妄想小説
被虐の女スパイ
九
「おい、起きな。」
鍛えられた身体のおかげで気を喪っていたのはほんの僅かな時間だった筈だが、99号の両手首は背中でしっかりと縛り付けられていた。大男が乱暴に99号の髪を掴むと引き起こす。
「お前、どこの者だ。何をしにきた。言えっ。言わんかっ。」
99号は口をつぐんで何も喋ろうとしない。それに腹を立てた大男は無抵抗の99号の頬を何度も張りつける。99号の唇からは薄っすらと血が滲んでくる。
「おい、グレート。そのくらいで止めとけ。こういうやつは痛みを受けることには慣れてるんだ。こういう奴の口を割らせるにはもっと他の方法がいいんだ。」
「へえ、そうなのかい? どうするんだ。」
「ま、いいからこいつをこの薬でもう一度眠らせてから、地下の調教室へ連れていって繋いでおけ。」
(調教室ですって? いったい、それは・・・。)
不気味な言葉に一瞬身を竦ませた99号だったが、すぐにクロロフォルムを染ませたハンカチを口に当てられ再び意識が遠のいていくのだった。
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