記者突撃インタビュー

騙された新人女優とマネージャー



 第三部



 四十

 「今度こそ貴方に言われた50万円、全部揃えて持ってきました。」
 茉莉から借り出した自分の口座のキャッシュカードで残りの30万円を引き出した由里は、須藤の気が変わらぬうちにとすぐに須藤に電話を掛け、教えられた須藤の事務所に独りで乗り込んだのだった。茉莉から自由に引き出せるようにキャッシュカードを借りれるのはもうそうそうチャンスは無い筈だった。何としてもこれで須藤と決着をつけなければと焦っていたのだった。
 「何だ。その気になればちゃんと50万円ぐらいは用意出来るんじゃないか。」
 「やっとのことで用意出来たんです。もうこれで貴方が持っている写真は全部返して貰えるんですよね。」
 由里は残りの30万円を揃えて入れた封筒を須藤に見せる。
 「写真は返すなんて言ってないぜ。それに第一、返すってのは筋違いだぜ。元々写真は撮った俺のもので、お前のものじゃないんだからな。」
 「そ、そんな・・・。だって、約束したじゃないですか。」
 「約束したのは30万円出せば写真週刊誌にスクープ用に売り渡すのは止めるってことだぜ。それに写真を一部受け取ったからって、同じ写真を何セット焼き増したかなんて分からないだろ。お前に出来るのはせいぜい写真週刊誌に売り渡さないって約束を取り付けるぐらいなんだぜ。」
 「そ、そんな・・・。それじゃ約束守って貰えるか分からないじゃないですか。」
 「だったら証文でも取り付けるんだな。絶対写真週刊誌には売り渡しませんって証文をな。」
 「そんな証文書いてくれるんですか?」
 「構わないぜ。俺だって別にお前から金を騙し取ろうって訳じゃないんだからな。そうだ。お前がその証文を書けよ。そしたらそれに署名して捺印してやろうじゃないか。ほら、これに書きな。」
 須藤はそう言って由里に一枚の真っ新な紙を差し出す。
 「えっ? 何て書けばいいんですか・・・。」

一筆署名

 「何だ。お前が貰いたい証文だろ? 仕方ねえな。書き方も教えてやるよ。えーっと、あそこの別荘は誰のもんだったっけ?」
 「秋篠家の別荘だって聞いています。」
 「じゃ、こう書きな。『XX月XX日、秋篠家の別荘で撮られた私、手塚由里と進藤剛との間の行為に関わる写真は金50万円を受け取ることで、今後一切週刊誌等にネタとして提供しないことを約束致します』・・・っと。それから、そうだな。『もし約束を違えた場合は違約金として受け取り金額の3倍を・・・』、いや『10倍をお返し致します』ってな。それだったらいいだろ。その下に俺がサインする場所と捺印する場所を空けて、その下に『受取人 手塚由里』って書いておきな。」
 由里は須藤に言われたままの文章をすらすらっと自筆で書き写すと須藤に紙を手渡す。
 須藤はさっと文章を読み返すと自分の名前を署名する。
 「どうせ印鑑は用意してないんだろうから拇印でいいよな。おれもここに拇印を押すから。」
 そう言って机にあった朱肉に親指を付けると名前の後ろに拇印を押す。
 「お前もこの受取人って後にサインして拇印を押しておきな。」
 須藤は由里が自分の署名を入れ拇印を押したところで紙を取り上げ、事務所の奥にあったコピー機で写しを取る。
 「コピーと原本とどっちがいい?」
 「げ、原本でお願いします。」
 そう言って須藤から赤い朱肉の拇印が付いたほうの証文を受け取り、代わりに30万円の入った封筒を手渡す。
 「あれから進藤剛とは、またやったのかい?」
 「な、何言ってるの。やる訳ないでしょ。」
 「そうだよな。アイツだって奥さんにバレたりしたらやばいだろうからな。さすがにもうしてくれないだろうな。どうだ? もしあそこが疼いてまたしたくなったら何時でも相手になってやるぜ。」
 「そんな・・・。誰が貴方なんかと。もう二度と貴方には逢わないつもりよ。」
 そう言うと受け取った証文を大事そうにバッグにしまいこむと早々に須藤の事務所を出てゆく由里なのだった。

yuri

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