kosya0

妄想小説

夏期学校



 第十章 深まる謎


 圭子は送られてきたその写真のコピーを何度も何度も見返していた。目の部分が黒いマジックで横線一文字に消されているが、知っている人が見ればすぐ誰なのか見当がつくだろう。立っている男は腰を前に突き出すようにしていて、大きく反り返るように怒張させたグロテスクな男根を目の前の女に突き立てんばかりにしている。相対峙している女のほうはしかし、その屹立したモノを自分のほうから咥えようと薄らと唇を開いている。両腕は背中のほうに廻しているが、両手の自由を奪われているのかは判らない。却って腕を後ろに廻すことが、胸の膨らみを強調させていて、男に乳房を差しだしているように見えなくもない。どうみても嫌々フェラチオをさせられている女には見えないのだ。
 背景の場所は思い出したくもない用務員室だ。その場所を観た事がある者ならすぐに判るだろう。フラッシュが焚かれて撮られたものらしく、暗い背景だが二人の姿は鮮明に映っている。男のほうの胸から上は写っていないので、知らない人には誰なのか判らないかもしれないが、圭子自身には疑いようもない。

 あの夏期学校を終えて戻ってきてからという日々は、何度もう学校を辞めようと思ったかしれなかった。教師という仕事すらも辞めてしまいたかった。それほどにショックだったのだが、日々が過ぎゆくにつれ、忌まわしい記憶も少しずつだが醒め始めていた。
 思い返してみると、悪ガキ三人組のした事もちょっと度が過ぎた悪ふざけの悪戯だったと取れなくもない。あの三人に犯されたという訳ではなかった。服を隠され、恥ずかしい格好を強いられたまでだ。自分の失禁する姿を見て、犯すどころか見ただけで射精してしまうような初心な子供なのだとも言えた。

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 石田だって悪気があってしたのではなかったかもしれない。突然、目の前に手錠で後ろ手に拘束された若い同僚が実はノーパンで剃毛までされていたと知らされたのだ。つい欲情してしまったのは仕方のないことかもしれなかった。それに結局石田の助けで何とか帰ってこれたのだ。二度までも手錠をかけられたのを解いてくれたのは石田なのだ。
 ただ、あの修行僧たちだけは許せなかった。確かに修行中の身に際どい格好を見せつけるようになってしまったのは、自分のほうの落ち度だったかもしれない。しかし、あんな凌辱まで受けるほどの筋合いとは到底思えない。あいつらこそが自分を何度も犯したのだ。恥ずかしい格好を写真にまで撮り、それを使って自分を脅したのだった。しかし、それでも、もう奴等は遠い彼方にしか居ない。彼らにとってももう過去の出来事に過ぎないのかもしれない。そんな事を考え始めていた。

 あの悪夢のような夏期学校から2週間ほどが経過し、明日から二学期が始まるという頃には、もう一度元気を出して教員生活を再開させようと思い始めていた時だった。玄関にガサッという音がしたような気がして出てみると、郵便受けに茶色の封筒が突っ込まれている。その中から出てきたのが例の写真なのだった。それだけではなく、裏に(これを貼り出されたくなかったら明日はミニスカートの下をノーパンで出勤しろ)という脅しの文句が書かれていたのだ。若しかしたら、そんな脅しが舞い込んでくるのではないかと密かに怖れてはいた圭子ではあった。しかし、送られてくる写真は、夏期学校で修行僧等に撮られたポラロイド写真の写しだろうと何気なく思っていたのだ。放尿シーンの写真を送りつけられ、その写真で一人で二度目の座禅の引率をせねばならなくなり、その後、散々凌辱されて裸の写真も撮られまくってしまったのだった。しかし、何故かその時の写真ではなく、何時の間に撮られたのか判らない東京の学校へ戻ってからの用務員室での写真なのだった。
 すぐに思ったのは、寺田たち悪ガキ三人組の仕業だろうということだった。しかし何となく府に落ちないのだった。それは何故夏期学校が終わって皆が解散した後に撮影したものなのかという事だ。あの夏期学校では散々恥ずかしい格好をさせられた。最初の夜に風呂場で服を盗まれ、裸で体育館まで取り戻しに行かねばならなかった。その時にカメラを持っていたのなら、写していただろう。それに山登りの時もだ。悪ガキ達は事前に散々作戦を練っていたに違いない。だから圭子を縛るロープや手錠なども用意していたのだろう。だったら何故あの伐採場でロープで吊られて放尿せざるを得なかった時に撮らなかったのだろう。帰りのドライブインのトイレでも写真を撮られた覚えはなかった。カメラを持っていたのなら、きっと撮影していた筈だ。そう考えると悪ガキ三人組の仕業ではないように思えてくる。
 すると、石田だろうか。しかし、間違いなく自分と一緒に写っているのは石田自身だ。フェラチオされながら自分で撮れる筈がない。しかも自分が写っているような写真で脅してくるだろうか。だとすると、悪ガキたちや石田ではない誰か別の男が圭子を脅しているのだろうか・・・。圭子の思いは散り散りに何時まで経ってもまとまらない。

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