騙された新人女優とマネージャー
第二部
三十六
「あの、新垣さん。何度も申し訳ないんですけど、またお金の相談をしたくて・・・。」
「なあに、由里ちゃん。どうしたの、またお金の相談だなんて?」
「あの・・・。この間の母の親戚の人の事なんですけど。もう納骨の日取りが決まったんですけどお墓が急に必要だということになって、新たにお墓を買うらしいんですけど少しの間、そのお金を立て替えてくれないかって言うんです。」
「え、親戚の方のお墓?」
「ええ。その人の近くのお寺で最後の物件らしくて今手付金を打っておかないと他の人に流れちゃうらしくて今すぐ何とかならないかって母に頼まれちゃったんです。」
「ふうん・・・。大丈夫なの、その人?」
「あ、そりゃもちろん。母に昔よくしてくれた人ですから・・・。母の方ももう歳ですから手持ちはそんなにないらしくて。」
「で、幾ら必要なの?」
「えーっと、30万円だったかな?」
「30万円ねえ。ま、貴女のギャラの口座だったらその位何てことはない金額だけど・・・。わかったわ。貴女を信用するっ。私、今営業でちょっと立て込んでいるんで銀行とか行ってる暇がないので、貴女にカードを渡すから自分で下して振り込むのは出来るわよね。」
「あ、もちろんです。以前もよく仕送りはしていましたから。
」
「そう。じゃ、貴女に任せるっ。でも、ついでにとか言って無駄遣いしては駄目よ。」
「はいっ。わかってます、新垣さん。」
そうして由里は、気にかかっていた須藤との精算に使う金を用意出来ることになったのだった。
茉莉にとって、目下の所立て込んでいる営業というのは深沢のプライベートモデルの仕事だった。一応、口約束ではあるが由里の次の映画の主役抜擢の話は本決まりになっているらしい。しかしそれが自分への奇異な仕事の依頼によるものであることもはっきりと自覚していた。だから由里の新しい配役の仕事が順調に滑り出すまでは油断は出来ないと思っていたのだ。
深沢による最初の撮影はかなり気に入られてはいる様子だった。その嗜好はいささか変わったものではあったが、いざ実行してみるとそんなに難しいものではなかった。取らされるポーズに多少の恥じらいは感じてはいるものの、あくまでプライベートな芸術作業への支援とも言えるものだったし、大御所大女優が嘗て深沢に密かにその手の写真を撮られているという事実が茉莉を安心させているのだった。
その日、新たに茉莉に要求されたのは和服での撮影モデルで、身に着ける衣装はすでに深沢の別荘宅に用意されていたのだった。
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