冷たく言うのだった。
「お客様にしていただくのはアイドル時代の清純な静香のキスではなく、場数を踏んですっかりエロの修行を積んだ現在の静香が行うディープキスとなります。舌を心ゆくまで絡めて濃厚なキスをお愉しみいただけます。」
いつの間にか場内アナウンスは同じ様にアイマスクで顔を隠したエリに代わっていた。
静香の背後に廻った朱美は静香の耳元に囁くように指示を与える。
「さ、舌を出すのよ。あいつらに見せてやりな。」
「い、いやよ。そんなこと・・・。」
「断れる立場じゃないって言ったろ。」
そう言うと、朱美は手にした鞭の柄を逆手に持ち、静香のミニドレスの後ろから尻の割れ目に向けて柄の先を突き立てる。
「あうっ・・・。」
それは逆らえば、あの地獄の拷問を再度与えるという脅迫に他ならないのだった。
静香は口惜しさに首をうなだれて唇を噛んだが、逃れる手立てはないことを悟り、顔を上げて舌を思いっきりだす。
「舌を出すだけじゃなくて、舐め上げるように舌を動かすんだよ。」
再び鞭の柄で尻の穴付近を突きたてられ、仕方なく指示されたように舌舐めずりをしてみせる静香だった。
「いよう。色っぽいぜ。ああ、キスしてみてえなあ。」
観客席から声があがる。
「あ、あたりが出ましたあ。こちらの男性でえすぅ。さあ、ステージへおあがりくだあい。」
観客席を籤の箱を持って廻っていたのは、朱美のもう一人の子分、エツ子だった。そのエツ子に導かれて檀上に上ってきたのは、いかにもオタクという格好の小太りの若い男だった。
「へっへっへっ。静香ちゃ~ん。キス、させて貰うよおっ。」
顔半分を蔽うマスクの下で覗いている眼がぎらついているのが静香にもよくわかる。
「い、いやっ。」
思わず顔をのけぞらせようとする静香を朱美の鞭の柄の先がまたしても静香の尻を小突く。
「さ、幸運な籤をお当てになってお客様。キスに先だって両手を後ろ手にこのハンカチで一時縛らせていただきますね。キスの間、使っていいのはお口と舌だけというルールになっております。宜しいですね。」
「ディープキッスをさせて貰えるんなら、手ぐらい縛られたってなんともないぜ。さ、早く縛ってやらせろや。」
キスを当てたオタク男は自分から両手を後ろに回して、ハンカチを手にしているエツ子に催促する。
「はいっ、いいですよ。準備出来ましたあ。」
突然場を盛り上げるかのように音楽が流れ始める。「キッスは目にしてっ!」というアイドル時代のスキャンティー・セブンがカバーしていた楽曲だった。それに合わせて観客たちは手拍子で囃し立てる。
「やっちまえ~。」 「いいぞ。」 「やれやれっ。」
男たちは口ぐちに囃し立てるのだった。
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