車室内ミニ

妄想小説

淫乱インストラクタ ~ 嗚呼、勘違いの一人相撲



第四章 服従する牝犬

 次に樫山に呼ばれた時には、浩子は自然に樫山の命令に服従出来るようになっていた。呼び出しのメールに返信する時に、「何なりとご用命ください。」と社交儀礼のように打ちながらも、浩子は樫山から酷いことを要求されることを妄想しながらも、胸の内を震わせていた。
 (穿いているパンティを脱いでいきなさい。)確か、樫山はこの前別れる時に浩子にそう命じたのだ。それを浩子は何度も頭の中で反芻させていた。携帯の番号を聞いていた浩子はパソコンに証拠が残らないように、携帯のショートメールを使うことにする。
 (私、今度はどんな格好で行ったら宜しいでしょうか。)
 明らかにメールで聞く内容ではない。しかし、何とでも取り様のある言い方だ。
 (いろいろあるので、思いっきり短く切り詰めた格好になるようにしましょう。)
 浩子は自分の持っている中で、一番短い丈のスーツを思い浮かべた。ビジネススーツだが、自分の脚の格好が一番よく見えるように、タイトで思いっきり短めのスカートに濃い色の上着を合わせたもので、浩子のお気に入りでもある。ストッキングはわざと着けないで、その言い訳になるように、爪先の部分が透けているサンダル風のハイヒールを合わせた。
 樫山琢也はこれまでと全く同じように、駅で待つ浩子の下へ、会社の車を滑り込ませてきた。車の中に樫山を認めると、恋人に向かって走っていくかのように、身が軽くなって浮き足立っている自分を感じていた。躊躇いもなく、樫山の隣の助手席のドアを開ける。
 「本日も宜しくお願いいたします。」
 外目には儀礼的な挨拶に見えるように装いながら、浩子は車の中に滑り込む。腰の線を露わにするぴったりしたタイトスカートは座るとそれでなくても短い裾が更に上にずり上がる。しかし、浩子はまるで琢也に命じられているかのように、裾には手を触れない。浩子はぴったり両腿を締めるようにあわせているが、裾からすぐのところにデルタゾーンがある。真正面から見られたら、丸見えになっている筈だ。
 「荷物は後ろへ置いていいですよ。」
 樫山が親切に声を掛けたかのように何気なく話し掛ける。しかし、浩子はその意図を悟っていた。荷物を後ろに置いてしまえば、膝の上に載せてカバーすることが出来なくなる。しかも、この格好のままで荷物を後ろへ手を伸ばして押しやれば、スカートは更にずり上がる。浩子はそれが命令であるのを感じ取っていた。
 「恐れ入ります。それじゃ、・・・。」
 身体を後ろへ反らせるようにしながら、バッグを持った手を後ろへ伸ばす。もう片方の手を膝に置いて隠したいのをやっとのことで堪えて、身体のバランスを取る為であるかのように、ドアの取っ手を掴みながら、身体を後ろの席へ伸ばす。当然足元はおろそかになる。恥かしさに樫山と顔を合わせることが出来ないが、股間に樫山の視線を痛いように感じていた。
 荷物を後ろに置いてしまった浩子は自由になった手の置き場に困った。膝の上に揃えておきたいが、樫山がもし不機嫌になったらと思うとそれが出来なかった。さりげなく不自然な格好にならないように気をつけながら、身体の両脇にだらっと両腕を置いた。今、身体を後ろへ反らした為に短いスカートの裾は更に上方にずり上がっていた。浩子が上から見たのでは、下着が覗いては見えないが、ぎりぎりまで露わになってしまっているのは間違いなかった。
 浩子は下着も一番お気に入りのレースで刺繍された純白のものを選んでいた。ダークスーツなので、普段は黒い下着にして、万が一膝を折った時に下着が覗いてしまっても目立たないようにしている。それを、この日はわざとはっきり目立つ白にしたのは、樫山のことを意識した上でのことだ。それは樫山に対する浩子の服従の印なのだった。
 「今日は中味はどんなのにしているの。」
 突然、樫山が訊ねてきた。一瞬、スカートの下につけている下着のことを言われているのだと思う。
 「あ、あの・・・。」
 浩子は言葉に詰まった。
 「色がきついのは、うるさい感じがするからね。この間みたいのは、ちょっと・・・。」
 浩子はすぐに、前回樫山に逢ったときのことを思い出す。別れる時に、樫山に脱いで渡すように言われたのは、帰り道の洋品店で急遽買い求めたショーツだった。じっくり観る間もなく樫山に渡してしまったので、はっきりした印象がない。刺繍が凝っていたのだけは覚えているが、色は白っぽかったぐらいしか記憶になく、自信がない。
 「あの、樫山さんは、色のついてないほうがお好みなんでしょうか。」
 「そうだね。まあ、あまり汚れた感じでなければ、多少色がついてしまっていてもいいけれど。」
 浩子は首筋にさっと汗が噴出すような思いに駆られた。樫山に穿いていたばかりのショーツを渡す時に、気にしていたのは、内側の汚れだった。沁みがついていたのはほぼ間違いないだろうと思い、そのことばかりが気になっていたのだ。
 「あんまり長く使っていると、どうしてもああいう風になっちゃうんだろうね。まあ、時々は新しくしないと。でも、そんなにしょっちゅうは変えられないだろうし。まあ、今日のは使い古したので仕方ないよ。」
 「あ、あの・・・。い、いえ。」
 浩子は額の汗を手の甲で拭う。浩子は元から濡れ易いほうだ。それが、樫山と出逢って以来、余計に激しくなったようだった。樫山のことを考えただけで潤ってくることも多かった。浩子はその日一日中樫山の傍に居て意識していたら、どれだけショーツを汚してしまうかと怖れていた。それで、ひそかにパンティライナー式の生理用ナプキンをショーツの中に重ねておくことにした。それをトイレに立ったときに何度かそっと取り替えるつもりだった。駅に着いた時も樫山の車の前に出る前に駅のトイレでこっそりライナーを真新しいものに替えておいた。午前中だけつけた筈のナプキンは、しかし浩子の肉体の渇望を露呈するかの様に、既にしっとりと濡れていた。
 浩子は汚れたショーツを見られるのも恥かしかったが、それを避ける為に、ナプキンをあてていることも絶対に気づかれたくなかった。その日、もしホテルの部屋へ誘われたら、その前になんとしてでも、さり気なく外しておかねばと思っていた。
 「始まる前に、事前に見させて貰おうかな。」
 「え、見せなくてはならないのですか。は、恥かしいです。」
 「恥かしがっても、仕方ないよ。だって、今日はみんなに見せるんだから。」
 「ああ、そう・・・。そうなんですよね。その為に短いのにしろって言われたんですよね。判りました。やります。」
 浩子はステージの演壇の上でミニスカートの裾の奥にショーツを覗かせている自分を想像していた。
 (この人は私が辱められることで身体が反応していくことに気づいている。だから、私に恥かしい格好をさせようとしているのだわ・・・。)
 「あの、事前に見せるの、ここででもいいですか。」
 「ええ、ああ、まあ運転しながらだからな。でも、向こうへ行ってからじゃ、あまり時間がないからな。ちらっと覗くだけのぞいとこうかな。」
 「わ、判りました。」
 浩子は恥かしさに顔を俯かせ、短いスカートを両端から上へずり上げた。今度は浩子の目にもはっきり露わにされたショーツの白い逆三角形がはっきり覗けた。
 「あれっ、どうしたの。早くパソコン出したら。パワーポイントの資料って立ち上げるのに結構時間掛かるでしょう。運転しながらだから、あんまりじっくり見ていられないと思うけど。だいたいの感じはつかめると思うから。」
 浩子は耳たぶが真っ赤になるのを感じながら慌てて、捲り上げたスカートの裾を下へ引っ張って降ろした。
 (ええっ、パンティのことじゃなかったの・・・・。)
 浩子は樫山の様子を横目でそっと窺う。浩子が露わにしたパンティはしっかり見られたかもしれなかった。が、今は素知らぬ振りで前方だけみながら運転を続けている。
 (色がきついのは、うるさい感じ・・・。汚れた感じでなければ色がついていても・・・。今日は使い古したのでも・・・。始める前に事前に見させて・・・。今日はみんなに見せるんだから・・・。ああ、どうしよう。プレゼ資料のパワーポイントのことだったのね。)
 浩子は自分の早とちりに、顔を真っ赤にさせていた。
 その日も、浩子は会場に先に樫山と二人だけで赴き、説明会の為のプレゼの準備のセッティングを始めていた。この開催地では三度目となるプレゼで、参加者もそれほど多くないとのことだったが、会場は人数には不釣合いな広い会場しか取れなかったということで、2百人は収容できそうな会場だが、集まるのは20人程度になるだろうと言われていた。参加者は少ないということもあって、会場設営は自分達だけで大丈夫と言って事務所を出てきたのだ。
 会場には百人分ほどの受講者用の椅子が空しく既に並べられていた。百席ぐらいはいつも常設されているようだった。演壇は受講者達の席からは一段高いところになっているステージになている。少人数ではそんな高いところに上がる必要もないのだが、背面に映し出されるスクリーンなどの関係を考えると、ステージに上がってやる他なかった。
 「このテーブルを実演をするパソコンを置く台にしましょう。」
 樫山は浩子とともにステージに上がると、舞台袖にあった事務用テーブルを指差した。ステージの上には手押し車に乗せられたパソコンが一セット置いてある。しかし、それは古い型のデスクトップ機だった。
 「プレゼ用のコンパクトなノートパソコンが出払ってしまっているそうです。まあ、これでも動かないことはないので、大丈夫でしょう。」
 樫山は浩子とテーブルの両端を抱えて、壇上中央のスクリーンのすぐ脇にテーブルをセットすると、台車を押して、テーブルの下へ潜らせる。
 「本体は邪魔にならないように此処に置いて、液晶モニタとキーボードだけをテーブルに載せましょう。あ、それからマウスもと。」
 樫山は手際よくパソコン機器を配置すると、ひらりとステージの下に飛び降りた。
 「こっちで見え具合をチェックしますから、画面を映し出してみてください。」
 「えっ。あ、はい。」
 浩子は樫山によって据えられたパソコンに向かう。
 「あの、・・・電源のスイッチはどこにあるんでしょう・・・。」
 「電源スイッチなら、本体の真ん中あたり、まあるいボタンです。」
 「ええっと、・・・。」

ОL立膝

 浩子は机の下を覗き込む。テーブルの下の台車の上には、タワー型のデスクトップ機の本体が縦に置かれていた。割と幅の広いテーブルの奥まったところに台車が置かれている為に浩子は屈んで手を伸ばさねばならない。ステージの床に片膝をついて、ボタンを手で探る。
 その時、真正面の席に座って浩子のほうを見上げている樫山の視線に気づいた。ついおろそかになった浩子のタイトなミニスカートは前のほうが割れてずり上がっている。立て膝をした太腿の奥が覗いてしまっているようだった。パンティを覗かせてしまったらしいことにはわざと気づかない振りをして、何気なく立ち上がる。が、心臓はどきどきしてしまっていた。
 (また、パンティを見せてしまった。どう思われたかしら・・・。プレゼ中は皆んなにパンツを見せてしまわないように気をつけなくっちゃ。)
 「ええと、メモリスティックは持ってきてますよね。」
 「あ、は、はい。・・・、そうだ。それを読み込ませとかなくっちゃ。」
 浩子はテーブルの隅に置いておいたバッグを取り上げる。いつもプレゼ用の資料は会社から支給されているメモリスティックにコピーして持参している。最近はどの工場へ行っても、これさえあれば、現地のパソコンが使えて、重たい携帯パソコンを持参する必要がないのだ。
 「あの、差し口が判らないのですけれど。」
 浩子はデスクトップ型でメモリスティックを使ったことがなかった。
 「ああ、確か、電源スイッチの傍にあった筈だけど。」
 浩子が腰を屈めて再びパソコン本体を覗きこんでみると、確かに電源スイッチの下のほうに差込口らしきものが見えた。
 浩子はちょっと躊躇した。メモリスティックを床面ぎりぎりのところにある差込口に挿そうと手を伸ばせば、また苦しい姿勢で屈まねばならないのだ。
 浩子の真正面の演壇の下には樫山が座ってこちらを見ている。屈めばその目の高さに腰を落とすことになる。両膝を付いて屈めば何とか裾の中を覗かせずに済むかもしれないと思った。が、浩子は敢えて、先ほどと同じように、片膝だけを付いて立て膝の姿勢をとった。樫山のほうを注視することは出来なかった。視線を宙に浮かせて不自由な体勢のまま、手探りでメモリの差込口を捜す。
 (ああ、覗かれているっ・・・。)
 樫山の視線に映っている筈の光景を想像して、浩子は身体に電流のようなものが走るのを感じる。
 ごくりと唾を飲み込んだのは、あられもない痴態を見せられた樫山のほうではなく、そうしなくてはいられない衝動に駆られた浩子のほうだった。人差し指だけを突き立てて、横に細長い孔を探り当て、そこへメモリスティックの先端を突き当て一気にぐいっと差し込む。その一連の動作をしながら、浩子は目の前の樫山に股間をまさぐり当てられ、陰唇に指を突き立てられる自分を想像していた。
 (ああ、いけないわ・・・。)
 股間を再び熱い物が流れ出るのを浩子は感じとっていた。
 はっと我に返ると、膝を閉じ、すくっと立ち上がる。パンティの内側のライナーが違和感を持って感じられる。
 「あ、あの、準備はこれでいいみたいなので、始まる前に、ちょっと化粧室へ行ってきます。」
 あくまで、化粧を直すのだというニュアンスを持たせながら、女子トイレのほうへ向かう。場所は前回来た時に使っているので、既に頭に入っていた。
 振り向かずに、すっ、すっと歩を進めていく浩子は背中に樫山の視線を感じていた。
 (「今、スカートの奥にパンツを覗かせた女が、おしっこをしに便所へ向かっている。」そうきっと思われているに違いない。)そう嗜虐的に考えることが浩子を余計に感じさせていた。
 女子トイレの個室に走りこむようにして扉をバタンとしめ、かっちり鍵を掛けてしまうと、自分を落ち着かせるかのように扉を背にしてもたれかかる。すぐにも股間に手を伸ばしたいのを、興奮を鎮めて冷ますかのように、じっと堪える。再び唾が喉につかえるようにしながら降りてゆく。
 「ああ、駄目っ。おかしくなりそう・・・。」
 最早、抑えきれない衝動に、浩子は片方の手で短いタイトスカートの裾を前から捲り上げると、もう片方の指を下着の最下端に当てる。ごわっとした感触が薄い滑らかな絹のクロッチの下にある。お尻に手を回して、つるっとパンティをめくるようにして、太腿の途中まで下げる。パンティの内側に貼り付いたナプキンに向かって股間からねばっとしたものが糸を引いている。
 浩子は下半身を動かさないように用心しながら、便器の脇についているペーパーホルダーから、ペーパーを少し引き契り、片手で丸めると股間をゆっくり拭う。そうしてから、パンティの内側に両面テープで貼り付いているナプキンを引き剥がすと、丸めたテッシュとともに、小さく折り畳む。それを指で摘んで、持ってきたバッグの中からビニル袋にはいった包を取り出す。その中には、既に駅のトイレで替えた午前中に着けていたナプキンが既に入っている。
 女子トイレの個室には必ず備えられている汚物入れに捨ててくることも出来た。が、他人には見られることはないとは思いながらも、ナプキンをその本来の使い方ではないことに利用していたことを誰にも知られたくなかった。その相手が同じ女性だったとしてもだ。トイレを出ようとしたら、扉の向こうに次を待っている女性がいて、その女性が中に入ってたまたま汚物入れを使おうとして、赤い血のついていない丸めたナプキンをそこに発見する。そしてそれを前の女性が使ったであろうことを想像する。そういうことを考えただけで、汚物入れに愛液で汚したナプキンを残してくることが浩子には出来ないのだった。
 汚れたナプキンと丸めたペーパーをビニル袋を開けて押し込み、漏れでないようにしっかりと口を結わえつけてからバッグの奥にしまい、変わりの新しいナプキンのパックを取り出す。
 (まだ、当てていないと、プレゼの最中にも垂らしてしまうに違いない。でも、帰り道では外しておかなくちゃ・・・。)
 ちょっとごわごわする下半身を気にしないように努めながら、浩子はプレゼ会場へと戻るのだった。
 会場へ戻ると、もうちらほら人が集まり始めていた。樫山の姿はどこへやら消えている。現地の人間と話をしているのだろうと思い、浩子は空いている後ろのほうの席に座って時間が来るのをまった。ステージの上には椅子がないし、見上げられると、ミニスカートから覗く脚ばかりが目立ってしまうのだ。
 開始予定時間の3分前になったところで、浩子はすくっと立ち上がって、ステージに向かった。段を上がって、先ほど準備しておいたパソコンを置いてあるテーブルの前に立つ。テーブルの上には、キーボードとマウス、そしてその脇に浩子が先ほど挿し込んで読み込ませておいたメモリスティックが載せられていた。樫山が抜いておいてくれたらしい。
 傍らの液晶モニタを調べて、必要なフォルダが揃っていることを確認してから、ファンクションキーでスクリーンへも表示させる。
 その時、ステージ下の左隅から樫山の声がスピーカーに乗って聞こえてきた。
 「え、それではそろそろお時間ですので、説明会を開始させていただきたいと思います。まず最初に本日のインストラクターをご紹介させていただきます。・・・」
 いつもの浩子の紹介から説明会が開始された。
 プレゼはいつもの通り、途中までは何の問題もなく進んでいった。前半のパワーポイントを使った概要説明が終ったところで、こんどは実演に移る為に、浩子はパワーポイントのファイルを閉じて、実演用の起動アイコンをクリックする。
 これで、プログラムが起動されて、いつもの画面がスタートする筈だった。ところがいつもは見掛けない警告画面が現れたのだ。
 「このプログラムはパスワードにて保護されています。パスワードを入力してください。」
 浩子は慌てた。咄嗟に樫山を捜して見回すが、何故かさっきまで居た筈の樫山の姿は見当たらなかった。浩子はすぐにトラブル対応マニュアルのことを思い出した。
 (プレゼ途中で引っ掛かった場合は、一旦、ログアウトして再起動させること。)インストラクター教育ではそう教えられている。
 「えーと、ちょっと・・・、変ですね。ちょっとデータが変わってしまったのかもしれません。今、再起動を掛けますので、ちょっとだけお待ちください。」
 浩子は、キーボードを操作してパソコンに再起動をかける。画面にバーグラフが現れて、待ち時間を示す。再起動には暫く時間が掛かる。20数名ほどの聴衆だが、ざわつき始めると、それが余計浩子を焦らせた。
 (そうだ、メモリスティックを挿し直さなくちゃ・・・。)
 テーブルの傍らに置いてあったメモリスティックを取上げ、キャップを外すと、すぐにテーブルの下に屈んだ。その時、さっき用意した時にはあった筈の差込口がどこにも見当たらないのに気づいたのだ。
 (えっ、どういうこと・・・。確かにさっき、ここに差した筈なのに。)
 浩子はパニックになっていた。夢をみているような気持ちだった。
 (え、どこなの。どこ・・・。)
 焦って探るがメモリの差込口はどこにも見当たらないのだ。
 焦っていた浩子は20人ほどの聴衆の視線が一斉に立て膝をした脚の付け根に注がれていることに気づいていなかった。素通しのテーブルでは浩子の下半身は丸見えなのだ。しかもその脚が、今は片膝を床に付け、もう片方を立てている為に、短いタイトスカートの奥がばっちり丸見えに覗いてしまっていたのだった。
 メモリの差込口が見当たらないことばかりに気を取られて、スカートの奥を覗かせてしまっているという失態を冒してしまっていることに気づいたのは、聴衆として来ていた中年の男たちのひそひそ笑いが耳に入ってきたからだった。
 ふと、見上げた浩子の目に飛び込んできたのは、一人残らず全員が自分の下半身を注視している光景だった。
 はっとして脚をすぼめスカートの裾に片手を置いて前を隠す。その慌てた動作が却って滑稽なものに男達には映った。露骨に含み笑いをしている男もいた。
 その時、ステージの袖から樫山の声がした。
 「桂木さん。メモリの差し口はパソコン本体の背面ですよ。」
 浩子ははっと我に返った。よくよく冷静に観れば、最初にセッティングしたものとは、機種が微妙に違っていることにやっと気づいたのだった。
 樫山に言われて、ようやく浩子は立ち上がってテーブルの前に向い、パソコン本体の背面を見る。確かに、背面には差し込み口らしいものが見えた。
 テーブルの奥のほうに置かれているので、再び屈んで手を伸ばさねばならない。今度は聴衆に背を向けているので、裾の奥を覗かれる心配は無かった。しかし、パンチラを楽しませて貰った聴衆たちの関心は浩子の下半身に集中していた。屈んだ為に聴衆に向けて突き出された尻はぴっちりしたタイトスカートの為に、お尻にくっきりとパンティラインを浮き出させてしまっていた。それが、ついさっき目撃したパンチラシーンを再び男達に思い起こさせてしまっていたのだ。
 「いやあ、今日はいいものを見せてもらった。」「いや、実に有意義な説明会だった。」「こんなんなら何度でも参加したいねえ。」
 浩子には聞こえないように小声にしているのだろうとも思えたが、わざと聞こえるように喋っているようにも聞こえてきたのだ。浩子は恥ずかしさに顔が真っ赤になってしまった。
 プログラムが再起動され、今度は問題なく立ち上がった。
 「大変失礼致しました。プログラムが起動できましたので、実演を再開させていただきます。ええと、この画面におきまして・・・」
 説明を始めた浩子だったが、恥ずかしさにもう顔をあげることが出来なかった。ずっと下を向いたまま、ただ淡々と説明を続けただけだった。
 「それでは、これをもちまして、本日の説明会を終了させていただきます。何かと至らぬところもあったかと思いますが、最後までご清聴いただきましてありがとうございました。」
 浩子は深く頭を下げる。浩子の耳に拍手が聞こえてきた。それは次第に盛大なものに変わっていったが、ある特別な行為に対してであることは、浩子には身に染みて感じられていた。
 「桂木さん。今日はパソコンの調子が悪くて、苦労させてしまいました。桂木さんがトイレに行かれていた間に、最初のパソコンがうまく動かなくなって、急遽、別のものを運んできて貰って入れ替えたんですよ。二台目のも途中からおかしくなってしまったみたいで。」
 聴衆たちが会場を出て、二人だけが残されると、樫山が声を掛けてきた。
 「そうだったんですか。・・・私、慌ててしまって・・・、ああ、恥ずかしい。」
 「いや、さっと再起動させて、手際よかったですよ。」
 樫山は、パンチラを覗かせてしまったことは気づいていないかのように話していた。浩子も自分からその話題に触れる訳にはゆかなかった。
 「ええと、このパソコンをしまっておかないとならないのですが、手伝って貰えますか。」
 「え、はい、勿論。」
 樫山は、テーブルの下からパソコンセットを台車ごと押し出すと、ステージの縁まで押して行く。そこで一旦、本体を下ろして台車だけを持ってステージから降りる。空の台車を再び浩子が立っている壇上の近くへ押してきて、浩子にパソコンセットをひとつずつ渡してくれるように頼む。
 「本体は結構重たいですから、気をつけてください。」
 樫山はステージの下でパソコンを受け取ろうと手を伸ばしている。浩子は両手でパソコン本体を横にして持ち上げ、壇の下に居る樫山のほうにパソコンを差し出そうとする。壇の落差がかなりあるので、身を屈めなくてはならない。両手でパソコンを抱えているために、下半身は無防備だ。浩子は両手を差し出すようにパソコンを抱えたまま、膝を折って腰を下げていく。当然の結果として、浩子は樫山にスカートの奥を晒すことになる。
 (さっき、あんな下卑た奴等に恥ずかしい部分を思いっきり覗かれてしまった。でも、本当は貴方にだったら見てほしかったの。見て感じてほしい。見て欲情してほしいの。)浩子の目はそう訴えていた。が、樫山は表情をひくりとも変えなかった。
 「じゃ、あとその床のコードを取ってくれるかな。」
 表情を変えることもなく、浩子からパソコンを受け取ると、台車に下ろしながら樫山は浩子に指示する。浩子が振り向くと、さきほど樫山がパソコン本体から外したらしい電源コードが無造作に床に置かれていた。浩子は樫山に背を向けると、今度はわざと脚を折らずに床のコードにゆっくり手を伸ばした。膝をぴんと伸ばしたまま、ミニスカートで前に屈めば、この高さなら、脚の付け根までが顕わになることは分っていた。それでも浩子は樫山の目を自分に惹きつけたかった。脚の線にはそれだけ自信を持っている浩子だった。
 床の上のコードを掻き集めながら、浩子は自分の脚の付け根に樫山の視線が釘付けになっているところを想像した。それだけで、股間に当てたパンティライナーにまた新たな潤みが滲み出すのを感じた。
 コードを拾って、樫山のほうへ差し出そうと振り向くと、樫山は既に台車のパソコン本体を落ちないようにゴムバンドで留めているところだった。
 「あ、ありがとう。それじゃあ、君は液晶モニタのほうを運んでくれるかな。台車だと、落ちて割れる惧れがあるから。」
 「え、あっ、はい。分りました。」
 そう言うと、浩子はテーブルの上から残った液晶モニタを両手で抱える。浩子がステージ横の階段から壇を下りると、樫山は手押し車を押して、もう倉庫らしきところへ向っていた。小走りに急いで、樫山の後を追う。
 倉庫は、講演会場になったホールを出て廊下を突き当りまで進んだ一番奥にあった。樫山はドアを開けると、両手が塞がっている浩子を先に通す。中は三畳ほどの小部屋で、壁際一面に鉄製のラックがあって、備品が所狭しと並べられている。空いているスペースは棚の一番上しかない。
 「あの上に置くのかしら。」
 「ああ、そこしか空いていないから。」
 後ろから樫山が声を掛けた。床から天井近くまである背の高い据付のラックの前には、1mほどの高さのある脚立が置かれていた。それを使って、一番上の段に載せるようだった。
 「じゃあ、先に私がこれを載せますから。」
 浩子はそう言って両手は液晶モニタを抱えたまま、脚立の壇に脚をかける。
 浩子は運動神経はいいほうで、手を使わないで脚立を上がるなど、訳もないことだった。長身なので、最上段まで上がらないでも一番上の段に手が届いた。最上段からひとつだけ下の段に脚立を跨ぐようにして両脚を掛ける。両手を挙げるようにして手にしたモニタを持ち上げると、タイトなスカートもずり上がる。樫山がちょっと屈むだけで、下着まで覗いてしまいそうなくらい、脚を露出していた。
 「じゃ、これもお願い出来るかな。ちょっと重いよ。」
 樫山がそおっとパソコン本体を差し出す。浩子はバランスを崩さないようにゆっくりと慎重にそれを受け取る。重いので、一旦、ラックの端に片側だけ載せておいて、後はゆっくりとラックの奥に本体を押しやる。横にずらすだけだが、かなりの力が要る。浩子は脚を踏ん張って力を入れる。腿の後ろと脹脛の筋がぴんと張る。後ろ向きだが、樫山の視線を感じていた。
 (ああ、見られている・・・。)
 「あとはこのマウスとキーボードだけ。」
 最後の荷物を樫山から受け取ると、浩子は棚の奥に手を伸ばした。軽いので油断したのがいけなかった。キーボードの上に載せたマウスがするりと滑って落ちそうになる。それを抑えようとしてバランスを崩してしまった。
 「あ、いけない。」
 脚立から倒れ込みそうになった浩子の身体を咄嗟に出した樫山の手が支えた。が、その手はスカートの中の太腿を直接掴んでいた。男の手の感触を直接感じて、浩子は力が抜けてしまう。
 一旦は樫山の手で持ちこたえられそうだったが、浩子の脱力によって、二人とも床へ倒れこんでしまう。しかし、樫山は最後まで浩子の脚を放さなかった。浩子は両手で樫山の頭を抱え込むようにして倒れこんだ。スカートの裾が大きくまくれ上がって、その下の下穿きが樫山の目の前に丸見えになってしまっていた。しかも樫山の両手はその付け根あたりをしっかり抑えこんでいる。
 その時、浩子は下着の下にナプキンを付けたままであったのを思い出してしまった。
 (どうしよう。)
 見ないでといって、樫山の手を払いのけることはどうしても出来なかった。このまま抱いてほしいという気持ちと、パンティの下のナプキンを気づかれたくないという気持ちが浩子の中で交錯していた。
 しかし、躊躇している間に、樫山のほうが素早く行動していた。片手で着けていたネクタイをさっと引き剥がすと、浩子の身体を裏返すように俯かせ、両手首を背中に回してその手を縛り上げた。浩子には抵抗する間も与えなかった。両手の自由を奪ってしまうと、樫山は背後から浩子の身体の上に馬乗りになって身動きを封じる。
 身動きを出来なくされた浩子の縛られた掌に、生温かいものが押し当てられた。それはみるみる膨張し硬さを増してゆく。背中で見えなくても、浩子にはそれが何かがすぐに分かる。浩子は夢中でその怒張したものを握り締めた。
 樫山は、浩子に一物を握らせると、浩子の背後に覆い被さるようにして床に押し付けられた浩子の胸元に手を伸ばす。手探りでブラウスのボタンを探り当て、それをひとつひとつ外してゆく。ボタンが全て外れるとブラウスを上着ごと肩から外し、縛った手首の上の肘の部分まで引き下げる。裸にされた背中の中心にあるブラジャーのホックを片手で捻じって外すと、浩子のそれほど豊かではない乳房が開放される。その乳房が樫山の両手で鷲掴みにされ、背中のほうへ大きく仰け反らされる。鷲掴みにしている樫山の手の指二本は浩子の乳首をしっかり捕らえていて、挟み込むようにして強く刺激する。浩子は乱暴にされることへの恐怖より、あまりに強い刺激の魔力に酔ってしまい、次の行為の期待から思わず声を挙げてしまう。
 「あうう、いいわっ・・・。」
 胸元への強い愛撫で浩子をすっかり感じいらせてしまうと、樫山の手はすっと胸元を離れて浩子の腰に向かい、浩子が躊躇する間も与えずに、捲り上げられたスカートの下のパンティを一気に膝まで引き下げた。
 (ああ、ナプキンが露わになってしまう・・・。)
 しかし、浩子には引き下げられたパンティの中からどんな格好でナプキンが露わになったかを確かめるような体勢ではなかった。しかも次の瞬間には、そのことを忘れさせてしまうような激しい突きの挿入が、浩子の股間を襲った。
 「ああ、いい。駄目っ・・・、いっちゃう。」
 激しいピストン運動の突きに、浩子は我を忘れた。樫山の持続力は浩子には耐え切れなかった。とうとう白眼を剥いて失神してしまうのだった。
 浩子が我に還った時には、手首のネクタイは解かれていて、樫山も倉庫部屋から姿を消していた。まだ痺れの残った股間に手をやると、尻のあたりから内腿にかけて、どろっとした精液らしきものが垂れていた。樫山が膣外射精して放出したものだった。暫く放心状態のまま、倒れこんでいた浩子だったが、やっとのことで起き上がる。手からまだ抜き取られていなかったブラウスと上着にちゃんと袖を通し、羽織ると足首に絡まっていたパンティを引き上げる。パンティライナー式のナプキンはパンティには絡まっていなかった。
 ブラジャーのホックを留め、胸元のボタンを嵌めながら、浩子は目でナプキンの行方を追った。倉庫部屋の奥の隅に襤褸切れのようになったそれはあった。パンティを脱がされた拍子にそこまで跳んでいったのだろうと思った。そう思いたかった。樫山に気づかれて、放り投げられたのではないことを願った。
 そっと指で摘み上げると、濡れていた部分に埃がついて、薄汚れていた。浩子は身繕いを整え、汚れたナプキンをバッグの中の袋にしっかりしまってから服の埃をはたいて倉庫になった小部屋を出た。
 樫山の姿は、会場外の廊下にも会場内にも最早見えなかった。浩子が思案していると、携帯の着信音が鳴る。携帯メールの着信だった。
 「下穿きを取って、会場の入り口付近にある茶色の紙袋に入れ、事務所に持ってくること。」
 浩子は表示画面に現れたメールの命令に思わず身体を硬直させる。樫山は浩子に話し掛ける時はとても丁寧な敬語を使うのだが、携帯メールではいつも冷たい命令口調だった。そして、その命令を受けると、服従せざるを得ない奴隷と化してしまうのだった。
 浩子はすぐさま会場に取って返す。確かに入り口のすぐ脇のテーブルに小さな茶色の紙袋が置いてあった。スーパーかコンビニの紙袋のような感じだが、無印だった。それを持って、近くの女子トイレの個室に入る。
 一度深呼吸をしてからスカートの中に手を入れて、ショーツを抜き取る。内側のクロッチの部分はライナーを当てていないので、既にしっとり湿っていて、うっすらとした沁みにまではなっていた。浩子は恥かしさに身体を震わせる。しかし、浩子にとって樫山の命令は絶対的なものだった。濡れたクロッチの部分を内側に織り込むようにして小さく畳むと、紙袋の奥に押し込んだ。袋の口を二重に折って、すぐには開かないようにしてから、それを手に事務所へ向かう。プレゼ会場と建屋は別だが、以前にも来たことがあるので、場所は知っていた。
 ミニスカートの下がノーパンなので、階段を使うことは躊躇われたが、エレベータの狭い庫内にもし万が一他の男性と一緒になってしまった時に、自分の身体が臭うのではないかが心配で、裾を気にしながらも、階段を昇った。
 記憶にある踊り場から扉を開けて入ると、見覚えのある事務所に出た。そのフロアの一番奥の隅に出張者用らしき机があり、そこに樫山は座っていた。
 事務所には他の職員も何人か執務をとっていて、何気なく挨拶するように頭を下げながら、隅の樫山の席の前に向かう。
 浩子の姿を認めて、手を出しテーブルの脇を指し示す。浩子は「そこへ置け。」という意味だと受け取って、うやうやしく紙袋を差し出しておいた。
 しかし、樫山はその袋には手もつけずにそのままにして、立ち上がって浩子を少し離れた会議机のほうへ導き、そこにある椅子の一つに座らせた。
 「ちょっと片付けなければならない仕事があるんで、10分ほどでいいですから、ここで待っていて頂けませんか。」
 携帯メールの命令口調とは裏腹に、樫山は丁寧にそう言った。(おそらく廻りの連中に配慮しているのだろう)と浩子は思った。いつものことなので、驚くことではなかった。
 「おーい、橋田さあん。ちょっと悪いけど、こちらにお茶出ししてくれるっ・・・。あ、それじゃ、お茶でも飲んでちょっと待っててください。」
 樫山はさっきの席へ戻るものだと思っていたが、それとは少し離れた別の席へ行って、そこに居た別の男となにやらひそひそ話し始めた。
 浩子の持ってきた紙袋が、空席の机の上に、ちょこんと置かれたままになっている。誰かがやってきて、それを取り上げて見たりしないか、浩子は不安でならない。が、それに意識を集中してそのことを誰かに気づかれてもいけなかった。出来るだけさり気なく、ちら、ちらっと見るだけにして、それでも何度もそのまま置いてあるかチェックせずにはいられなかった。時々、誰かが何かの用で、その出張席の傍を通るだけで、浩子は心臓がどきどきした。
 「あの、珈琲でいいですか。」
 声を掛けてきたのは、貧相な顔をした小柄な女子事務員だった。この事務所の庶務をしているといった風で、以前にも見かけた顔だった。
 「あ、どうも。恐れ入ります。頂きます。」
 浩子も丁寧に返事をして、インスタントらしい珈琲のカップを受け取る。
 焦れて何度も時計を確かめた浩子のもとへは、樫山はなかなかやってこなかった。ずっと別の男と話し込んだままで、出張席へも一度も戻らなかった。やっとのことで立ち上がった樫山はいつの間にそこへ持ってきていたのか、自分の鞄を取り上げると、真直ぐ浩子の元へやってきた。「遅くなりました。さあ、行きましょう。」当然のことのように、浩子を促す樫山の様子に浩子は慌てた。
 「え、でも・・・。あ、あの、・・・。」
 何と口にしていいか浩子は困惑した。
 「あの、忘れ物が。」
 そう言って、フロアの片隅の出張席のほうへ目を向ける。
 「ああ、そうだった。おーい、橋田ちゃーん。悪いけど、その席にある紙袋、持ってきてくれない。」
 橋田と呼ばれた庶務の女性の席は、出張席の隣の隣だった。出張席のすぐ傍にいた庶務の女性に置き忘れた包を持ってきて貰うのは傍目にはそれほど不自然なことではなかったかもしれない。しかし、その中味を知っている浩子に取っては、冷や汗ものだった。
 「あ、ありがとね。橋田ちゃん。」
 手を伸ばして袋を受け取ろうとした樫山は、ついうっかりのように橋田が差し出す紙袋を取り落とす。思わず、浩子はさっとしゃがみこんでその包を中身がこぼれ出ないように押さえ込み、胸元に引き寄せた。咄嗟のことで、短いスカートの裾が乱れるのも気づかないほどだった。
 「あ、ごめんなさい。」
 庶務の橋田は樫山が取り落としたのが、自分の落ち度であったかのように謝る。
 「ああ、いいんだ、いいんだ。」
 そう言うと、浩子にそれを渡せとばかりに浩子に向かって手を伸ばす。浩子は仕方なく樫山の目を恨めしそうな目で見ながら、やっと取り戻したばかりの下着の袋を再び樫山に差し出すのだった。
 樫山は何事もなかったかのように、中味をあらためるかの様に、折った紙袋の口を開いて手を突っ込んだ。
 「あっ。」
 思わず声を挙げてしまったのは浩子だった。一瞬、自分の恥かしいものを晒し者にされるように思った。が、樫山は手探りだけで中味を確認したかのように振舞った。
 「大丈夫だったよ。じゃあね、橋田ちゃん、また来るから。」
 そう言って、樫山は先に立って階段のほうへ歩いていった。後を追うようにして出た浩子は背後から樫山に声を掛ける。
 「あの・・・、おトイレに寄って行ってもいいですか。」
 一応、断わっておいたほうがいいだろうと思って、目の前のトイレのドアへ向かう前に樫山に声を掛けたのだった。しかし、意外な言葉が返ってきたのだった。
 「いや、少し我慢してくれる。」
 以前には、車に乗る前に、樫山のほうから、先にトイレに行っておいたらと言ってくれたのだった。まさか、断わられるとは思っていなかった浩子は動揺する。
 「今すぐじゃなくちゃ、洩れちゃうの。」
 そう訊かれると、そうとは言えなかった。
 「じゃ、急ぐから。」
 遅くなったのは、まるで浩子のせいであったかのように樫山は言って、先に立ってどんどん階段を下りていく。後を追う浩子はノーパンで心許ないスカートの裾を抑えるようにして階段を下りた。
 「どれくらいなら我慢出来そう。」
 事務所のある棟の外へ出て、車に乗った樫山はダッシュボードに紙袋を置き、シートベルトをつけながら、助手席の浩子に声を掛ける。
 答えにくい質問だった。しかし、橋田に出された珈琲を飲み干した時から急に尿意を憶えていたのだった。まさかそれが、あらかじめ樫山が用意して、浩子が来たら出すように橋田に渡してあったカップだとは思いもしない。
 「駅までぐらいなら、大丈夫です。」
 トイレを我慢しろと言った時から、今日は駅までで降ろされるのだろうと思い込んでいた。前回はアパートのある横浜まで送って貰ったのだったが、初めて来た頃は、最寄の駅までだったからだ。が、次の瞬間、浩子は樫山の違う意図を知ることになる。
 「ちょっと失礼。」
 そう言うと、樫山はポケットから紐を取り出し、浩子の手を取って、手首に巻きつけ始めた。
 (又、縛られるのだ・・・。)
 浩子は背筋に冷や汗が流れる気がした。
 その時までには、樫山に縛られるということは、樫山とのセックスを予感させる大切な儀式になっていた。縛られるだけで、浩子の身体は反応し、下腹部が潤みはじめる。
 しかし、その時は違っていた。あと少しの間だけなら尿意を我慢出来ると言ったばかりなのだ。その浩子の手の自由を奪うことは、その後の辱めを意味している。樫山の前でセックスの嬌態を見せるだけではない。もっと恥かしい行為を強いられようとしている。浩子は羞恥心よりも興奮が次第に高まってくることに我ながら驚いていた。
 車が守衛の居る通用門のところで停まる。樫山は軽く挨拶の声を掛ける。守衛はボックスの中の少し高いところから車内を見下ろしている。助手席の浩子は短いスカートからぎりぎりのところまで太腿を晒している。しかし、後ろ手に縛られた状態では膝に手を置いて隠すことも出来ない。縛られていることを悟られないようにするのが精一杯だった。守衛は剥き出しの腿からあとちょっとで覗きそうな股間を盗みみるようにしていたが、それ以上は見えないと諦めて敬礼して樫山たちを見送った。

 樫山の車が向かったのは、やはり駅とは逆の方向だった。浩子もこの街は駅とこの事業所の間の往復しか経験がない。車はどんどん人通りの少ない山の上のほうへ向かっているようだった。浩子は車に揺られる度に、洩れてしまわないように括約筋に力をこめていなければならなかった。
 浩子が連れてこられたのは、その街を見下ろすようにそびえている小高い丘の上の公園で、昔の城址跡が市民公園に作り変えられた場所だった。暮れ始めている公園にはすでに人影は殆どないようだった。浩子は縛られたまま、車外に連れ出された。駐車場の隅に公衆便所らしきものが見えた。それに向かって小走りになろうとする浩子の腕を樫山の手がかっしりと掴んだ。
 「駄目。あそこじゃない。こっちへ来て。」
 樫山に言われるとその通りにするしかない浩子だった。丸太を埋め込んで作られた階段の坂道を少し上がると、街を見下ろす崖の前に作られた小さな東屋に出た。太い丸太を組んで四本の柱の上に屋根を葺いたような格好のどこにでもある東屋だった。その中央にはこれもどこにでもあるような木のテーブルとその両脇に丸太のベンチが据えられている。
 樫山はもう一本のロープをポケットから取り出し、浩子の両手を縛っている紐に通すと、反対の端を東屋の屋根の下を通っている梁の上に投げ上げて通す。ロープが梁から垂れると、その端をぐいぐい引っ張っていく。浩子はロープに引かれるまま、丸太の椅子、そしてテーブルの上へと昇らされてしまう。

東屋吊り

 浩子が東屋の屋根から後ろ手に吊るされた格好にさせられてしまうと、樫山もテーブルの上に這い上がってきて、浩子の傍らに立ち、再びポケットに手を突っ込んで何やら黒いビロードの布で出来た帯のようなものを取り出した。それを浩子の顔にあてがうと、目隠しとして後頭部できつく縛り付ける。視界を奪われた浩子には、最早廻りの状況がつかめない。樫山がどのような位置から覗き込んでいるのか、自分がどんな痴態を演じているのか確かめようもないのだ。しかし、テーブルの上に昇らされたときの記憶から、少し腰を屈めるだけで、自分の短いスカートの中は丸見えになっているのは、間違いなく、その下に何も着けていないので、覗かれれば恥部も剥き出しの筈だった。
 次第に尿意が募ってきて、我慢の限界を迎えようとしていた。(そのまま立ったままで洩らして見せろ)と命じられているのは、声に出して言われなくても分かっていた。樫山には何度も身体を許している。見知らぬ相手ではない。それでも放尿を披露するのは恥かしい。恥かしいだけでなく、そんな行為をすることから得られる興奮に自分が次第に酔いしれていくのが怖かった。
 立ったままで放尿したことなどなかった。下穿きはすでに着けていない。が、幾ら短いスカートでもそのままで洩らせば濡らしてしまいそうに思った。しかも、ゆばりは太腿を伝わってゆくかもしれない。どうすればいいのか分からないまま、浩子は無様に大きく股を開いた。短いスカートが更にずり上がった気がした。そのおかげで、股間は丸見えになっている筈だ。膝を曲げて不恰好だが、股間を思いっきり前に突き出した。
 「ああっ・・・・。」
 ちょろちょろっと洩れ出した滴が太腿を伝いはじめたのを感じて、慌てて下腹部に力をこめる。小水は勢いを得て、股間から迸りはじめた。目隠しで見えないが、大きな放物線を描いて、テーブルの下に向かって滴りおちているのが感じられる。尿道口を流れ出てゆくゆばりは我慢していたものが解放される快感を伴っていた。が、次第に勢いを失ってゆくとともに、コントロールが効かなくなっていった。太腿を伝わらないようにするのに、更に大きく股を広げなければならない。
 股間の割れ目から、ぽたぽたと落ちるようになっても、なかなか滴は途切れなかった。いつまでもだらしなく垂れる小水の滴りは、足元のテーブルで不規則に跳ね、足首にも跳んだのが感じられる。次第に情けなさと恥かしさが舞い戻ってきた。
 「ああ、もう許してくださいっ・・・。」
 目の前に居る筈の樫山に向かって放たれた懇願の声は、甘えるような響きさえもっていた。
 ハンカチのようなものが股間に押し当てられ、濡れた部分が拭われた。屋根から吊られたロープだけが外されると、後ろ手のまま、浩子は肩を抱かれて、何とかテーブルの下へ誘導された。そして目隠しをされたままの格好で、激しく唇を奪われた。舌を絡めた長い接吻だった。浩子は身体が融けてゆくような快感に身をゆだねていた。

 帰りの車ではずっと目隠しと後ろ手の戒めは外されなかった。浩子自身も、外されると恥かしさがこみ上げるような気がして、解いてほしくなかった。心から身を許した相手に包み込まれる不思議な安堵の中に居るような気がずっとして心地よかったのだ。
 アパートの部屋に戻った浩子は、どうやって樫山と別れたのかどうしても思い出せなかった。横浜の自分のアパートがあるすぐ近くまで車で送って貰ったのは間違いがない。いつ目隠しが外され、後ろ手の戒めが解かれたのか記憶にない。最後に声を掛けたのか、黙って立ち去ったのかも思い出せないのだった。目を瞑ると、丘の上の公園の東屋で自分がした行為の想像の姿だけが浮かんでくるのだった。

眼鏡あり

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