妄想小説
被虐の女スパイ
十五
「99号、目を覚ましなさい。」
朦朧としている意識の中で、99号の耳に響いてきたのは懐かしいチーフの声だった。
「はっ、チーフ。チーフ自ら助けに来てくれたんですね。」
「甘いわね、99号。まだ気づかないの?」
「え、どういう事・・・ですか?」
「わたしがお前なんかを助けに来るとでも思うの? とんでもないわ。」
「え・・・? それじゃ、もしかして・・・。」
「そうよ。アンタは罠に嵌ったのよ。わたしが仕組んだ罠にね。」
「ど、どうして・・・?」
「アンタがあんまり活躍するんで、わたしのチーフの座が危うくなったのよ。だからアンタには私が内通している組織に捕まってもう二度と戻って来れないようにする必要があったっていう訳。」
「なんですって?」
「アンタはもう二度とシャバには戻れないのよ。組織の男たちの性欲の捌け口として慰み者になって一生を過ごすのよ。」
「それじゃあ、最初から潜入捜査というのは嘘だったのね。私を罠に嵌める為に騙したのね。」
「そうよ。さんざん男たちに弄ばれるといいわ。アンタにはそれがお似合いよ。」
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