黒眼鏡

妄想小説


被虐の女スパイ



 一

 「という訳で、今度の潜入捜査の任務は99号、貴女にやって貰おうと思っているの。なにせ、やっと内偵で突き止めた秘密組織のアジトなんだけど、なかなか潜入のチャンスが無いと困っていたところ、内々にフロアレディの急募をしていることが分かったの。その条件というのが、均整のとれた魅力的なボディで身体に自信のある若い女性ということなの。」
 「それで、下着姿で来て欲しいということだったのですね、チーフ。」

任務発令

 自分の身体が認められたことで内心で自尊心をくすぐられ満更でもない号だった。これまでも自分の自慢のボディで敵の男たちを惑わせ、逮捕に導いてきたという自負もあった。
 「ええ、貴女のその身体なら絶対フロアレディの面接審査にも合格すると思うわ。内部に潜入さえ出来てしまえば、あなたからの通報で一気に踏み込める筈よ。」
 「判りました。何としてでもフロアレディの面接に合格して潜入を果たしてみせますわ。」
 「判ってると思うけど、99号。この潜入捜査はかなり危険な任務よ。もし諜報員であることがばれて捕まってしまうとどんな目に遭うかも判らないわ。」
 「それは重々承知しています。」
 「捕まったらどんな拷問に合うかもしれないわ。奴等は何としてでも私たちがどこまで掴んでいるのか知ろうとするでしょうからね。」
 「大丈夫です。例え捕まって拷問を受けたとしても堪えきってみせます。その為に日々鍛えているのですから。どんな痛みにも・・・。そしてどんなに恥ずかしい目に遭っても。」
 「そう。貴女ならきっとそうするでしょうね。だからこそ貴女を選んだのですよ。頑張って下さい。」
 「お任せください。」
 「そうだわ。ひとつ注意しておくわ。最初に潜入する時は銃はもちろん、武器は何も無し。通信機器も一切持たないでいくのよ。もし彼等に何か感づかれたら全てがおじゃんになってしまうわ。とにかく彼等を信用させるまでは、諜報員としての道具は一切持っていっては駄目よ。」
 「わかりました。そうしますわ。」
 「では、無事を祈ります。」
 自分のデスクを後に立ち去って行く99号の後姿を見送りながら、調査班・班長である冴島貴美子は99号を見送りながら心の中で呟く
 (あの子は確かにいい身体をしてるけど、それに過信してるのがちょっと難ね。)

99号

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