静香への折檻
五
「ねえ、もう充分私のこと、虐めたんだからもういいでしょう。この縄を解いて、わたしを解放して。」
「アンタって、本当に馬鹿だねえ。これで赦す訳がないじゃない。これからが本番なのよ。いままでのはこれからの為の準備に過ぎないの。」
「え、まだ私を虐めようっていうの。」
「さっき言っただろ。もう忘れたのかい。これまでお前がさんざんコケにしてきた男の奴等がお前に折檻して溜飲を下げようっていうんだよ。ま、私達もだけどね。」
「これから先、わたしに何をしようっていうの・・・。」
「それはこれからのお愉しみだから教えちゃったら愉しみも半減だからね。だけど、ここがどういう場所かは分かっているんだろうね。」
「え、わからないわ。拓哉がここへ連れてくるとき驚かせたいからって目隠しを着けさせてたから。」
「へーん、分からないんだ。もっとも分からないように辺りに明かりは点けないように気を付けてはいたんだけどね。アンタには馴染みの場所なんだけどね。」
「え、私に馴染の場所? え、まさか・・・。ここって、・・・。」
「気づいたようね。そう、ここはアンタがデビュー当初、何度も来てたステージがあった場所よ。アンタらが下手っくそな踊りと下手っくそな歌で、ぎりぎりのミニスカートでパンチラまがいの振りだけで男達を呼び集めていたあのステージがあった劇場よ。思い出した?」
「どうして、こんな場所に私を呼び出したっていうの?」
「アンタはここでこれから特別ショーをやるのよ。アンタがコケにしてきたオタクの可哀想な連中を前にしてね。アンタを辱めるショーをやるって呼び込みをしたら大勢来たわよ。アンタの嘗ての、そして裏切られたファンたちがね。」
「わたしにここでショーをやらせるですって? どういうつもり?」
「ふふふ。今にわかるわよ。ただ、普通のアイドルショーでない事だけは言っておくわね。さあ、エミィ。そろそろ準備もいいようだから、あいつらを客席に誘導して。そして私が合図するまでは緞帳は揚げちゃ駄目よ。いいわね。」
「あいよー。じゃあ、客席に男達を入れるわね。」
「頼むよ。」
「ねえ、客たちって誰なの?」
「アンタを昔、アイドル扱いしてコケを喰らわせられた連中よ。アンタも知ってる奴等かもしんない。ただ,皆んな仮面を着けて来てる筈だから顔はわかんないかもね。」
静香はまだ状況がつかめずに目を白黒させているが、どうにも拙い状況なのだけはなんとか理解していた。
「さ、これを呑んどきなさい。これからショーの途中で喉がカラカラになるわよ。今のうちよ。」
そういって朱美から口に当てられたジョッキに入った何かの飲み物を静香は無理やり呑まされる。それが何かを知るのはショーのクライマックスとなる後半になってからのことだとはこの時の静香には思いつく筈もなかった。
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