騙された新人女優とマネージャー
第三部
四十九
ピン・ポーン。ピン・ポーン。
何処か遠くでインターホンの呼び鈴が鳴っているような音がしていた。次第に覚醒してくるにつれて音がはっきり聞こえるようになる。誰かの話声がしていた。
(深沢監督の声だわ・・・。)
隣の部屋の声が洩れ聞こえてくるらしいので身を起こそうとして茉莉は裸で縛られて椅子に括り付けられたままであるのに気づく。股間の違和感は異物がまだ埋め込まれたままであることを示していたが、鈍い振動と激しい蠕動は既に収まっていた。しかし自分ではそれを取り外すことが出来ない。
遠くから聞こえてくる深沢監督の声は途切れ途切れで、時々(勘当)とか(遺産)とか言った言葉に交じって明らかに苛立って怒り狂っているらしい様子をそれとなく伝えていた。
隣室から洩れ聞こえてくる声が収まって暫くしてから部屋のドアが開いて監督が現れた。
「ああ、目覚めたようだね。今、縄を解いてあげよう。あまりに気持ちよさそうに眠っていたので縄を解いて起こしてはいけないかと思ってそのままにしておいたんだ。」
深沢は始めに股間の異物を腰縄に結び付けていた紐から解いて陰唇からそっと抜き取る。茉莉は恥ずかしさでわざと目を逸らしてそれを見ないようにするが、その先はまだ濡れそぼっているに違いなかった。
「あの・・・。先ほど隣の部屋から声が聞こえていましたが。」
「ああ、聞こえていたのかね。息子だよ。いや、玄太という元息子と言ったほうがいいだろう。別れた妻の連れ子なんだが、もうとっくに縁は切ってある。それなのに遺産相続だなんだと言って訪ねて来ようとしているのでいつも門のところで追い返しているのだよ。」
「そうだったんですか。あの、わたし・・・。変に乱れていませんでしたでしょうか?」
「いや、おかげでとてもいい画が撮れたよ。永久保存版といっていい。」
「は、恥ずかしいです。決して世の中に出回らないようにして頂けますよね。」
「ああ、勿論だとも。」
縄を解かれた茉莉はそそくさと着衣を身に纏う。
「あの、映画の撮影準備のほうは順調なのでしょうか?」
「ああ。君のところの手塚くんといったかね。彼女のところにももう台本は届いている筈だ。」
「ありがとうございます。彼女も張り切って本読みを進めているようです。」
「そうか。ところで今度は二日後にまた時間が取れるかね。もう少し別の感じで撮ってみたいのだが・・・。」
「承知致しました。お伺いします。」
茉莉は由里の撮影が始まるまではしっかりと深沢のプライベートモデルの仕事を務めるつもりでいた。しかしそれを務めている間に次第に自分の身体の方がモデルを務めることを求めるようになっていることにも気づいていた。(枕営業・・・?)ふとそんな言葉が茉莉の頭を掠めるが、茉莉は自分の心の中できっぱりと首を振る。
(違うわ。深沢先生の芸術活動をお支えしているだけだわ。これはれっきとしたモデルの仕事なのだ・・・。)
そう自分に言い聞かせる茉莉だった。
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