騙された新人女優とマネージャー
第二部
三十七
最初の日に深沢が縄での緊縛を要求して、茉莉がそれをはっきり拒まなかったことからその事は既成事実化され当然のことのように深沢から要求され、茉莉もそれを受け入れたのだった。
正直に言えば、深沢の手に寄って緊縛されてその姿を写真に撮られることはそれほど茉莉には苦痛ではなかった。むしろ自分の今まで知らなかった感性を呼び醒まされるようで一種の恍惚感さえ憶え始めていたのだった。
茉莉が縛られた時に見せる苦悩というよりも愉悦を隠そうとする恥じらいの表情が深沢をこよなくそそらせるようで、深沢の創作意欲を否が応でも高めさせている様子だった。
「もし我慢が出来なくなるようだったら何時でも遠慮なく言ってくれ。それなりの用意はしてあるんだ。」
深沢は着物を幾つか着替えさせては、様々な縛り方を試してみながらそう言ったのだった。
(我慢が出来なくなる・・・? 多少手首は痛みがなくはないけれど、我慢が出来なくなるほどではないわ。同じポーズを続けるのだって、長年モデルをやってきた自分には大した苦痛でもないし・・・。)
茉莉は深沢が何故そんなことを言うのか首を傾げながら答える。
「大丈夫・・・だと思います。先生の納得がいくようになさって下さって構いません。」
「そうか。それなら私も撮影に集中が出来そうだ。次は違うポーズでも撮ってみたいのだが、いいかね?」
「もちろんです。なんでも仰ってください。」
深沢は茉莉を立ち上がらせたり、しゃがませたり、仰向け、うつむきと様々な格好にポーズを取らせながら次々と茉莉の姿態をカメラに収めてゆくのだった。
最初のうちは縛られていることに抵抗もあって、恥ずかし気な表情を隠せなかったのが次第に慣れてきて、強張った表情ではなく落ち着いた顔をむしろ被縛を受け入れている顔とも言えるようになってきていた。しかしそれは深沢には却って新鮮さを失ってきているように思われているのが縛られて撮られることに慣れていない茉莉にはまだ気づいてはいなかった。
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