騙された新人女優とマネージャー
第二部
三十一
縄は予め用意してあったらしく、すぐに深沢はそれを取り出すと茉莉の両手を手際よく縛っていく。あっと言う間に茉莉は座敷の鴨居の梁に括り付けられて吊るされてしまう。
「そうだ。その表情だよ。私の思ったとおりだ。君には天性の素質があるようだ。」
早速深沢はカメラを取り上げると、恥ずかしそうに俯こうとする茉莉の表情を捉えてフィルムに収めていくのだった。
「新垣さん。あ、あの・・・。」
撮影の合い間に由里はスタジオ奥でスケジュール確認をしていた茉莉に声を掛ける。
「ちょっと相談があるんですが・・・。」
「なあに、由里ちゃん?」
「あの、実は・・・。ちょっとお金が要るんです。」
「え、お金? どうしたの、突然に・・・。」
「あの・・・。えーっと、ちょっと実家の方で不幸があって。」
「え、どなたか亡くなったの? それは大変。」
「あ、え。いや。あの母の親戚の人なんですが。お香典を送ろうと思って・・・。」
「あら、そうなの。会社からも対応した方はいいのではなくって?」
「あ、いえ。私とはあんまり関係のない人で。ただ、母は昔お世話になったとかで。現金を少し融通してくれないかって言われて・・・。」
「あ、そうなのね。で、幾らぐらい必要なの?」
「えーっと。そういうの、あんまり相場とかよく知らないので。50万円ぐらいとか・・・?」
「あら、肉親でもない人に50万円は幾ら何でも多過ぎよ。普通はせいぜい数万ってとこかな。」
「そ、そうですよね。あ、ただ・・・。兄弟の分とかも取り敢えず立て替えておきたいので・・・。」
「じゃあ、10万円ぐらいでいいんじゃない? 送り先を教えてくれれば私が振り込んでおくわ。」
「あ、でも・・・。その親戚筋には私がこの業界に入ったこと、内緒にしてるんで事務所から送られると困るんです。出来れば現金で私が送りたいんですが・・・。」
「ああ、そういう事情ね。私が預かっている口座は貴女のギャラなんだから貴女の自由に使っていいんだけど、まだ齢が若いから。一応、私が管理して預かっているの。貴女が変な誘惑とか脅しとかに引っ掛かってお金を取られたりしないように貴女に変わって管理してるだけだから。」
「わ、わかっています。じゃ、取り敢えず現金で10万円だけ用意しておいてくれますか。」
由里はやはり突然50万円というお金を引き出すのは怪しまれると感じたので、取り敢えず10万円までを用意して貰うことにしたのだった。由里はその10万円で更なる時間稼ぎをするしかないと覚悟を決めていたのだった。
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