助手席女

妄想小説

淫乱インストラクタ ~ 嗚呼、勘違いの一人相撲



第二章 淫らな誘惑

 「ごめんなさい。ちょっと気分がおかしいの。」
 浩子は顔を俯かせてハンカチを口に当てている。樫山琢也は、すぐに車を道路の路肩へ寄せて停めた。
 「大丈夫?気分が悪いんだね。」
 「ごめんなさい、ほんとにご免なさい。ちょっと、車に酔ったのかも・・・。」
 カチンと音がした。肩を優しく抱かれるようにして、自分のシートベルトが外された音だというのが判った。男の手が肩からゆっくり浩子の背中をさすってくる。温かい手のぬくもりが心地よい。
 「ゆっくり、ゆーっくり、呼吸して。そう、暫くじっとしていれば、収まってくるから。」
 そういいながらも、浩子の背中を優しく撫でている。
 「ちょっとご免。これ、外したほうがいい。」
 男はそう言うと、浩子の胸元に手を伸ばしてきた。ブラウスの上に留めていたリボンのタイを男は器用に解いて緩めた。浩子は自分で解くでもなく、されるがままになってじっとしていた。
 男はそれから手を伸ばして、浩子の座っている助手席のシートを少し後ろに倒し、浩子の首に手を当てて、ゆっくりとシートに浩子の身体を横たえさせる。シートを倒す時に、男の腕が浩子の腰に触れた。思わず、腿をぎゅっと閉じてしまい、そのことを却って気づかれてしまわなかったかと顔を赤らめてしまった。
 「ここじゃ、危ないから、少し車を動かすよ。なるべくそっと運転するから。」
 そう言うと、車が来ないか、後部を何度も確認してから、男は車を発進させた。浩子はハンカチを口に当てながらも薄めを開いて、車の天井の脇にサイドウィンドーを通して見える街の風景を眺めている。シートを倒し、寝そべって見上げているので、いつもとは違う下から見上げた風景が見えている。殆どは曇った空ばかりだ。時折、交差点を通る度に、信号機が見える。そのうち、市街地を外れたのか、交差点は殆ど無くなってしまった。
 「この辺じゃ、こんなところしかないんです。車を走らせていると、余計に悪くなるといけないから。」
 突然暗くなった周りの様子に、浩子がゆっくりと上半身を起こして見回す。そこは、屋内にある駐車場だった。
 「ここで暫く待っていてください。」
 男はドアをバタンと閉めて出てゆく。男が車を離れたことをしっかり確認してから、浩子はゆっくり身を乗り出してあたりをもう一度確認する。ビルの一階に設えてある駐車場のようだ。他には車は一台も駐車していなかった。がらんとした虚ろな空間だった。
 暫くすると男が戻ってくる気配を感じて、再び浩子はさっと身を横にする。
 男は助手席のドアをそっと開けた。
 「ここよりも部屋で休んだほうがいいでしょう。すぐに楽になりますよ。さ、手を貸します。」
 男が差し出す手に思わず手を伸ばしてしまう。握った手の温かみに安心感が蘇った。男に寄添うようにして、導かれるがまま、エレベータのほうへ向かう。片手でハンカチを口に当て、もう片手は男の二の腕を掴んで歩いてゆく。よろけないように、男は背中からそっと腕を回して腰を軽く抱えている。
 (部屋)と聞いて、どういう場所かすぐにピンときた。が、浩子自身、男性経験もなく、そういう場所は入ってみたことも無かった。すべてが初めての経験で、普通なのか変なのかも区別がつかない。シティホテルはおろか、ビジネスホテルでさえ一度しか使ったことはない。一度っきりのホテルは、東京へ上京してきた時の東京駅のステーションホテルだった。
 ガチャリと重い鉄の扉が自動的に締まる音が聞こえた。そのまま部屋の真中にあるベッドまで案内されて、背中を支えて貰って、仰向けになった。男が靴を取ってくれている。浩子はどうしていいか判らず、されるがままになっていた。
 パチンという音がしてミュールのホックがはずれると、男は両方の足首を持ってベッドの中央のほうへ浩子の身体をずらした。脚が持ち上げられると、下着が覗いてしまわないか、ちょっと心配になる。が、スカートの裾を抑えるでもなく、されるがままにじっとしていた。
 「暫く、部屋を出ていましょうか。私が居ると落ち着かないでしょう。」
 そう言って、男は立ち上がる。
 「あ、あの・・・。」
 浩子は男の目を見ずに躊躇いながら、ゆっくり言った。
 「できれば、もう少し部屋に居てもらえませんか。知らない所で一人になるのが怖くて・・・。」
 やっとの思いで、それだけ口にした。
 「いいですよ。」
 男のほうは見ないが、気配で男がベッドの傍らに椅子を引き寄せてそこへ座るのが判る。
 浩子はその男のほうへ、手を伸ばす。しかし顔は向けない。自分でも自分のしていることが判らなかった。浩子が伸ばした手に男の温かい手が触れた。それを待っていたかのように、握り締める。
 男は無言で浩子に握られた手をそのまま握り返してきた。浩子は男の手を握ったまま、ゆっくり引き寄せ、自分の胸の膨らみの上へおくと、今度は両手でその手を包み込む。男の掌が自分の胸の上に当たるようにして両手で押さえ込む。浩子はドクッ、ドクッと激しく打つ自分の鼓動が、男の手に読み取られているのを感じていた。温かく感じられていた男の掌が、次第に熱いものに変わっていくように思われた。浩子は衝動を抑えられなくなっていくのを感じた。
 自分がしているのではないような感覚に陥りながら、ゆっくりと、男の掌を抑えたまま、自分の身体の上を、胸から腹の上、臍を通って下腹部へと導いた。股間が熱い。男の掌が熱いのか、自分の恥丘が熱くなっているのか、もはや浩子には見当もつかない。
 浩子の息遣いがどんどん荒くなっていった。
 「待って。」
 男が優しく声を挙げた。そしてゆっくり立ち上がると、ドアのほうへ戻りかけ、化粧室の反対側のクロゼットの扉を開ける。戻ってきた男は手を後ろに回して、何かを隠している。
 「二つ・・・、二つだけ言うことを聞いて。」
 「えっ、何・・・。いいわ。何でも・・・。」
 「目隠しをつけて。」
 そう言うと、背後から手にしたアイマスクを出して、浩子の首に通す。一旦、首まで下ろしてから、髪のしたを潜らせるように耳の上まで引き上げる。浩子は、何も見えなくなると、却って落ち着くような気がした。

目隠し下着

 「手を後ろへ。」
 男が耳元で囁くようにそう言うと、仰向けになった浩子の片方の肩を持ち上げる。自然と浩子の身体は半回転してうつ伏せになる。男に背中を向けるようになると、男は優しく浩子の手首を掴み、背中に置かせる。その手首になにやら巻かれた。部屋着としておかれているタオル地のバスローブ用の帯だというのが感触から判った。もう片方の手首も背中に導かれ、交差するようにして背中で縛り上げられた。決してきつくは無いが、解けないような厳重な結び方だった。
 「どうして・・・。」
 目隠しされたままで、何処にいるか判らない男のほうへ尋ねる。
 「却って楽になれるから。抵抗出来ないほうが、葛藤しないで感情どおりに振舞える。」
 最初、男が言っている意味が浩子には理解できなかった。が、不思議と不安は沸き起こらなかった。身を任せてしまうほうが、男の言うように楽なのかもしれないと、ふと思っただけだった。
 男は浩子を縛ってしまうと、再び肩を掴んで浩子の身体を仰向けにさせた。背中の手首が少し痛かったが、これからされることへの不安に、それどころではなかった。
 男の手が浩子の太腿に触れたのが判った。見えないが、スリットが上のほうまではいったロングスカートはかなり肌蹴ているのが、男の触れた場所から想像された。男は腿の後ろ側にそっと手を回し、浩子に膝をベッドの上で立てさせた。肌蹴たスカートがさらに上へたくし上がるのが感じられる。
 男の手が、浩子のスカートのホックを外す。腰の緊張が解け、身体が更に楽になる。緊張感が次第に弛緩していくのが分かる。男の手はスカートの裾に戻り、その割れ目に沿って、内腿へと伸びていく。掌が浩子の片方の腿の内側をしっかり掴んでいた。男が力を入れるに従って自然と脚が開いていく。魔法を掛けられたかのように、もはや浩子は自分から股を閉じることが出来ず、男が力を入れるに任せて、脚を開いていった。
 もう片方の腕が浩子の首の下に伸び、うなじ越しに抱くようにして反対側の肩から胸元へ伸びてきた。男の手はタイを解いた時から肌蹴ているブラウスの胸元の鎖骨に触れ、そのままブラジャーをしている胸まで降りてきた。浩子には身動きが出来ない。両手を背中で縛られているので、されるがままになっている他はない。
 その時、やっと男が言った意味を浩子は理解したのだった。
 (手を縛られていなかったら、払いのけようか迷った筈だ。縛られているからこそ、男の手を受け入れるしかないのだ。自分から身を投げ出しているのではない。縛られているから抵抗出来ないのだと、思うことが出来るのだ。)
 男の腿の手が次第に這い上がってくる。その親指は脚の付け根にすでに達している。
 浩子は唾を思わず呑み込んでしまう。
 (ああ、声が出てしまいそう・・・。)
 男の親指がクリトリスの上の恥骨のあたりをきつく抑え、そこを支点にして人差し指と中指が揃えられて鼠頸部から撫で上げられると、もう我慢が出来なかった。
 「ああっ・・・。」
 ドクッと、下穿きのしたで、何かを洩らしてしまったような気がする。それを確かめる術もない。しかし男にはそれを気づかれてしまうかもしれないのだ。
 (何かいやらしい匂いがしてしまわないだろうか。でも、縛られていては何もすることは出来ない。ただ、されるがままになるしかないのだ。)
 浩子は、おかしくなりそうになる度に、(自分は縛られていて、抵抗出来ないのだ)と自問自答のように繰り返していた。そのことを自分の身体が反応してしまうことへの言い訳のように。
 突然、男の手が浩子の股間を離れた。
 (いやっ、止めないで。)
 浩子はもう少しでそう口にしてしまうのを、寸でのところで堪えた。
 しかし、男の手は、浩子の身体から離れた訳ではなかった。股間をまさぐっていた手はそのまま浩子の身体の上を這うように上がってきて、胸元まで達すると、ブラウスのボタンを上からひとつずつ外し始めた。臍のあたりまでボタンを外しきると、スカートの中にたくしこんでいた裾を一旦引っ張り上げ、大きく開かせると、今度はその手を背中の中に回し込んできた。もう片方の手で肩から押さえ込まれているので、身動きひとつ出来ない。男は両手で抱きかかえるような格好のまま、背中に手を伸ばして、ブラジャーのホックを探り当て、器用に片手でそれを外した。
 途端に胸の緊張がなくなり、ブラジャーがだらしなく下に垂れ下がる。男の手は背中から戻ってきて、だらしなく乳房の下にぶら下がっているブラジャーを胸元へ押し上げた。それほど豊かではない浩子の乳房は抑えられるものを失って、かすかにぶるんと震える。
 男の手が股間に戻るのと、片方の乳首が強く吸われるのが同時だった。どちらの感触に反応したのかさえ、浩子にはもう分からなくなっている。あまりの刺激に背中を仰け反らせて、胸を突き出すようにする。
 「ああああっ・・・・。」
 はしたなさも忘れて、思わず大声を上げてしまう浩子だった。
 浩子が我を忘れて悶え出したのを見て、男は股間に伸ばした手を浩子の尻の後ろに回す。男の親指が浩子の下穿きの端にかかり、一気にそれを剥き下ろした。
 「ああ、いやっ。」
 浩子の叫びは虚しかった。あっと言う間に、浩子のショーツは膝頭の上まで剥き下ろされてしまった。さすがの恥ずかしさに、膝頭を合わせて、何とかもがく浩子だったが、男にとってそのショーツを浩子の脚から抜き取るのは訳もなかった。
 目隠しをされている浩子には、ショーツを剥ぎ取られた自分の下半身がどんなな姿で剥き出しにされているのかも、奪われたショーツがどうされているのかも知る由はなかった。
 しかし、その直後、浩子の鼻に何かが臭うのが感じられた。何か憶えのある淫らな匂いだった。両手は縛られたまま自由にならないばかりか、男に肩を抑えられていて、自由に身動きも出来ない。その浩子の鼻先に何か臭うものが突き立てられているようだった。
 「なに、何をしているの。」
 目隠しをされている浩子には何が何だか判らない。が、その直後、自分のさっきされたばかりの仕打ちに思いついて、思わず顔を赤らめる。
 「やめて、そんなこと。」
 浩子は、自分の鼻先に突き当てられて、その匂いを嗅がされているものの正体に思い当たったのだ。それは、さっき剥ぎ取られた下穿きに違いなかった。しかもそれがあのきつい臭いをさせているからには、べっとりと汚れているのは間違いなかった。
 「嫌あああ。わ、わたしっ、そ、そんなあ・・・・。」
 その汚れているらしい布切れが、浩子の頬まで汚すかのように押し付けられた。ねちょっとした感触が、浩子の嗜虐感を一層高める。
 (わ、わたしの汚したもの・・・。)
 その時、無防備になっていた浩子の股間を男の二本の指が侵入してきた。クリトリスを二本の指で挟むようにしながら、その下の陰唇を指先で掻き上げる。
 「ビチャ、ビチャ、ビチャ・・・」
 自分のものとも思えない陰唇が、卑猥な音を立てるのを、浩子はどうしようもなく、聞いているしかなかった。それよりも、その刺激で、頂点に達してしまいそうなのをどうしたら抑えられるのか、そちらのほうが怖くて不安な思いにかられていた。
 「ああ、もう駄目。おかしくなってしまうっぅ・・・。」
 浩子は自由にならない背中の縛られた両手を振り解こうともがくが、どうにもならなかった。男の責めは執拗だった。もはや、浩子は理性を失うことを抑えるのは不可能かもしれないと諦め始めていた。
 「あううううっ・・・。」
 太腿を熱いものが流れ落ちるのを、浩子は感じ取っていた。
 (まさか、そんなこと・・・。そんな恥ずかしい真似を・・・。)
 しかし、股間と太腿に感じた熱い迸りの余韻は消え去ってはくれなかった。
 「いやっ、恥ずかしい・・・。」
 しかし、その浩子の身体が乱暴に裏返させられる。スカートが上のほうまでたくし上げられるのが腿の感触で感じられる。浩子は自分の裸の尻が、両側から押えられて、男に引き寄せられるのをどうすることも出来ないでいた。自分の尻が男の前に突き出させられるように引き上げられた。次の一瞬、その中心が熱いモノで貫かれた。
 「ああああああっ、・・・・。」
 熱い肉棒が体内に突き立てられると抵抗しようとする全ての力が失われて、体中がなにかに溶け込んでしまいそうな感覚に襲われた。
 「ああっ、もう駄目っ。」
 「うっ、うっ、うっ、うっ・・・。」
 男のピストン運動で突き立てられる度に、浩子は声を上げてしまうのを我慢出来なかった。
 「もっとおっ、強くぅっ・・・つ、突いてえぇぇぇ。」
 男に嘆願しながらも、浩子は陰唇から堪え切れないものを垂らしてしまっていた。浩子は男の激しい突きに失神してしまうのだった。


 (ああっ・・・・・。)
 浩子のあられもない声が台所に響き渡っていた。その自分の声にふと我に返った浩子だった。自分の指が触れている股間はべっとりと濡れていた。自慰の経験は無い訳ではなかったが、こんなに濡らしたのは初めてのことだ。自分の妄想の中に酔いしれてしまっていた。
 (ああ、なんてはしたない・・・。)
 しかし、妄想の心地よさに暫くは立ち上がることすら出来ないでいた。

眼鏡あり

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