騙された新人女優とマネージャー
第二部
三十八
「ううむ・・・。ちょっと違うなあ。」
カメラのファインダーを覗き込みながら深沢が首を傾げるのに気づいた茉莉が声を掛ける。
「あの、先生。何か御不満な点があるのでしょうか・・・。」
深沢はファインダーから顔を上げると、改めて茉莉の顔から足先までをじっくりと舐めるように眺め直す。
「最初の時よりも緊張感が無くなって来ているね。」
そう言われてみて、確かに縛られているという意識が薄れて来ていることに茉莉自身も気づく。最初のうちはとてもいけないことをしているという意識が働いてどうしようという不安に駆られていたのが、次第に縛られていることがそんなに変なことではないのだという意識に代わってきていたのだった。それが深沢には不満らしかった。
「君、その着物の下には下着は着けているのかね?」
突然深沢は茉莉が思ってもみなかったことを訊いてきた。
「し、下着ですか・・・? あ、あの・・・。実は・・・。」
茉莉は答えたものか暫し躊躇った。
「実は着けてはおりません。前にモデルをしていた際に、着付けをしてくれたスタイリストの方から言われたのです。洋風の下着を着けたままで和服を着ると、身体の線が微妙に変わってしまって綺麗に見えないので下着は着けないようにというので、それ以来モデルの仕事で和服を装う際には下着は着けないことにしているのです。」
一瞬、茉莉には深沢の目がギラりと光ったように感じられた。
「ならば、少し着物を崩してみようか。」
そう言うと、カメラを一旦置いて深沢は茉莉の元ににじり寄る。
「あっ・・・。」
茉莉が思わず声を挙げてしまった時には深沢の手が茉莉の着物の裾に掛けられていたのだった。
深沢はきちんと折り重ねられた着物の裾を一気にたくし上げると横に広げようとする。更にはもう片側の裾にも手を掛けようと裾の奥に手を伸ばしてきたのだった。
「あっ、何をなさるのです?」
茉莉はたくし上げられた裾の奥から襦袢が覗き始めるのを見て慌てる。
「脚を少し広げてごらん。」
「えっ? で、でも・・・。」
下着を着けていないと言ったばかりの茉莉に着物の裾を乱させておいて脚を広げろという深沢の言葉に茉莉は慌てる。
次へ 先頭へ