kosya0

妄想小説

夏期学校



 第十二章 圭子の推理


 その夜、圭子は一人ベッドの上で悶々としていた。その日起きたことを思い返してみるのだが、何が何だか訳が分からないのだった。前日に石田にフェラチオさせられている時に撮られたらしい写真のコピーを送りつけられ、ノーパンのままミニスカートで出勤するように命じられた。写真を撮ったのは石田の筈はないし、悪ガキ三人組とは思いにくい。しかしそうでないとも言い切れない。
 朝早い校舎の屋上で、スカートを捲らされた。スカートの中を覗くことが目的だったのだろうか。それならばそれで達成された筈で、その後体育館の壇上で脚を開かせるなど不要の筈だ。
 圭子自身を困らせたり、辱めることが目的なのだろうか。そうだとすると、最初から体育館の壇上で脚を開けと命令すれば済むのではないだろうか。
 もしかすると、最初の指示はいいつけに従ったかどうかの確認だったのではないか。すると次の指示は更に厳しい注文をつけ、それにも従うかの確認だったのかもしれない。そうなると、命令は更にエスカレートしてくるのかもしれない。
 寺田の癲癇の発作は偶然だったのだろうか。いや、偶然でしかあり得ない。しかしそうなると、寺田はこの一連の辱め行為と関係が無いのだろうか。悪ガキ三人組の残り二人の仕業なのか。いや、あの三人組のリーダー核は寺田なのだから、寺田を外して何かを仕掛けるなどあり得ない筈だ。
 そして今日の校長の行動は何を意味しているのか。校長に寺田たちが拾ったという圭子のパンティを届けたのは石田には間違いない。しかし、それはある意味では普通の行動だ。石田は寺田たちに何処でそのパンティを拾ったのか聞き質したのだろうか。そうだ。校長は圭子が痴漢に襲われた時に奪われ、その後寺田たちが拾ったようなことを言っていた。そんな嘘は寺田たちしか言う筈がないから、石田は寺田たちからそう聞かされ、それをそのまま校長に報せたのだろう。校長も石田も自分が痴漢に襲われたと信じ切っているようだ。しかし、それにしても痴漢の事を調べようとも警察に届けようともしている風がない。自校の教師が学校行事で痴漢に遭ったなど表沙汰にしたくないということなのだろうか。
 そしてノーパンの事だ。校長はそういう噂が蔓延しているような事を言っていた。そうだ。寺田によれば、大石と工藤が朝、教室で黒板に書かれた「高野先生は今日ノーパンです」という告発文章を観たと言っていた。おそらくクラス全員が目にした筈だ。そうだとすると学校中に噂が広まってもおかしくない。書いたのは自分が屋上でスカートを捲らされて、その事を確認してからなのだろう。しかしだからと言って、校長は自分が本当にノーパンで居るなどと何故思ったのだろうか。校長は確信していた筈だ。そうでなければ、女性教師の脚を無理やり開いて股の奥を確認するなどという暴挙に出る筈がない。予め知っていたとしか思えない。もしあの時自分がパンティを穿いていれば、それこそセクハラどころか痴漢行為だ。しかし、本当に自分がノーパンで、しかもその事で嘘を吐いていた為に、立場が逆転してしまったのだ。校長からすれば根も葉もない噂を流している輩が居るとしたら看過しておけないだろう。しかし、もし本当にノーパンでいる女教師が居るとしたら、対処方法は違ってきてしまう。噂を流した張本人を問い詰めたときに、本当にノーパンでいる証拠でも出されてしまったら、校長としての立場がない。そこまで考えての行動だったのだろうか。それにしても何処からそんな確信を得たのだろうか。もしかして、校長自身が圭子を脅している犯人だったとすれば・・・。あり得ないことではないが、校長があの日、あんな場所で石田と自分があんな行為の及ぶと予想していて、カメラまで用意していたというのは幾らなんでも偶然が重なり過ぎる。いや、犯人ではないが、朝早く校舎の屋上でスカートを捲る自分のことを偶然目撃してしまったのではないだろうか。それならあり得ないことではない。校長という立場で朝早く校内を見回っているなど、さほど不自然なことではない。
 しかし・・・。しかしである。自分の脚を無理やり開いてノーパンで居るのを確かめた後、誰かに脅されているとは思わなかったようだ。校長が犯人ではなく、偶々圭子が屋上からスカートを捲ってノーパンの股間を晒しているのを目撃したのだとすると、普通は誰かにそうするように強要されていたと思うのではないだろうか。
 そう言えば、校長は変なことを言っていた。夏期学校で座禅に使わせて貰った龍厳寺の住職とは古くから懇意にしているというような事だ。あの住職は耳が不自由だった筈だ。しかし校長はそんな筈はないと言っていた。校長がそんな事で嘘を吐くとは思えない。だとすると、自分があの朝、御勤めをしている姿を目撃したのは贋者だったのだろうか。そうだとするとお経をあげながら自分が修道僧たちから辱めを受けているのを知っていて知らん顔をしていたことになる。校長は住職から自分の事をいろいろ聞いているとも言っていた。きっとあの修行僧たちが根も葉もないことを住職に吹き込んだに違いない。それで自分の事を誤解して何かを校長に話したに違いない。しかし、いったい何を吹き込んだのだろう。ノーパンで居たくなる露出狂で、フェラチオをしたくて仕方がない淫乱だとでも言ったのではないだろうか。
 そう言えば、全校始業式で寺田がタイミングよく大きな音を立ててひっくり返った時にさっと股間を晒したのだったが、あれ以来犯人から何も言ってこないということは、その瞬間自分が言いつけを守って脚を開いたのを目撃したに違いない。それは寺田ではないし、そうだとすると大石や工藤でもないだろう。校長はあの時どこに居ただろう。それから石田はあの時、何処にいたのだったろう・・・。
 圭子の思いは散り散りにまとまることが無く、謎が謎を深めていくのだった。

 次の日、圭子は石田に相談してみることにした。最早、校長は味方にも相談相手にも成り得ないことがはっきりしたからだ。石田に全幅の信頼を置いている訳ではなかった。しかし、誰彼にも相談出来る話ではない。これ以上多くの人間に、自分自身の恥ずかしい状況を知られたくもなかった。それなら、既に知ってしまった石田ならという気持ちが起きたからだ。
 職員室で他の職員が遠くに居る時を見計らって、今日の放課後時間が作れるかと耳打ちしたのだった。幸い、その日は脅迫犯から何の指示も来てはいなかったのだ。

 放課後になって少し時間を置いてから圭子はひとりで校舎の隅の体育館に近い側にある体育教師控室を訪ねた。圭子の姿を認めると、紙袋をひとつ持って石田は立上った。
 「まだ他の体育教員が居るので、あちらへ行きましょう。」
 そう言うと先に立って体育館のほうへ歩いていく。中間試験が始まるタイミングで部活動は禁止期間になっていて、体育館にはひと気がない。石田が圭子を案内していったのは、体育館のステージ脇にある体育用具準備室だった。
 「ここぐらいしか、生徒や他の先生達には内密に話が出来る場所が思いつかなくて・・・。」
 言い訳めいた言い方をしながら、後から入ってきた圭子が隅においてある書物机の前のパイプ椅子に腰掛けるのを見て、石田は入口の扉を閉め内側から鍵を掛ける。
 「その扉、内側から鍵が掛かるんですか?」
 不審そうに圭子が訊く。
 「以前は体育館側から掛けて、こちら側からはアンロック出来る錠つまみが付いていたんですが、一度泥棒がこの部屋の窓から侵入して、アンロック出来る体育館に侵入したことがあるんで、鍵の方式を変えたんです。体育館側に対して盗まれるような貴重なものがある訳じゃないんですが、体育館を勝手に使われてしまう惧れがあって、どちら側からも施錠できるようにしたって訳です。これで、誰からも邪魔されずに内密に話が出来ます。」
 圭子は石田と二人だけになることに若干の抵抗はあった。しかし、石田にはもう散々自分の恥ずかしい姿を見られてしまっていた。今更という気持ちが圭子にもあったのだ。
 「石田先生。あの夏期学校の時に寺田君たちが拾ったという女性物の下着を校長に渡したんですね。」
 「ああ、他に処分の仕方もないからね。表沙汰にするかどうかという相談もあったし。」
 「あの下着を寺田君たちがどうやって手に入れたのか、訊いたんですか。」
 「山登りの時に、途中ではぐれて探しにいったら痴漢に遭った先生が逃げてきて、その後現場を調べにいったら落ちていたみたいな事を話していたんだったかな。」
 「えっ、それじゃあ最初から誰の物か知っててバスで皆の前で訊いたって事なの・・・。」
 「そうか。そういう事になるな。思ってもみなかった。最初、あいつらが落し物って言い出した時には何時拾ったのかまだ訊いてなかったからなあ。」
(寺田たちは、そうすると自分を辱める為にわざと皆の前で誰のパンティかと恍けて訊いたということになる・・・) 
 圭子はますます寺田たち悪ガキ三人組が信用ならなくなってきた。
 「先生は、私がノーパンで居るなんていう噂を聞いてませんか?」
 「えっ。いや・・・。実は生徒の誰かがそんな話をしてるのをちらっと耳にはしたんだが・・・。」
(やはり石田も聞いていたのだ・・・)
 「いや、でも信じた訳じゃないですよ。誰かが悪戯で根も葉もないことを言い出したんだと・・・。」
 圭子は石田の顔をじっと見つめる。嘘を吐いているかどうかを見定める為だ。しかしどちらとも取れるような顔を石田はしていた。
 「実は、こんな写真と手紙を受け取ったんです。」
 圭子はいよいよ本題となる相談を持ちかけることにした。写真は用務員室で石田にフェラチオをさせられた時のもので、手紙はノーパンで出勤せよと命令してきた時のものだ。
 「や、こ、これは・・・。」
 写真の石田側は胸から上で切れていて、第三者には誰だか判らないのだが、石田はその場に居た張本人だからすぐに自分と判ったのだろうと圭子は思ったのだった。
 「高野先生のところにも送られてきたんですか。この写真・・・。実は、僕のところにも送られていましてね。」
 石田は体育教員控室から持ってきた紙袋から一枚の紙切れを取り出す。圭子が見せたのと同じ場面を撮った写真のコピーだった。しかし、微妙に圭子のものとは違っていた。
 「おかしいな。僕が貰ったやつにはちゃんと僕の顔まで写ってるのに・・・。」
 圭子が言われて確かめてみると、確かに石田が受け取ったという写真は圭子に送られたのよりもっと全景が写っていて、石田の顔も表情もくっきりと見て取れる。
 「一緒に何か指示とか命令のようなものはあったんですか?」
 圭子が尋ねると、石田は袋からもう一枚の紙切れを取り出す。
 「これをばら撒かれて教師をクビになりたくなかったら、高野先生から手を引けって、こう書いてあるんです。」
 「見せてください。」
 圭子が石田から紙切れを取り上げると、少し続きがあった。
(これをばら撒かれて教師をクビになりたくなかったら、高野先生から手を引け。お前がこの淫乱女の誘惑に負けてちんこを差しだしてる証拠がこれだ)
 これとは写真のコピーのことらしかった。
 「ひ、酷いわ。私が淫乱女で誘惑したって・・・。」
 「私が言ってるんじゃないんですよ。勝手に書いてきたんです、送りつけてきた奴が。でも、そう言われてみるとそういう風にも見えるのかなって・・・。」
 圭子もまじまじと写真を観返してみる。石田が持っていた写真には石田の顔もしっかり写っているのだが、圭子からは顔をそむけていて、確かに困ったような表情にも見えるのだった。
 「でも、石田先生がもう一度してくれって言ったんですよね。私は手錠を外して貰う為に仕方なく・・・。」
 「確かそんな流れだった気がするんですけど。結構僕のあの時は気が動転してましたから。ついこんな表情になったのかなあ。」
 圭子は石田に裏切られたような気分だった。しかし、ある一瞬を偶然撮られたもので、石田に責任がある訳ではないのかもしれなかった。悪いのはあの修行僧たちで、圭子に手錠を掛けたのも、秘部にトロロ汁を塗り込めて痒みを堪えきれないようにしたのも、奴等なのだ。石田は、自分の傍に居る女性教師が手錠を掛けられていて、恥部を掻いて欲しいと頼まれつい欲情を抑えられなくなってしまったのだとも言えた。しかし、だからと言ってフェラチオを強要した石田を許せるという気持ちまでは起こらなかったのだ。
 「この写真の方が、高野先生が仕方なく唇を差しだしてる感がでてますよね。うまく切り取ったものだ。」
 石田は二つの写真を見比べて感心している。
 「石田先生。感心してる場合じゃないです。」
 「おっと、そうだった。そ、それで高野先生はノーパンにならざるを得なかったのですね。でも皆どうして先生がノーパンだって判ったんだろ。まさかスカートの中を誰かに見られてませんよね。」
 「それが、始業式の朝、クラスの黒板に私がその日はノーパンだって告発文が書かれていたんです。生徒達がそれを見て騒ぎだしたんです。」
 「そうだったんですか。そうですよね。先生が本当にノーパンになる訳がないですよね。」
 「いえ、本当にノーパンだったんです。ここに書いてあるように従わないと学校中に貼り出すと。そんな事になったら私もクビです。ただ、私に来た写真には石田先生の顔までは写っていなかったので、私一人が黙って従えばそれで済むかもしれないと考えちゃったんです。」
 「なるほど・・・。巧妙に心理を突いてきている感じがしますね。まあ、どっちにせよこれらの写真が明るみになったら、ボクも先生もクビは間違いないですね。」
 「石田先生は、どうしたらいいと思いますか?」
 「どうするかな。校長は相談しても頼りなさそうだし。自分の保身ばかり考えているような人ですからね。トカゲの尻尾切りにならないとも限らないし・・・。」
 「校長先生には相談しないほうがいいと思います。しても無駄だと思います。」
 「そうかあ。やっぱりな・・・。そうだ。それなら私達二人で秘密裏に脅している奴を見つけ出して懲らしめてやるしかありません。高野先生、協力してください。」
 「き、協力するって・・・。何をすれば・・・。」
 「そうですね。取りあえずは向こうが何か指示してきたら、おとなしく従う振りをしていてください。そしてその情報をこっそり私に教えてください。何か犯人を特定するボロが何時か出てくる筈です。それを頼りに二人で犯人を捕まえましょう。」
 「え、大丈夫かしら・・・。」
 「高野先生。弱気になってどうするんです。私達にはそれしか道がないんですよ。」
 ちょっと声高にそう言うと石田はいきなり抱きついてきて、圭子の唇を奪う。圭子が逃れようともがくが石田にがっちりと腕を抑えられてしまってどうにもならない。そのまま、圭子は用具室に置かれていた体操用のマットの上に押し倒されてしまう。
 腹の上に押し付けられた石田の下半身は勃起しているのが圭子にもはっきりと判った。
 「高野先生。ボクら、同じ秘密を共用するのです。ふたりだけの秘密を。そのしるしを見せてください。」
 石田は強い力で圭子の両手首を頭の上で押さえ、もう片方の手で手際よく体育用のジャージを降し始めていた。
「だ、駄目よ。石田先生っ。冷静になって。」

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 そう叫んだものの、圭子は石田を敵にする訳にはゆかないと思い、身体を許すしかないと思い始めていた。しかし、石田の手が捲り上げたスカートから圭子のパンティに掛かって、将に引き下ろそうとする瞬間に圭子は我に返った。それを許すことは、修行僧たちの悪行を許すのと同じになってしまうのではないかと気づいたのだ。
 圭子は修行僧たちに散々弄ばれた二日目の夜にした逆襲のことを思い返していた。
(タイミングを計って一気にやるのだ。)
 パンティが下に少しだけずり下された時に、石田の手が自分のパンツを下そうと圭子の腰から一瞬離れた。そのタイミングを逃さず圭子は片脚を追って石田の股間を思いっきり蹴り上げた。
 「うわああっ・・・。」
 石田が股間を抑えて転げまわる。その隙にさっと立上った圭子は机の上に置いたままになっていた用具室の鍵をひったくるようにして取ると、用具室の出入り口に走ったのだった。震える手で鍵がなかなか鍵穴に入らなくて焦ったのだが、何とか石田が回復して立上ってくるのには間に合って、圭子は外に走り出ることが出来たのだった。

 翌朝、圭子がおそるおそる出勤して職員室の自分の机に来てみると、一通の白い封筒が置かれてあった。脅迫犯からの新しい命令かと思い、ひったくるようにそれを手に取ると職員用の女子トイレに駆け込んだ。個室の中でそれを開いてみると、石田からのものだった。
 前日の事を丁寧に詫びた反省文のようだった。つい出来心で性欲を抑えきれなくなってしまったが、最初からそんなつもりは無かったのだと何度も触れていた。高野先生と一緒に卑劣な脅迫者を追い詰めたい気持ちには変りはないので、是非今後も協力して欲しいとも書かれていた。今後二度と不埒な気持ちは起さないと誓うのでとも書き添えられていた。圭子は少し冷却期間を置く必要があると思い始めていた。

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