騙された新人女優とマネージャー
第二部
三十
「先生。どうでしょうか、私はモデルとして?」
素の姿を数枚写真に撮られたところで茉莉は思い切って深沢に訊ねてみる。
「ううむ・・・。君は素質としてとてもいいものを持っている。しかし、感情を抑え込んでいるのが邪魔しているようだ。」
「感情を抑え込んでいる・・・? でしたら、どうしたらいいでしょうか。」
「そうだな。ちょっと君に見て貰いたいものがある。」
そう言うと深沢は隣の部屋に一旦引き下がってから一枚のパネルを持って戻って来た。
「あっ、そ、それは・・・。」
茉莉が見せられたのは一枚の写真を美術館で展示するような大判に引き伸ばしてパネル化したものなのだが、写っている被写体のモデルは誰もがよく知っている大女優なのだった。しかも取っているポーズは乳房も露わに着物を肌蹴た状態で両手を後ろ手に戒められているばかりか縄は露わにされた乳房だけでなく胡坐をかかされて身動き出来ないように両足首までが拘束された緊縛絵図なのだった。
「この女優は知っているよね。」
「も、勿論です・・・。こ、こんな方がこのようなポーズを・・・。」
「そうだ。このような写真は勿論公開はされていない。私だけの為に撮って非公開にするという約束のもとにこのポーズを取って貰ったものだ。しかし顔の表情をよく見てみたまえ。緊迫感といい、微かに憂いを帯びながらも自分の愉悦と闘って何とか気丈さだけは保とうと必死になっているのが、わかるかね?」
「え、で、でも・・・。このような写真はさすがに・・・。」
「この大女優も最初はこのようなポーズで撮られることは躊躇していたよ。しかし世の中に絶対に出回ることはないのだと私が保証することで受け入れてくれたのだよ。」
「つ、つまり・・・。私にも似たようなポーズを?」
「縛られるのは、嫌かね? 私のプライベートなモデルになるという約束は反故にしたいと?」
茉莉はすぐに由里の主役抜擢を喜んでいた顔を思い浮かべる。
「い、いえ・・・。そ、その・・・。先生も決して世間には公開しないと約束をしてくださるのですよね?」
「勿論だとも。私だけが観ることを許されるという条件だ。」
「わかりました。どんなポーズでもお命じください。先生の仰るとおりに致します。」
「そうか。いいのだな。」
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