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アカシア夫人



 第五部 新たなる調教者




 第五十二章

 高原の中の道をひとしきり走った後、道から少し外れた空き地の奥の大きな鈴懸の樹の下に自転車を引っ張っていって少し休むことにした。
 木陰になったところにちょうど二人ぐらいがベンチ代わりに座れそうな岩があった。先に貴子が腰掛け「ここ、いいわよ。」と隣を薦める。
 「ああ、楽しかったわぁ。自転車っていいなあ。来てよかったわ。」
 童心に還ったように、貴子がしみじみと言う。

 一瞬、沈黙があって、いきなり貴子は俊介に唇を奪われた。咄嗟の事だったが、貴子は拒まなかった。暫く身を任せていたが、俊介の手が貴子の腿の上に置かれると貴子は起き直った。
 「ここじゃ、拙いわ。」
 俊介は立ち上がって、転がっていた自転車を引き起こす。
 「この裏手にいい場所があるんです。」

 俊介が案内したのは、表の通りからは深い樹々で蔽われて見えにくい洋館風のラブホテルだった。貴子はそこでも拒むことをしなかった。俊介に清里へ連れてきて貰うことを決めた時から覚悟はついていた。
 部屋に入って唇を合わせ、長い時間抱き合ってから、俊介は優しく貴子の身体をベッドに横たえる。
 「お願いがあるの・・・。私、縛ってくれる?」
 「え、縛るんですか?」
 「夫を裏切ることになるの・・・。自由な身体で貴方と抱き合う訳にはゆかないわ。」
 貴子の縛ってという言葉を聞いて、俊介は生唾を呑み込む。アダルトビデオでは縛った女を犯すというのは観たことはあった。しかし、それはあくまでも架空の世界の話であって、自分がそれを現実に経験出来るなどとは思ってもみなかった。しかも憧れの山荘の令夫人である。俊介は辺りを見回す。バスルームの手前にタオル地のバスローブが腰のところで締める同じタオル地の帯とともにあった。手首に巻きつけて自由を奪うには丁度良さそうだ。俊介は、すぐにそれを取ってくる。貴子は自分からうつ伏せになって両手を背中で交差させていた。

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 「いいんですね、奥さん。」
 「ことわらないで。好きに縛っていいのよ。それとも、そういうの、嫌?」
 「嫌だなんて・・・。」
 俊介は貴子の気が変わるといけないと思い、急いで貴子の手首を取る。どうやって縛っていいのか分からないながら、とにかく貴子の合わせた手首にぐるぐるタオル地の帯を巻きつけていく。その端と端をしっかり結わえ付けると、仰向かせようと貴子の肩に手を掛ける。
 「もっと乱暴にしてっ。」
 貴子の言葉に俊介は呪縛が解かれたような気がした。少し力を篭めて、貴子の身体を仰向けに起こす。
 目の前に自由を奪われた女が横たわっている。しかも自分が恋焦がれてきた女性だ。俊介はズボンのベルトを緩めて外す。
 「でも中に入れるのは駄目よ。その代わり、また口でしてあげる。」
 貴子が自由を奪われた格好になったことで、俊介は少し勇気が出た。
 「奥さん・・・。今日は僕のほうで嘗めさせてください。」
 俊介はずっと心に秘めてきた言葉をやっとのことで口にした。
 「えっ、そ、そんな事・・・。」
 「奥さんに口でして貰うばかりじゃ、申し訳ないんです。今度は僕がいい気持ちにさせたいんです。」
 貴子のほうは考えてもみなかったことだった。恥かしいという気持ちと、されてみたいという興味の思いが錯綜した。しかし、俊介に縛らせてしまった以上、拒むことはもう出来ない。俊介が顔を自分の胸に摺り寄せた後、ゆっくりと股間のほうに手を伸ばしてくるのに、身動き出来ないでいた。
 俊介は貴子のスカートのホックを外し、ジーンズのチャックを下ろした。俊介の手がジーンズの中の股間部分に忍び込んでくる。もう潤ってしまっていることを隠せない。その部分が湿っていることを確認すると、俊介は脚のほうに向かい、貴子のスカートとジーンズを引き降ろして花柄のショーツを露わにしてから、ブーツ、ジーンズ、スカートと順番に脱がしてゆく。
 最後にショーツが引き下ろされる時に、無毛の恥丘を見られるのだと意識するが、既に知られてしまっている俊介だからか、抵抗感はなかった。
 ジュルッ。
 裸の股間に俊介が顔を埋めた直後に、陰唇が大きな音を立てた。貴子は目が眩むような衝撃を感じた。
 「あああっ・・・。」
 思わず大きな声を挙げてしまう。両手の戒めのせいで、手の平を噛んで声を挙げるのを堪えることすら出来ないのだった。
 若いが故にまだ性急な俊介のクニリンガスだったが、貴子には初めてという衝撃のほうが大きかった。クリトリスを吸われる心地良さに、貴子は酔いしれた。

madam

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