妄想小説
淫乱インストラクタ ~ 嗚呼、勘違いの一人相撲
第十章 連れ回される牝奴隷
翌朝、浅川は出社前の浩子に電話を掛け、昨日と同じスカートで来るように命じた。電話を受けた浩子は着てゆくものに戸惑ってしまった。会社に出てゆく女性が前日と同じものを身につけているというのは、非常識の部類に属する。前の晩お泊りをした証拠とまでは言われないにしても、貧乏くさいし、少なくともずぼらとは思われてしまうだろう。若い女子社員にも軽蔑の目で見られることは間違い無い。
昨日の営業のことを考えていて、浅川がわざとパンチラをしてしまうように仕向けているのは間違いないと浩子も悟っていた。自分の恥かしい格好をあの好色爺じいの社長に見せてやることで、受注を取ろうとしたのは、目に見えている。そして、そんな浅川の悪巧みに反抗することは、許されていないのだ。「牝豚奴隷マゾ女」というレッテルをはられた首輪までつけさせられている。それを外す術も教えて貰っていないのだ。
浩子は首輪のことを思い出した。昨日は、胸元のあいたタートルのサマーセーターで誤魔化したが、これとて、いつも同じ服装という訳にはゆかない。浩子はタートルになったサマーセーターを他には持っていなかった。
スカートとジャケットは揃いのものだが、印象が変わるように濃い目のジャケットに合わせることにした。首廻りは、ジョゼットのスカーフを巻いて誤魔化すことにした。それが自然に見えるように、胸元が大きくひらくブラウスを着ることにする。鏡に映った姿を確認して、それほど不自然に見えないことに少し安心した。黒革の首輪が良く見るとスカーフから見え隠れするが、アクセサリーのように見えなくも無い。浩子は「牝豚奴隷マゾ女」のプレートさえ見えなくなっていれば、それでよしとせざるを得ないと思った。
昨晩、ショーツを脱いで、クロッチの汚れに我ながら唖然としてしまっていた。脱いだ時でさえもまだべっとり内側は濡れて沁みになっていた。浅川から散々辱めを受けたせいであることは、最早否定出来なくなっていた。自分でもどうして身体が反応してしまうのか、判らないでいた。しかし、被虐的な思いをすると、股間の潤いが止まらなくなってしまうのだ。浅川に辱めを受けた時も、あの樫山に縛られた時もそうだった。
(やっぱり私はマゾの本性を持っているのだろうか。)
樫山になら、縛られて思う存分身体を自由にされたいと思う。それが浩子の悦びに繋がっていた。しかし、浅川に自由を奪われて、辱めを受けるのは悪寒が走る。ましてや、あの脂ぎった社長の嫌らしい視線に晒し者になるのは、虫唾が走る。それなのに、股間の潤みは抑えることが出来ないのだった。
浩子はパンティの内側に今日もナプキンを当てていくことにした。濡れた下着のままでいると、臭うような気もしたのだ。もしパンティをまた覗かれたとして、それが沁みを作っていたりしたら、耐え切れないようにも思ったのだ。
その日は一日中、浩子は浅川から何を言いつけられるかと、びくびくしていた。浅川に穿いてくることを命じられた短いスカートから露わになる太腿は、事務所を歩き回れば男という男の視線を浴びるのが痛いように感じられた。それで、極力自分の席の机の下に深く座るようにして、脚の露出を避けるようにしていた。そうは言っても、課長に呼ばれれば行かない訳にはいかないし、トイレに立つのを一日中我慢する訳にも行かなかった。
机の中に脚を突っ込んでいれば、座ると股下ぎりぎりになってしまう超ミニの奥に下着を覗かれてしまうこともないと浩子は思っていた。が、浅川が密かに取り付けたCCDカメラがその画像をしっかり捉えて、浅川のパソコンに浩子の下半身のあられもない姿を送りつづけていることなど思いもしない浩子だった。時折、浩子が膝の力を緩めて迂闊に脚を開いてしまうと、きまって浅川のマウスがクリックされ、パンティ丸見えの浩子の下半身が静止画像として浅川のパソコンに取り込まれていた。
「桂木君。」
突然背後から声を掛けられて、浩子は身をびくっとさせた。夕方まで浅川が何も仕掛けてこなかったので、そろそろ片付けを始めて、定時のチャイムが鳴ったら、一目散に逃げるように帰ろうと密かに考えていた浩子だった。
しかし、その計画は後ろから声を掛けてきた浅川に無残にも打ち砕かれた。
「この間言ってたプレゼ機材だけど、今日時間が出来たから、定時後に一緒に見に行こう。次のプレゼまでに間に合わせる必要があるだろう。」
「え、プレゼ機材って・・・。」
浩子には何の覚えもなかった。一瞬、嫌な予感がした。傍目には、何か仕事で必要な事務機材でも二人で購入に行くように聞こえたに違いない。が、浩子にはそれが浅川が自分を連れ出そうと目論んでいる作戦に違いないと踏んでいた。
「わ、わかりました。でも、その前に、ちょっと化粧室へ行ってきていいかしら。」
その時、就業時間の終了を告げるチャイムが事務所に響き渡った。
「あ、鳴ったな。時間に余裕がないから、すぐに出よう。あっちにもトイレはあるから。」
浅川が(逃さないぞ)とばかりに、猶予を与えずにすかさず言った。それで、浩子はトイレに立つチャンスを失ってしまった。
尿意はそれほど強い訳ではなかった。が、万が一、浅川に退社後、何かを仕掛けられることを畏れて、その前に下着の下につけているナプキンを外しておきたかった。一日嵌めていて、もう大分臭ってきている気がしていたし、生理でもないのに、ナプキンを当てていることを、浅川に悟られたくなかったのだ。
浅川は、強引に浩子の二の腕を捉えた。
「さあ、行こう。課長、それじゃ、今日はお先に。」
浅川は少し離れたところの磯山に声を掛けてから、浩子を事務所の出口に急きたてた。
(どこへ連れていくつもりなのだろう・・・。)
ちょうどやってきたエレベータにさっと乗ると、他の者が来る前に浅川はさっと「閉」のボタンを押してしまう。狭い庫内に何人もの男たちと乗るのは嫌だったが、浅川と二人というのはもっと嫌だった。が、逆らう訳には行かない。扉が閉まり、ガクンと揺れてエレベータが1階に向けて動き出すと、浩子の真横に立っていた浅川の手が浩子のスカートに伸びてきた。後ろの尻のほうからスカートの裾の中に手を突っ込んでくる。が、浩子には黙ってされるがままで堪えるしかなかった。浩子は口惜しさに唇を噛み締めて、あらぬ方角を睨みつけることしか出来なかった。
エレベータの扉が開く瞬間に、浅川の手がさっと離れた。それはあたかも、浩子に従順に従う覚悟があるかを確認する作業であるかのようだった。
「ど、どこへ行くの。」
「いいから、言うとおりに黙って歩け、牝豚奴隷。」
浅川が耳元で囁くように言うのを聞いて、浩子ははっとして首元のスカーフを抑える。誰かに聞かれなかったか、不安になって、辺りを見回す浩子だったが、幸い近くには誰も居なかった。
浅川が浩子を連れていったのは、浩子たちの事務所のあるビルから地下鉄で二駅ほど離れた繁華街の大きなデパートだった。浩子は中央にあるエスカレータで上へ上がるようにと言われる。浅川はわざと浩子の少し後ろを付いてゆく。エスカレータは両側の壁がガラス張りの素通しになっている。浩子を晒し者にする為にわざとエスカレータを使わせているのは浩子にも判っていた。デパートは女性客が多かったが、時折、隣を降りてゆく下りのエスカレータに男性客が居ると、クロスして通り過ぎた後、必ず浩子のほうを振り返って超ミニから覗く太腿の付け根を見上げてくる。手にしていたハンドバッグで裾を蔽って隠していた浩子だったが、すぐに浅川にハンドバッグを奪われてしまった。浩子は浅川を恨めしく思いながら、丸見えのパンティを隠すのを諦めざるを得なかった。
浅川は、4階の婦人服売り場で浩子にエスカレータからフロアへ向かうように合図された。浅川が指し示したのは、フロアのほぼ中央付近にあるカーテンの下がった試着室だった。そこへ試着するものは何も持たずに靴を脱いで入らされた。試着室のすぐ脇に立った浅川はカーテン越しに中の浩子にそっと囁いた。
「穿いているスカートを脱いでこっちに寄越すんだ。」
浩子には浅川の意図が分からなかった。が、言いつけにそむけばどんな酷い罰を受けるかと思うと逆らうことは出来なかった。カーテン越しにそっと脱いだミニスカートを浅川に手渡す。
浩子は下半身ストッキングとショーツだけの格好になる。
「ストッキングも脱いでこっちへ寄越せ。」
浅川は無情にも生脚になることを強要してきた。ショーツだけになってしまうと、こっそり内側にナプキンを当てているだけに、不安になる。こっそりトイレで外してきたかったのだが、もうそれも出来ない。ハンドバッグを奪われているので、バッグにこっそりしまうことも出来なかった。体臭が染み付いている筈のナプキンは、外してポケットに入れるわけにもゆかない。
「クレジットカードは持っているよな。」
外から唐突に浅川が聞いてきた。
(何をするつもりだろう・・・。)
益々不安になる浩子だった。が、浅川は外で浩子のハンドバッグを漁っているようだった。
「じゃあ、暫く待ってろ。」
浅川が歩いて去っていくのが気配で感じられる。下半身ショーツ一枚になった浩子は外に出ることも出来ず、ただ不安な面持ちのまま、待たされることになってしまった。
浅川が再び戻ってきたのは、30分もしてからだった。デパートの包を手に抱えてながら、試着室に近づいてくるのが、カーテンの縁から外を窺がっていた浩子にも見て取れた。レジを済ませている様子で、浩子は浅川が自分のクレジットカードを使ったことを推測した。
「待たせたな。」
辺りに人が居ないのを確かめてから、浅川がデパートの包をカーテンの中に差し入れてきた。不安ながら、包を受け取り、中をあらためる。スカートが何着か入っている。引き出してみると、どれもかなり短い物ばかりだった。
「そのジーンズのやつを試しに穿いてみろ。」
それは、若い子の間で流行の、ティアードタイプのジーンズのミニだったが、その中でもかなり短いものだった。穿いてみると、さっきまで身につけていた切り取られたスーツのスカートほどしか丈がない。しかもサイドの部分はわざと擦り切れさせてあって、腿の付け根の肌が覗くように穴が幾つかあいている。浩子も穿いてみたいと思ったことはあったが、それほど若くないからと買うのを躊躇うような品物だった。
「ふうむ、ちょっと若作り過ぎるが、まあいいだろう。」
後ろから浅川がカーテンを少し引いて、外から浩子の姿を覗いていた。
「じゃあ、今度はそのコーデュロイ地のやつだ。」
今度のは、濃いえび茶のスーツ風のスカートだった。今度のもののほうが幾らか長めだった。
浩子は穿き替えるのに、浅川がカーテンを少し開いてくるので気が気ではない。幸い、フロアにはすぐ近くに他の客は居ないようだった。
「やっぱり、それじゃちょっと長すぎるな。」
膝上ではあるが、浩子にはちょっと安心な丈のスカートだった。
「ちょっと入るぜ。」
そう言うと、突然浅川がずかずかと女性用試着室の中に入り込んできた。狭い庫内なので、浩子は壁際いっぱいに下がらなければならなかった。そのすぐ足元に浅川がしゃがみこむ。
「何するの・・・。」
小声で浩子は叫んだ。が、迂闊に外に聞こえるような声は出せない。
浅川は、何時の間にか手に大きな裁縫鋏みを持っていた。ついこの間、会議室に電動ミシンと一緒に置いてあったもののようだった。浅川は何の躊躇いもなく、その鋏みを浩子の裾に当てると、上へ向かって切り始めた。
「あ、嫌っ・・・。」
しかし、浩子が何の抵抗も出来ないうちに、スカートの前の部分にかなり大きなスリットが切られてしまっていた。
「あとで、ほつれないように、上手く自分でかがっておくんだぞ。」
切り取ったスカートの具合を確かめてから、浅川は立ち上がった。それから、残ったスカートを一枚一枚チェックしてゆく。
「これもちょっと長すぎだな。」
そういうと、何のためらいもなく、鋏みをいれて、スカート丈を短くしてしまう。
「よし、これでいいだろう。明日から穿いてくるものが出来たな。毎日同じ服という訳にもいかないだろうからな。明日からは、この中から選んで穿いて来るんだ。いいな。じゃあ、今度はこれを身につけろ。」
そう言って、浅川が袋の奥から取り出したのは、ブルーの布切れだった。受け取った浩子が広げてみると、何とそれはスクール水着風の伸縮性のあるワンピースの水着だった。
「こ、こんなものを・・・。」
動揺する浩子を浅川はにやにやしながら見ている。
「わ、わかりました。・・・・。ちょっと出ててください。」
「いや、ここで見ているから、目の前で着替えてみせろ。」
「そ、そんな・・・。」
(こんな狭いところで無理です)と浅川に執拗に断わろうとした浩子だったが、これ以上試着室の中で、声を立てると、誰かに二人で居るところを感づかれそうだった。
仕方なく、狭い試着室の壁に背中を押し付けるようにして浩子はジャケットを取る。ブラウスも脱いで首輪隠しのスカーフも外す。上はブラ一枚になって、スカートのホックに手を掛けた。スカートをさっと脱いで水着を取り上げようとした時、その腕を浅川の手がしっかり捕らえた。
「ちょっと待て。」
浅川に握られた手を背中のほうに捩じ上げられた。浅川の手がもう片方の手首も探り当て、両手を背中に回させると、右手と左手の親指同士をしっかりと浅川の片手が握り締める。浩子は浅川の片手だけで簡単に両手の自由を奪われてしまった。しかも身につけているのは、ブラとショーツだけなのだ。
「何か変だぞ。ちょっと見せてみろ。」
そう言って、自由のほうの手を、浩子の下腹部に伸ばしてきた。
「嫌、・・・。」
小声をそっと挙げて、逃れようともがく浩子だったが、親指同士をしっかり握り締めている浅川の手が浩子に自由を与えなかった。伸ばした浅川の手は浩子のショーツの股間を探り当てた。
「何かここにしているな。」
浅川の手は薄手のショーツの上から、内側にあてたナプキンの感触を探り当てていた。
「生理なのか。」
恥かしさに目を上げられない浩子だった。
「ゆ、ゆるして・・・。」
蚊の鳴くような声でやっとつぶやくように言った浩子だったが、浅川は決して容赦しようとしなかった。そのまま果物の皮でも剥くかのように、浩子のショーツをくるっとひっくり返しながら、膝まで下ろしてしまった。剥き出しになったクロッチの真中に汚れたナプキンが露わになる。
「なんだ、血はついてないじゃないか。む、・・・。待てよ。」
浅川は手を伸ばして、パンティの裏側に両面テープで貼り付いていたナプキンをさっと剥してしまうと、浩子の鼻先にそれをかざすように持ってきた。ぷうんときつい体液の臭いが漂う。
「これは生理のものじゃないな。」
それは明らかにクレヴァスから染み出た愛液に違いなかった。
「こんなに濡らしていたのか。」
非情な浅川の言葉に、浩子は耳たぶを真っ赤にして恥かしがる。
「い、言わないで。」
つい、声を挙げてしまって、はっとする。が、浅川は浩子の親指を握っている手をずり挙げて、浩子を上向かせる。抵抗すれば、音を立ててしまいそうになるので、浩子はされるがままになるしかなかった。浩子が上体をのけぞらせると、浅川は浩子の股間の割れ目に無雑作に親指と人差し指を突き立ててきた。ジュルッという音が、浩子の耳にも聞こえた気がした。浅川が指をこねると、更にクチュクチュッといういやらしい音で陰唇が反応した。
さっと抜き取った二本の指を再び浩子の鼻先にかざす。それは白く濁ったもので糸を引いていた。
「淫乱女め。」
吐き捨てるように小声でいうと、浅川は漸く浩子の両手を放して自由にした。浅川はしゃがみこんでいる浩子の上から手を伸ばして、浩子の身体からブラとショーツを剥ぎ取った。
そして、下に落ちていた水着と鋏みを取り上げると、何箇所か鋏みを入れ始めた。一部を切り取られた水着が全裸にされた浩子の頭の上に放りだされた。それまで浩子が身につけていた下着と服をひとつづつ拾い上げると、浅川はデパートの袋に詰め始める。そして、幾つか服を選ぶと浩子に投げ付けるように放りつけると、試着室を出ていった。
「早く着替えろよ。」
それだけ言うと、試着室から離れていく気配が感じられた。
浩子が残された衣服を掻き集めると、切り取られたスクール水着と、テニスのスコートの様な短いプリーツスカートと、浩子が着て来た上着だけが残されていた。首輪を隠すスカーフさえ、持ってゆかれてしまっていた。
仕方なく、水着に脚を通して上半身に引き上げた浩子は唖然とした。浅川が入れた鋏みは、ものの見事に両方の乳房の部分と股間の恥丘の部分を切り取っていたのだ。身につけると、それほど豊かではない浩子の乳房がだらしなくぶらんと突き出てしまう。股間を覗くと、陰唇が丸見えで、恥毛もはみ出ていた。短いスカートを穿くと、なんとか股間は隠せたが、思いっきりフレアなプリーツスカートは軽い風にも翻ってしまいそうだった。ジャケットを羽織ってボタンを留めてしまうと、剥き出しの乳房はなんとか隠せたが、今にも覗いてしまいそうな格好だった。ストッキングも取られてしまったので、素足の生脚だった。
ミニスカートからパンツを見られてしまうのも恥かしかったが、今度はそれどころではない。スクール水着はそれだけならスカートが翻ったとしても、黒の下着に見えなくもないが、大事な部分が切り取られているので、裸で居るのにほぼ等しい。いや、それどころか、何か穿いているのに性器を露わにしているなど、恥かしいどころではなかった。それでも、外に出ない訳にはゆかなかった。
浅川は婦人服売り場の外れの、エスカレータの前で待っていた。再びガラス張りで素通しのエスカレータに乗らされるのだった。しかし、今度は覗かれても仕方ないという訳にはゆかない。
すごすごと浅川の前まで来ると、浅川に視線を合わせることも出来ず、うなだれて下を向いたまま、そっと話し掛けた。
「お願いです。エスカレータは許してください。」
「なあに、スカートの上から股間を抑えていれば、覗かれたって、尻だけだ。ミニスカートの下に黒パンなんて、女子高生みたいじゃないか。」
言葉で嬲るように、浅川は冷たく言った。
「さ、行くぞ。ちゃんとついて来いよ。」
下りは浅川が先だった。浩子は浅川に言われた通り、ミニスカートの上から股間を抑えて、スカートの下が覗かれないようにガードする。上がってくるエスカレータに乗っている中年親爺が、浩子の格好に気づいて、遠慮なく下から見上げてくる。真横に来てすれ違う時、浩子は溜まらず股間を抑えたまま男と反対側を向いてしまう。必然的に、尻は丸見えになる。
「へえ、黒パンかあ。」
男がちらっとそう言ったのが聞こえた。
一階で、浅川が浩子が降りてくるのを待っていた。浅川は顎をしゃくって、眼鏡売り場を指し示す。浩子はどうしていいのか意味が判らず、突っ立っていたら、浅川が近づいてきた。
「サングラスでも買っておけよ。別に無理にとは言わないけどな。」
はっとして、浩子はサングラス売り場に走り寄る。震える手で、なるべく顔が隠れそうな大き目のレンズのものを選ぶ。いつもはお洒落な細身の眼鏡をするようにしているが、殆ど度が入っていない、お洒落と賢そうに見せる為のものだ。が、今は出来るだけ顔が隠せるものでなければと思った。
レジでクレジットカードで払うと、正札を取って貰ってすぐに付けた。サングラスを掛けると少し気が落ち着いてきた。鏡を貸してもらって、自分の顔をチェックする。普段見かけない顔つきになるので、知人でも気づかないかもしれないとちょっと安心する。
「さ、もう行くぞ。」
後ろで浅川が煽ってきた。慌てて浅川の後を追うようについてゆく。
それから浅川に促されて、再び地下鉄に乗る。行った先は電気街だった。小さな店がごちゃごちゃ並ぶ中をすり抜けるように浅川が歩いてゆくのをやっとのことでついてゆく。
店が幾つも並んでいるので、何処へ向かっているのか、見当もつかなかった。突然、浅川が姿を消した。と思ったら、すぐ横の店の中にもう入っていた。ちらっと横の看板を見て、一瞬足が止まりそうになる。「アダルトショップ。大人のグッズ」という文字が浩子の目に飛び込んできた。一瞬躊躇ったが、立ち止まるよりさっと中に入ってしまったほうが目立たないと気づいた。
浅川の後を追うと、狭い店内の奥にある、これまた狭い螺旋階段を上がってゆくところだった。奥まで行く間に、鰻の寝床のように狭い通路の両側にびっしりと並んだDVDのけばけばしい写真が目に入る。じっくり見ることが出来ないが、裸の女性の写真が並んでいるのがわかる。
浅川が上がっていった鉄の螺旋階段は、狭くて急だった。下から見上げられると、浩子のスカートでは下に穿いているものが丸見えになるのは間違いなかった。店内が薄暗いのと、サングラスで顔を隠しているのだけがせめてもの救いだった。浩子は意を決して、階段に踏み込む。
とにかく廻りを見ないように意識的に視線を反らす。自分の方を凝視するような視線にあったらもう立っていられないような気がした。狭い店内に客は意外と多かった。中には女性客も居るのに気づいた。が、お互い相手は無視して、気づかない振りをする。
浅川はどんどん上へあがってゆく。結局着いたところは4階のコスプレ衣装がびっしりと並んでいるところだった。ちらっと見た目にも卑猥な形の革で出来た衣装などが並んでいる。そういう物を見慣れない浩子にも、どういう種類の衣装かは察しがついた。
浅川はとある場所で足を止めた。そこには、いわゆるバドガールと呼ばれるミニのワンピースが何枚も掛かっていた。1990年代に一世を風靡した米国ビール会社のCM衣装で、伸縮性のある素材でボディコンの超ミニになっている。ビール会社のCMが印刷されたものが多いが、無地のものもある。浅川はその中から真白の無地のものを選び出し、浩子の身体を眺めながら丈を指で計っていた。
「これなら長さもちょうどいいだろう。最初っからパンツが見えてるっていうのも興ざめだからな。かといって、股下はやっぱりぎりぎりじゃなくちゃ意味がないからな。」
浩子は押し付けるように手渡されたワンピースを受け取る。頼り無いほど、布地が少ない。伸縮性がある素材なので伸びるのだろうが、ぴっちりと身体の線を露わにしそうだった。
「それから、バイブを買って行こう。好きなのを選ばせてやる。」
そう言うと、ワンピースを手にした浩子の背を押して、更に店の奥へ押しやる。途中からコーナーがコスプレから性玩具に変わっていた。バイブと言われてどんなものか浩子は正確にはわからなかった。が、そこに並べられているものを目にして、目のやり場に困った。男のペニスそっくりなものが様々な色とデザインで並べられていたのだ。
「好きなのを取れ。長さは25cmぐらいのがいいだろう。」
恥かしさにじっと見つめることが出来なかった。適当に手近なものを手に取る。先のほうが透明なゴムで出来ていて、根元のほうに、パール大のビーズが埋め込まれているものだった。
「さすがに、目をつけるものがいいな。それはなかなかの人気商品だ。それから、ピンクロータっていうのも買っておけ。その下にあるピンクのやつだ。」
浅川が指す方向を見ると、ピンク色をしたプラスチック製の3cmほどと10cmほどの細長い物体に細いコードが繋がった器具があった。訳もわからずにビニルケースに入ったそのセットを手に取る。
浅川は浩子自身に買いに行かせようとしていた。金を自分に支払わせる為と、自分で買うという辱めの意味もあるのだと思った。サングラスをしていることが浩子に僅かばかりの勇気を与えてくれた。
レジでは黙って商品を差し出し、相手の顔を一度も見なかった。店員も慣れているらしく、淡々とレジを打って、商品を袋に入れ、浩子の渡したカードを機械に通した。
「会員カードはお持ちでしょうか。今すぐお作りも出来ますけど。」
「結構です。」
にべもなく断わると、商品とレシートだけ受け取ると店員に背を向けて浅川を捜した。
(浅川はいつもこんなところへ来ているのだろうか。)
浅川に対する嫌悪感が益々募ってくるのを感じていた。浅川を捜して螺旋階段のところまで来て、既に浅川は階下へ降りているのに気づいて、浩子も階段を降り始めた。浅川の視線が短いスカートの裾の中に注がれているのがはっきりと感じられたが、ここまで辱められ、感覚が麻痺してきていた。
店を出たところで、浅川はデパートの包と浩子のハンドバッグを返してきた。
「明日は、そのミニスカートの中から好きなのを選んで着て来いよ。それからバイブをバッグに入れてくるのも忘れないように。」
子供に諭すように浩子に命じると、さっと踵を返し、呆然と立ち尽くす浩子を置いて、一人駅のほうへ向かって浅川は立ち去りだしていた。
最早追い駆ける必要がなくなったのを感じて、暫くただ立ちすくんでいた浩子だった。浅川のアパートは、浩子の棲む横浜とは反対方向だと聞いていた。浅川の姿が見えなくなってから、浩子も駅のほうへ歩き出した。どこかで服を着替えたかった。が、どれを選んだところで、スカート丈の短さは変わらないことに気づいた。せめて下着だけは着けたかったが、袋の中を何度かき回してもブラもショーツもストッキングさえ見当たらなかった。そして、試着室の中でショーツから剥ぎ取られた筈の汚れたナプキンも。
結局、その日は浩子は股間を蔽うものがないまま、いつ捲くれるかもしれない頼り無いミニスカートの裾を抑えながら、やっとのことで電車に乗って、横浜の自分のアパートまで戻ったのだった。買い物に引っ張りまわされて遅くなった為に、電車は超満員のラッシュ時に重なった。人が多いのでミニスカートから剥き出しの脚をじろじろ見られないで済んだのは良かったが、ホームで待つ浩子の姿は痴漢の目を惹いたに違いなかった。電車が走り出してすぐに、浩子はお尻に何か違和感を感じた。浅川に買わされた衣装の袋を手にしていた為に、吊り革を掴む手とで、両手が塞がり、防備しようがなかった。最初気づかない振りをしていたことが、痴漢を更につけ上がらせることになってしまった。声を立てようとして、自分の異様な格好を思い出し、喉まで出掛かった声を呑み込んだ。気丈な浩子は、何度か仕掛けてくる痴漢の手を捕らえて、大声を出して廻りの乗客に知らせ、こそこそ逃げる痴漢を追い散らしたことがある。乗務員の手に引き渡したことさえあった。が、今、周りの注目を集めるのは、どう見ても、浩子に不利だった。もし、万が一、痴漢が浩子の格好に気づきでもして、スカートを捲り上げられたら、恥をかくのは浩子のほうになってしまうばかりか、浩子のほうこそ変態視されてしまうのは目に見えていた。しかも荷物の中にはバイブまで持っているのだ。そんなものが転がり出たりでもしたら、益々立場は悪くなってしまう。浩子にはじっと堪えることしか残されていなかった。
痴漢は浩子がじっと堪えているので、段々図に乗ってきたようだった。最初は手の甲で揺れるのにあわせて、ぶつかった振りをしているだけだったのが、ぴったり押し付けたままになり、そのうち掌を返して、浩子の尻の膨らみを手のひらにすっぽり包み込むようになった。それでもじっとしていると見るや、今度は簡単にずり上がってしまうフレアなスカートを引き上げ始めたのだ。
これには浩子も慌てた。お尻は堪えるしかないと覚悟していたが、目の前には座席に座った乗客が並んでいる。真正面は大学生風の男で、それでなくても短いスカートから太腿を露わにしているので、盗み見るようにちらちらとさっきから視線を送ってきていたのだ。スカートがもし捲くられてしまうと、その下には一番見られたくない恥部を丸出しにした水着しか着けていないのだ。そんなことは、誰にも絶対に気づかれてはならなかった。
何度も後ろを振り返って痴漢を睨みつけようと試みたが、立錐の余地もないほど混み合った車内は、足を踏み替えることもままならなかった。スカートを少し捲り上げることで、男の手はその下の水着にまで達していた。痴漢はそれがパンツではなく、水着なのだとは気づいてはいない。手触りだけでは分かり様もない。痴漢はパンツを探り当てたと分かると、今度は人差し指をくの字に折って、指の先を尻の割れ目に沿って下げてきた。再び浩子は慌てだした。男が目指すその先には、穴があいて、恥部が剥き出しの部分なのだ。浩子はパニックに陥っていた。
男の手は浩子の様子を窺がいながらもゆっくりと割れ目を前へと滑っていた。その指先が穴を探り当てた瞬間、堪らずに浩子は大声を上げた。
「痴漢が居ます。ここに痴漢が居ます。」
声と共に、痴漢の手はさっと引かれていた。が、周りの乗客の目は一斉に浩子に向けられていた。そばに居た乗客にも誰が浩子に痴漢行為を仕掛けていたのかは、分からなかったようだ。ただ、その餌食となっていたミニスカートの女性にだけ、皆の注目が向かってしまったのだ。
浩子は恥かしさに顔を真っ赤にして俯いてしまった。その姿が周りの乗客に起こっていたことを想像させてしまうのだった。浩子は痴漢の手からは逃れたものの、痴漢された女としての晒し者の身としてずっと堪えねばならなかったのだった。
電気街のアダルトグッズの店の前で浩子と別れて、自分のアパートに戻った浅川は戦利品をつぶさに調べていた。浩子の身につけていた下着のブラとショーツ、それにショーツの裏側に貼り付いていた生理用ナプキンだった。
女性の生理用品を間近に見るのは、さすがに浅川も初めてのことだ。男には未知の世界とも言えた。浅川には姉妹は居なかったし、居たとしても生理用品に手を出して見つかろうものなら、どんな叱責を受けるか分からない。初めて見るそれは、不思議な格好をしていた。内側は吸湿性のいい繊維で覆われているようで、浩子の股の割れ目に指を突っ込んだ時の濡れようの割には表面は既にさらっとしていた。が、丸一日、ねっとりとした分泌物を吸っていたらしく、薄っすらと黄色っぽい染みになっている。鼻をちかづけると、つうんときつい臭いが残っている。
(これが、磯山が言っていた、時々臭っていると言った桂木浩子の香ってやつか。)
浅川は感心しながら何度か臭いを嗅いでみる。浅川には女の匂いに性欲を感じることは出来なかったが、匂いフェチらしい磯山には、浅川の戦利品は垂涎の的だろうと思った。しかし、まだ磯山に呉れてやる訳にはゆかない。何か浩子を虐めるのに、使える筈と、大事にジップロックのビニル袋に下着と別々にぴっちり封をしてしまいこむ。
浅川は、この手に入れた戦利品を使って、更に浩子を貶め、辱めることが出来ないかとじっくり考えていた。
男の浅川には、生理のことは分からないことだらけだったが、月に一度、経血という血を流すものだとはさすがに知っていた。が、その為に着けていたのではないだろうとは想像がついた。生理の準備としては、ナプキンを当てたりするのだが、生理用の汚れ難い専用のパンツがあるというのも聞いたことがあった。それらしいものを着けていないし、穿いていたのは、如何にも汚れ易そうな白い透けた素材のショーツだった。ショーツのクロッチのほうは汚れていないところをみると、朝からこのナプキンでガードしていたのだろう。逆に言えば、ナプキンでも当てていないと、どれだけ汚してしまうのだろうか。そんなことが想像される。
(性器から洩れる分泌液でショーツを汚すことをどうも、大分気にしているようだ。磯山が言うように、その臭いにも神経を使っているのかもしれない。それなら、いっそ、パンツを穿き替えるのを禁じて、徹底的に汚させるのはどうだろう。どんどん臭いがきつくなって、染みもくっきりついてくるパンツを一週間穿かせ続けて、着替えさせないのだ。あの高慢な女に、どんなに屈辱的なことだろう・・・。)
浅川は突然湧いてきたアイデアに、身をわくわくさせ始めていた。
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