単身乗り込み

騙された新人女優とマネージャー



 第三部



 四十二

 「あなたが須藤っていうフリーの記者ね。」
 茉莉は単身で由里に教えられた須藤という記者の事務所を訪ねたのだった。
 「ふうん。お前があの由里って小娘のマネージャって訳か。で、何の用なんだ?」
 「貴方、由里と剛が密会してたって証拠の写真を持ってるそうね。」
 「ふふふ。これの事かい?」
 そう言って須藤は由里が剛と二人だけで車に乗っている写真を見せる。
 「それじゃないわ。別荘の中で由里と剛が何かしてるって証拠の写真よ。」
 「そいつは見せる訳にはゆかないな。」
 「見せる訳にはゆかないのは、そんな写真は最初っから無いからじゃないの?」
 「うっ、な、何だと・・・?」
 「やっぱりそうだったのね。架空の盗撮写真がある振りして由里からお金を巻き上げたのね。」
 「だとしたら、どうだっていうんだ?」
 「貴方を詐欺と恐喝の罪で裁判所に訴えを起こすわ。貴方が詐欺を働いたっていう貴方が署名して拇印まで押した証文だって証拠になるのよ。」
 「ふふふ。あの証文のことか・・・。あれはあの由里って小娘が剛って相手役者と不倫の行為を働いたって自供した証拠にもなるんだぜ。」
 「その前にれっきとした詐欺と恐喝の証拠だわ。裁判所に行ってあの書類が公表されないように差し押さえをすることだって出来るのよ。」
 「随分と威勢のいい剣幕だな。しかしこれを聴いたらどう思うかな?」
 須藤は茉莉に何時の間にか取り出したボイスレコーダを翳して見せる。
 「な、何よ。それっ・・・?」
 「ま、聞いてみればわかるさ。」
 須藤はボイスレコーダの再生ボタンを押す。
 『 「じゃ、このネクタイで目隠しをしますから私を縛ってください。」 ・・・・・。 「さてと。両手は縛ったぜ。さ、この前の時みたいにお前から誘ってみろよ。」 ・・・・・。 「ち、違うわ。私の方から誘ったりしてないわ。少なくとも最初の時は・・・。目隠しは言われて自分でしたけど、まさかいきなり口の中に入れて来るなんて思いもしなかったわ。」 ・・・・。 「じゃ、行くぜ。口を開けな。」 ・・・・。 「咥えるけど、初めは口の中に出したりしないでよ。硬くなるまでだから・・・。そしたら私のショーツを剥ぎ取って。自分では脱げないんだから。」 ・・・・。 「わかってるさ。なるべくこの間と同じようにやるんだぜ。あん時みたいにな。」 』
 「こ、これって・・・。由里の声じゃないの。それに、相手は貴方?」
 「このテープがどういう意味だか分かるよな。あの小娘が自分から剛との間でどんなことをしたのか白状してるって訳さ。」
 「い、何時の間にこんなものを・・・。」
 「いいかい。よく考えておくんだな。こんなテープが録られてるってことは、この時の様子が映っている動画だって無いとは言えないんだぜ。」
 男が言うとおりだった。こんな会話を隠し撮りしたとすれば盗撮カメラが一緒に廻っていたとしても不思議ではない。
 「俺のことを訴えたいっていうんならそれでもいいんだぜ。けど、この小娘の女優としての生命もそれで終わりってことだな。」
 「ま、待ってよ。そ、そんな・・・。」
 それは茉莉が思ってもみなかった展開だった。
(まさか由里がそんなテープを録られていたなんて・・・。)
 「どうする? これでもまだ俺を訴え出るつもりかい?」
 「うっ・・・。い、いえっ。そ、そんなつもりはありません。」
 「ほう、急に素直になったようだな。さっきの剣幕はどうしたんだい?」
 「い、いえっ・・・。ちょっと言葉が過ぎました。申し訳ありませんでした。」
 「それで謝っているつもりかい? まるで心が篭っていないよな。」
 茉莉は唇を噛んで口惜しさを押し殺しながら頭を下げる。

yuri

  次へ   先頭へ



ページのトップへ戻る