ダミーカメラ

妄想小説

淫乱インストラクタ ~ 嗚呼、勘違いの一人相撲



第十四章 騙された報い

 次の日、早速、事は実行に移された。昼休みの後、課の全員が磯山課長の前に集められ、浅川の課長代理拝命が磯山課長自身の口から課員全員に通達された。浅川の席は磯山の横の窓際に移された。それだけでなく、あらかじめの打ち合せ通り、浩子には磯山と浅川の秘書役の兼務も言い渡されたのだった。
 課員一同には晴天の霹靂で、騒然となりかけたが、浅川の気合のはいった「一同、注目。」という恫喝にも等しい大声で、しいんと静まり返ったのだった。
 「えー、本日から課長代行を拝命しました浅川で御座います。職場の活性化、効率化に向けて全力で取り組んでいく所存でございますので、皆様方には磯山課長同様、よろしくお願い致します。」
 言葉は穏やかだが、形相は(俺に刃向かう奴は容赦しないからな。)という凄みをもって睨みつけていて、その場にいた一同を震え上がらせたのだった。
 その日、早速、浩子には浅川がやる筈だった書類処理の雑用がどっさり移され、残業をしてでも今日中に仕上げろというきつい命令が浅川から下ったのだった。磯山の口から、課長代行として任ぜられた浅川の命令は、それでなくても反抗出来る立場ではなかった。しかし、それが実は、その夜の為に仕組まれた浅川の罠だとは、浩子には知る由もなかったのだった。
 浅川は、磯山にビルの管理会社が設置した防犯カメラという嘘を話した後、急遽ダミーカメラを事務所の数箇所に急遽設置しておいた。それは浅川はよく行く電器街の店から仕入れてきたものだったが、もともと機械には疎い磯山に贋物と見破られる心配は殆ど無いと言ってよかった。が、それとは別に、浅川は本当の隠しカメラをその夜の為に用意していた。ダミーカメラのように目立つところには置かず、それとは判らないようなカムフラージュを仕掛けて、数箇所に設置し、それらに全てビデオカメラを接続しておいたのだ。
 定時後に、再び浅川は隣の雑居ビルの非常階段を上がる。浩子の居る事務所に明かりが点っているのを確認すると、いつもの携帯で浩子を呼び出し、ブラインドを上げるように命じる。その命令を受けて、はっとなった浩子だったが、浩子にとって、浅川の命令は絶対なのだった。
 浩子は、夜の闇に向かって、また痴態を演じなければならないことを覚悟した。その時、ガチャリという音とともに、事務所に入ってきた磯山を見て、浩子は唖然としたのだった。
 「か、課長。どうしたのですか、今頃。」
 「いや、ちょっと確認して起きたいことがあってね。いや、いいよ。そのまま仕事を続けて。」
 磯山は、本当に何か忘れ物をしたかのように、自分の席について、抽斗をごそごそ探って、何やら書類を出してはそれを確認する振りをしながら、斜め前の席の桂木浩子の様子を窺うのだった。
 磯山は事務所に入った時に、いつもは下りている筈のブラインドが全て上がっていることに気づいていた。ブラインドを上げたのはその夜、独り残業で残っている桂木以外には在り得ない。そのことは、桂木がこれから繰り広げられるプレイをちゃんと認識していて、その為の準備として整えておいたのだという証拠だと磯山は取ったのだった。
 (俺は露出狂ではないが、この女がそのほうが感じるというのなら、明けっぴろげた夜の事務所で犯すのも悪くはないかもしれない。)
 桂木浩子を思いのままに犯せるということに夢中になって、磯山は外から誰かに見られるかもしれないというリスクについて考えもしなかったのだ。
 斜め前で、こちらに背を向けて仕事をしている桂木を、磯山は盗み見るように眺めた。机の下に、短いスカートから伸びたはちきれそうな桂木の太腿が垣間見れる。真正面から覗けばパンツが確実に見えそうな短さだった。磯山はこのところ、桂木がいつも際どいミニスカートを穿いてきていることに気づいていた。が、それがまさか浅川の命令によるものとは思っていなかった。が、浅川が(俺の言うことをきかせられる女)という言葉を使った時に、もしかしたら、桂木は浅川に命じられて短いスカートを態と穿かされているのではと思い始めたのだった。
 磯山はどういう迫り方が一番刺激的かをずっと考えていた。桂木を縛る縄は既に用意してあって、磯山の机の抽斗に隠してあった。問題はそれをどういうタイミングで、どう使うかだった。
 磯山はこちらに背を向けている浩子の斜め後ろから見えているミニスカートの裾から伸びる太腿を眺めながらゆっくりと音を立てないように立ち上がった。そして、これもそおっと音のしないように自分のズボンのチャックを下ろす。すでにその下のモノは硬さを増しつつあり、膨らみ始めている。ズボンに手をつっこみ、その頭を擡げ始めたモノを外に牽き出し、ぶらりとさせると、一歩ずつ浩子に近づいていく。浩子の真後ろに、ペニスの先が浩子の背中に触れなんばかりに近づいてから、磯山は胸ポケットからそっと万年筆を抜き取ると、指先で捻って回転をかけながら、浩子の足元にぽとりと落としたのだ。捻った回転のせいで、万年筆は浩子の机の下の奥のほうへころがってゆく。
 コロンという音に、浩子は磯山がすぐ後ろに来ていたことに初めて気づき、ぎくりとして振り返る。が、あまりに近くに居た為に、下半身から男性自身を剥き出しにしていることまでは気づかない。
 「あ、すまん。万年筆を落としてしまった。済まんが、拾ってくれないか。」
 浩子は斜めに首を傾げて、さっき音がしたのが、磯山の万年筆で、それが足元の奥に転がっているのを認める。
 「あ、はい。」
 浩子は椅子を少し引いて、屈みこむ。脚を折って、しゃがみこむ。立膝になった浩子の腿の間に、隙間が出来て、デルタゾーンが覗きそうになる。磯山は股間のモノを浩子の肩のすぐ後ろに据えるようにして、浩子の裾の隙間を上から覗き込む。その先端はすでに屹立していた。
 「あ、取れました。はい・・・。」
 万年筆を手にして、振り返った浩子の顔に、もう少しでペニスの先端が当たるところだった。
 「きゃあっ・・・。」
 いきなり目の前に男性自身が突き立てられているのを見て、浩子は思わず悲鳴を挙げた。あまりに驚いたので、後ろに尻餅をついて腰を落としてしまい、股間の下着を丸見えにさせてしまっていた。その姿に、磯山は股間にぶらさげたモノを一層奮い立たせる。
 「いやっ・・・。何なさるの。か、課長・・・。ど、どうしたんです。」
 「ふっふっふっ・・・。男のモノを始めてみるってほど初心でもないだろう。お前だって、これが欲しくて、夜な夜なオナニーしてるんじゃないのか。俺がちょっと慰めてやろうって訳さ。」
 「止めてください。悪い冗談ですよ。セクハラで訴えますよ。」
 いきり立って強がりを見せているようでも、浩子の膝はがくがく震えて、今にも逃げ出さんばかりに机と机の間を後ずさりしていた。
 いきなり後ろに振り向いて、立ち上がって逃げ出そうとする浩子を、磯山は後ろから飛びついて羽交い絞めにしようとする。その磯山の下っ腹に浩子の肘鉄が飛んだ。
 「ううっ・・・。く、くそうっ。何もそこまで真剣にしなくても・・・。」
 下腹を押さえようとする磯山の手の振り切って、浩子は出入り口に向かって走り出す。磯山も腹を抑えながらその後を追う。
 浩子が先に扉に辿り着いた。が、鍵が掛かっていて、ドアは開いてくれなかった。冷静に考えられれば、内錠のロックなので、ドアノブの真ん中の抓みを捻れば、ロックは解除する筈なのだったが、磯山に追われてパニックになっていた浩子はそれにも気づかず、ただドアノブをガチャガチャいわせて何とか開けようと焦っているばかりだった。その浩子に追いついた磯山が肩に手をかけ、思いっきり力を篭めて、浩子の身体を引き剥がすように床に投げ打った。上背では磯山に勝る浩子も、男の腕力には所詮勝てなかった。浩子はもんどりうつようにして、床に転がされる。スカートの裾が大きく割れて、下着は丸見えだった。その上に磯山が覆いかぶさってきた。昔少しだけ柔道の手習いのようなことをやったことがある磯山は、片方の手を浩子の首に廻し、もう片方を大きくはだけた脚の間にいれて、四方固めのような形で浩子の身体を押さえ込む。浩子は手足をばたつかせてもがくが、身体をがっしり押さえ込まれて身動きが出来ない。
 磯山は浩子の身体を押さえ込みながらもその柔らかく生温かい感触を楽しんでいる。抑え付けていた股に通した手の先を徐々にずらして、股間のほうへ移動させる。
 「いやっ・・・。」
 秘部に近づいてくる手の感触に身を震わせた浩子は身体を仰け反らせる。股の向こう側奥深くで押さえ込んでいた手が股のほうに近づいた分だけ身体を抑える力が減ってしまっていた。
 浩子が脚で反動をつけて、振り解くと、磯山の片手から浩子の下半身がすり抜けた。浩子は夢中で磯山の股間めがけて蹴りをいれた。それはしかし、少し逸れて、打撃を太腿に与えたものの、決定打にはならなかった。肩に巻きつけていた手も放して、磯山は蹴られた太腿に手を当てる。
 その隙に浩子は立ち上がり、磯山の手の届かないほうへ這いずり逃げた。しかし、それは出入り口のドアからは離れる方向でしかなかった。その先には壁しかないのだ。
 浩子が逃げ場のない事務所の奥に向って走っていったのを、確認した磯山は痛い脚をさすりながらゆっくり立ち上がった。そして、浩子が逃げ出せないように、出入り口を背にして、じわり、じわりと壁際まで逃げていた浩子のほうににじり寄っていった。浩子に近寄りながら、事務所の中央にある自分の机の上からロープの束を取上げる。壁を背にした浩子は、恐怖に慄いた迫真の表情をしながら、近づいてくる磯山を睨みつけている。磯山は今度こそは逃さないとロープを手繰って広げながら、浩子に近づいていった。
 「や、やめてくださいっ・・・。た、助けて・・・。」
 あまりに迫真に迫る浩子の恐怖の表情に、磯山も興奮を昂ぶらせる。2mほどのところまで近づいて、磯山は飛び掛る構えをしながら、タイミングを見計らっていた。もう二度も危うく逃げられるところだった。油断はならないと磯山は自分に言い聞かせる。
 手にしたロープの束をもう一度広げると、一旦引き寄せ、一気に浩子の顔目がけて投げつけた。いきなり顔面にロープの束をぶつけられそうになって、浩子は思わず、両手で顔を蔽って防ごうとする。それは磯山の思う壺だった。
 (あれだけ蹴られたんだ。演技とはいえ、もう遠慮はいらない。)
 そう思った磯山は力を篭めて、浩子の腹に拳を繰り出し、ボディーブローを当てる。顔を両手で防いでいた浩子の腹は無防備だった。腹にめり込むような磯山の拳の突きに、一瞬目が眩みかける。膝を折ってその場に崩れおちてしまう浩子だった。その浩子の腕を磯山はしっかりと掴んで背中に捩じ上げた。
 「ううっ・・・。」
 悲鳴とも呻きともつかぬ声を挙げて、浩子が身を仰け反らせる。捩じ上げた浩子の手を片手でしっかりと掴むと、もう片方の手で床の縄を取上げ、その端を浩子の手首に巻きつけていく。両手を背中で縛り上げてしまうのに、最早それほど苦労はなかった。下腹に受けた打撃で、浩子は抵抗する力を失っていたのだ。両手をしっかり固結びで縛り付けてしまうと余ったロープを足首にも廻して、逃げられないように逆エビ反りの形で手足を繋いでしまう。そうしておいてから、磯山は浩子の身体を両手で抱き上げた。スカートはもうすっかりずり上がってしまっていた。腿の付け根まで露わにした浩子の身体を抱きかかえて、磯山は自分の机の上まで運んでゆくと、その上に浩子を仰向けに寝かせ、余ったロープの端を机の足に通してから、逆エビ反りに折っている浩子の脚の膝の部分に括りつける。もう一方のロープも反対側の机の足に通してから、もう片方の膝に巻きつけ、股間を広げて閉じれないようにロープを引っ張ってから机の足に結わえつけてしまった。浩子は大股開きで手足を括りつけられたまま机の上に磔にされてしまった。

机磔

 そこまですっかりし終えると、磯山は少し離れて、縛り上げた浩子の露わな格好をしげしげと眺めるのだった。磯山に見詰められて、浩子は恥ずかしさに顔を背けた。ハアハアと肩でやっと息をするのが精一杯だった。
 「声を立てるようなら、その口に俺のパンツをつっこんで猿轡をするからな。黙っておとなしくしてれば、そこまではしない。」
 そう言いながら、磯山はズボンからベルトを抜き取り、ズボンを下ろして脱ぐと、パンツも片手で脱ぎ捨てた。そしていつでも浩子の口の中に突っ込めるように、浩子の顔のすぐ横へ置く。つうんとアンモニアを含んだきつい臭いが浩子の鼻を突く。しかし、頭をそこから避けることも出来ないのだった。
 磯山がぐるっと廻って、浩子の脚の側へ移動した。縛られた浩子には、磯山のほうを見ることが出来ない。剥き出しになった下穿きの中心を覗かれているのが気配でわかる。恥ずかしいが脚を閉じることも出来ないのだった。
 その見えない下穿きの上に、磯山の二本の指が揃えてそっと当てられた。鼠頚部だった。浩子は身をよじらせようとするが、手足の縄が浩子に身動きする自由を与えてはくれない。そっと押し当てられた指はゆっくりとその部分を前後し始めた。下唇とアヌスの間を行ったり来たりする。指の力は篭められたり緩められたりを繰り返えす。
 「ああっ・・・。」
 浩子は涙目になりながら、呻き声を挙げた。
 強姦されながら、下唇に潤みを見せるのだけは、避けたかった。しかし、そんな浩子の願いも虚しかった。布の上からまさぐられているだけで、その下の陰唇はすぐに、ぴちゃぴちゃと卑猥な音を立て始めたからだ。もはや、ショーツにくっきりと浮かび上がる沁みをつくっているのは間違いないと浩子は観念した。
 磯山はショーツの真ん中に染みが出てきて、その下からぴちゃぴちゃという音がし始めると、鼻をくっつけんばかりに浩子の開かれた股に顔を近づけ、指をショーツの端をなぞるように動かし、やがてはショーツの中に指をこじ入れた。
 「ああ・・・、もう止めて。駄目っ。それ以上すると、もうどうなってしまうか判らない・・・。」
 しかし、その声に磯山の指は止まるどころか、動きが一層激しくなっていった。
 磯山は片方の手で下穿きのクロッチになった部分を横に寄せ、剥き出しになった陰唇の下の鼠頚部のところに親指を押し当てて、人差し指と中指は陰唇を飛び越えて、恥骨の下のクリトリスを挟み込むようにして浩子の股間を責め立てた。止め処も無く流れ出てくる白く濁った性液を浩子は止めようもなかった。その潤みは鼠頚部に当てられた磯山の親指を濡らし、そのままアヌスのほうへまでも垂れてきているのが浩子にも感じられていた。
 クリトリスを挟み込む二本の指の動きが速くなってくると、その快い刺激に目が眩みそうになってくる。磯山は態と性器の中には指を差し入れなかった。それは浩子にペニスを欲するようにさせるためだった。
 「どうだ、そろそろ欲しくてたまらなくなってきたろう。ペニスを挿してくださいと言ってみろ。」
 「い、いやです。そんなこと・・・。ああ、ああ、ああ、もう我慢出来ない・・・。ああ、ああ、い・・・、入れてっ・・・。ああ、ペニスを挿してっ・・・。」
 執拗な磯山の指責めに浩子は堪えられなくなった。両手、両脚の自由を奪われたままで、いつまでも我慢をし続けることは所詮出来ない。理性でそう思った訳ではなかった。身体の疼きに堪えられなくなって、本能的に口走ってしまったのだった。
 「うっ・・・。」
 磯山の太い肉棒がはいってくるのが、下半身を見ることの出来ない浩子にも感触だけで判った。磯山は浩子の性器にペニスを挿入すると、机の上に乗りあがってきた。見上げる浩子の目の前に脂ぎった磯山の顔が現れた。こんな醜い男に犯されて、性液を溢れさせている自分が情けなかった。口惜しさに浩子は唇を噛んで堪えた。が、身体の方は勝手に反応してゆくのを止められない。
 磯山がリズムを付けて、ペニスを出し入れするようにピストン運動を始めると、浩子はそれに合わせて膣の締め付ける力を入れてしまうのを止められなかった。更に磯山は上下にも身体を振り始めた。磯山の肉棒がクリトリスの裏側を激しく擦りあげると、その刺激に目が眩みそうになってくるのを抑えられなくなってきた。
 「あ、もう駄目っ・・・。いくっ、いくっ・・。」
 「そう、そろそろこっちも行きそうになってきたぞっ。」
 「・・・。えっ、駄目、駄目よ。中に出しては。駄目、もう危険日なの。やめて・・・。お願いっ。」
 浩子は慌てて叫んだ。
 「中に出されたくなかったら、飲みますって言うんだ。口で呑みますってな。」
 「あ、いやっ。そんなこと・・・。あ、駄目、駄目よ。ああ、呑みます。呑みますから・・。」
 「ようし、そりゃっ。」
 ペニスを思いっきり突いた後、股の割れ目から抜き取るや、磯山は浩子の身体を跨ぐようにして肩の上で両膝を着き、腰を落として浩子の口をペニスで割った。
 「うぐっ・・・。」
 生温かい、濡れぞぼった肉棒が浩子の口の中に膨れ上がった。一瞬息が止まりそうになる。浩子が舌で押し返そうとしたとき、それは爆発した。
 「こぼすなよ。全部、呑み込めよ。垂らしたら舐め取らせるからな。」
 無情な磯山の言葉に、浩子は涙を浮かべながら喉に生温かいものを送っていった。
 (ゴホッ、ゴホッ・・・)
 咽返した浩子の口から磯山のまだ硬く張りをもったペニスが抜き取られると、それは粘っこい糸を引いて、浩子の唇から下顎を濡らした。ペニスが抜かれると、精液の甘酸っぱい栗の花のような匂いが浩子の鼻を吐く。口の中のべっとりした嫌な感触に浩子は顔を顰めさせる。
 漸く、磯山は跨った浩子の顔から身体を離し、机の上に立つと、浩子の膝小僧のところに引っ掛かっていたパンティの汚れていない部分で、自分のまだ濡れているペニスを拭き取る。自分の精液で汚したパンティを穿かせるというアイデアが磯山の嗜虐心をそそるのだった。しっかりとペニスをパンティの裏側でふき取って残ったザーメンを沁み込ませると、太腿に引き上げさせ、濡れたパンティを浩子に穿かせてしまった。浩子は、じめっとした下腹の感触に一層惨めになって、唇を噛むのだった。
 「ああ、いい気持ちだった。また、やらせてくれよな、浩子君。」
 磯山は床に落ちていたズボンを取上げると、履きながら浩子のほうを見もしないで、そう言い放った。浩子は、口惜しさに声も挙げられなかった。
 (こ、こんなことして・・・。絶対に許さないわ・・・。)
 涙ながらにそう誓う浩子だった。が、その憎き磯山に戒めを解いてもらうしか、自由になることが出来ない状況にあることにも気づいていた。このまま磯山に去られてしまったら、朝までこんな辱めを受けた格好のままで、出社してきた者にまで身を晒すことになってしまうのだ。それに朝まで、尿意を堪えることも出来ないだろうとも思った。
 「お願いです。もう解いてくれませんか。」磯山を詰りたいのを堪えて、機嫌を損ねないようにそっと言い出した浩子だった。「ふふふ・・・・。どうしようかな・・・。」意味ありげに薄ら笑いを浮かべる磯山に、浩子は恐怖を感じた。
 「それじゃあ、また、やってくれるかな。」
 浩子は磯山の目をじっと見詰めた。返事によっては、本当にそのまま放置されそうな意地悪そうな目つきを磯山に感じた。
 「わ、わかりました。お好きになさってください。」
 口惜しさに目を瞑ってやっとそう言った浩子だった。
 磯山は、浩子の背中の手首の縄の結び目を少しだけ緩めると、最後に浩子の股間にパンティの上から顔を埋めて、名残惜しそうに匂いを思いっきり嗅ぎ取ってから、無言で立ち去ったのだった。
 磯山は浅川から、今晩だけは防犯ビデオは止めさせてあると伝えられていた。浅川を信じきっていた磯山は、まさか今度こそ本当にビデオに撮られたなどとは思いもしないのだった。次も、浩子に強姦芝居を演じさせ、性交や口腔射精をする約束をさせたことだけにうきうきしていたのだった。

 その夜、一晩泣き腫らした浩子は、悲しみが次第に怒りに変わってゆくのを感じ取っていた。浅川には自分の恥かしい秘密を握られてしまって、その為に辱めを受けることになってしまった。しかし、磯山からは、何の前触れもなく、突然襲われて犯されたのだ。浩子は突然受けた磯山の陵辱は納得が行かないものだった。それだけに憎しみが沸き起こった。浩子は磯山を訴えてもいいと思った。が、怒りの中に漠然とそう思っただけで、具体的に何をどうしていいのかは思いつかなかった。
 そして夜が明け、朝になった。前の晩には犯されたショックで会社には出れそうもないと思っていたが、結局、浩子には他に行く場所がなかった。特に浅川からの命令は無かったので、あまり極端にスカート丈の短くない、ビジネススーツに身を包んで、いつもの時間に家を出た。

 上司の磯山のことを思い浮かべるだけで、顔が強張ってしまう。取りあえず毅然とした態度を示すことにしようと浩子は心に決めていた。浩子が事務所に入っていくと、何故か、その日に限って、磯山も浅川ももう会社に着いていて、それぞれの窓際の席に居た。浩子はわざと視線を合わせないようにして自分の席に着いた。斜め後ろから刺すような視線を感じて、居たたまれなくなって、珈琲でも淹れようと、給湯室に向けて席を立った。
 自分のカップに湯をいれて、カップを温め、インスタント珈琲の缶を開けようとしている時だった。背後に近づいてくる気配を感じた。一瞬、浩子の手が止まった。始めはそっと、触れたか触れない程度にそっとビジネススーツのタイトスカートの尻に手の感触を感じた。が、数瞬後、その掌が返されて、尻の膨らみを包み込むかのように手の平が下から撫で上げてきた。
 次の瞬間、浩子は置いてあった自分のカップを取り上げて、急激な動きで振り向いていた。

 「あっちっちっち・・・。な、何するんだよぉっ・・・。」
 手の平にカップからこぼれ出た熱湯をもろに浴びた磯山が、飛び上がらんばかりに驚いて、後ずさった。
 「あら、失礼。」
 浩子は、故意であったか、うっかりであったか判らないような言い方で、手の甲をさすっている磯山のほうを睨みつけるように見下すと、そのまま磯山の横を通り抜けようとする。その浩子を逃がさんとばかりに二の腕を捉えた磯山だった。
 「なあ、何、つんつんしてるんだよ。」
 「変なことをすると、出るところに出て、訴えますよ。」
 掴みかかってきた磯山の手を、邪険に振り払うと、斜めに振り向いて睨みながら浩子はきっぱりと言った。磯山は口をあんぐりとさせて押し黙ってしまった。その磯山を給湯室に残したまま、浩子は自分の席に戻った。
 それからその日は一日、重い空気が流れるような雰囲気のまま、時間が過ぎていった。何度か、磯山が用を言いつけようと、「ちょっと、桂木君。」と声を掛けてきたが、その度に浩子が無視して、身動きひとつしないでいると、「あ、まっ、いいか。・・・。」と気まずそうに独り言を言って、用を引っ込める磯山だった。横の部長代理の席の浅川も、見てみない振りをして押し黙っていた。

 「おい、何とかしてくれよ。あの、桂木の態度・・・。いくら何でも冷たすぎるじゃないか。」
 定時の終わりを告げるチャイムが鳴ると、早々に浅川を部屋の隅に呼び寄せて、磯山は耳打ちするのだった。
 「な、ちょっと相談しようよ。奢るからさ。いつもの飲み屋で・・・。」
 しかし、浅川は不機嫌そうにその誘いには乗ってこなかった。
 「課長、いつもいつもって訳にはいきませんよ。私にだって、色々用もあるんですから。」
 浅川の素気無い返事に、磯山も言葉が詰まった。
 「今日は済みませんが、このまま帰らせていただきます。また、今度。」

 終始、表情を変えないようにして去ってゆく浅川を見送りながら、とっくに退社してしまった桂木浩子のからっぽの席をつまらなそうに眺める磯山だった。
 その夜、独りで遅くまでいつもの居酒屋で管を巻いて、やっと自分のマンションに帰ってきた磯山だったが、酔いは完全には廻り切っていなかった。折角、桂木浩子の身体を思いのまま弄べると思っていた期待を裏切られただけに、磯山はその欲情の持って行き場を失っていた。浩子の淫らな格好を想像してオナニーに耽ろうとしてみたが、あの激しい陵辱を経験した後では、想像力に乏しい磯山には、ただの自慰だけでは何とも物足りず、なかなか勃起もしてこなかった。
 (せめて、あの女の汚したパンティだけでも戦利品として奪っておくんだった。)
 あの日、何も取らずに、現場を逃げるように去ってしまったのを、今では磯山は惜しいものを逃したとばかりに悔やんでいた。

 一方、定時後にさしたる用もないのに、磯山の誘いを振り切って、帰ってきてしまった浅川は、冷静に今後の方策を練っていた。磯山が浩子を強姦した次の一日、浅川は冷静に磯山と浩子の様子を見守っていた。浩子をぎらぎらした目つきで嘗め回すように見つめる磯山の様子は、明らかに何かに火が点いてしまったかのようだった。女日照りが続いている磯山とは思っていたものの、まさかそんなに性急に性欲を燃えたぎらせることになってしまうとは浅川も思っていなかった。浅川にとって、浩子は言い成りになる奴隷だ。だからといって、磯山のように、陵辱したいという性欲が沸く訳ではない。一旦、自分の配下に征服してしまうと、欲望はそれ以上は湧いてこなかった。一方、会社内でも何とか磯山の課長代理という権限も手に入れてしまった。更に上に行きたいという思いは無いではないが、自分の実力もわきまえている。あまり高みを望み過ぎるのは危険があると思っていた。むしろ、今、ここで磯山に変な動きをされることは、折角手に入れた権限を失うことになりかねないと危惧し始めていたのだった。
 (浩子に命令して、磯山に身体を任せるように仕向けることは一度は出来なくはないだろう。しかし、それがエスカレートすると、いつかは取り返しがつかない事態になりかねない。その前に何とかしなくては・・・。)浅川は仕事は出来ないくせに悪知恵は働くほうだった。次の策をすでに構想し始めていた。

 磯山のセクハラまがいの行為を振り切り、浅川からの命令も音沙汰がなくなって、やっと安穏な日々がやってきたかに見えた浩子の元へ、脅迫の手紙が届いたのは、磯山の強姦事件からすぐのことだった。定時後に一目散に自分のアパートへ逃げ帰った浩子は、アパートに届いた一通の白い角封筒が届いているのを発見したのだ。何となく嫌な予感に駆られて、アパートに駆け込み、玄関にしっかり鍵を掛けてから、奥の部屋で小さな電気スタンドだけをつけておそるおそる封を切った浩子だった。中から出てきたのは、二枚の写真と、一枚の便箋だった。ひと目見た浩子に戦慄が走る。浩子ははっきりそれを見る前にそれが何であるかを一瞬にして悟った。
 全体的に暗い景色の中に、真ん中の部分だけ明かりに照らされた部分がある。随分遠くから望遠で撮られた写真だったが、被写体ははっきり写っていた。机に仰向けになって両手を背中に縛られ脚を開かされて抱えられている女、その女の裸の開かれた下半身に、同じく下半身だけ裸になって、机の上に乗り上がって股間のモノを女の股に突き当てている男。犯されている女の口惜しそうな表情も、犯している男の血走った欲情の顔もカメラはしっかり捉えていた。何者かが、浩子たちの居るビルの向かい側の何処からか、撮影したものに間違いなかった。もう一枚は嫌がる表情の女の髪を掴んで、醜い陰茎を顔面に突き出し、今将に射精して果てようとする一瞬を、更なる望遠でアップに捉えたものだった。浩子は呆然として立ちすくんでしまった。
 震える手で一枚添えられた便箋を開くと、蚯蚓ののたくったような字がかろうじて読み取れた。
 「こういう写真をばら撒かれたくなかったら、300万円用意しろ。」
 浩子は一瞬、頭の中が真っ白になってしまった。
 (写真・・・、ばら撒く・・・、300万円・・・。)
 浩子には、俄かにはこれが現実のこととは思えなかった。しかし、封筒の写真の犯されている女はまぎれもなく自分なのだった。浩子は職場のそこここで、ばら撒かれた写真を見ながら、こっそりと遠目に浩子のことを盗み見ながら、嘲笑っている男子社員や、若い女子社員たちを想像して頭を蔽いたくなった。が、次の一瞬、あることに思い至ったのだった。
 (これって、もしかして、浅川の仕業では・・・。)
 もう一度、脅迫文の書いてある便箋の字を読み返す。書かれた文字はわざと崩された字体で、特徴があるといえば特徴があるが、書き手の本体の特徴を消しているとも言えた。浅川の処理した帳票は何度もチェックしたことがあるので、その字体はよく憶えていた。それに似ているとも似てないとも思えた。
 (あの日、残業で居残るのを命じたのは、浅川なのだから、当然、あの場に居たのは浅川は知っている筈だ。磯山は傍でそれを聞いていたので、独りで居る浩子のもとに忍び込んできたのだろう。他には、知っている者は居ない筈・・・。)
 そこまで考えて、その前に、浅川に命じられてブラインドを開けて、ビルの外に向かって嬌態を演じさせられていたことを思い出した。
 (まさか・・・)
 確かに、夜のビル街で、灯りを煌々とつけたままブラインドを開け放って、外に向かって痴態を演じさせられていたのだ。誰かがそれを偶然に覗いていたということも考えられなくはない。しかも、磯山に襲われた夜は、ブラインドを開け放った二度目の時だった。
 (写真を撮ったのが浅川だとして、こんな面倒なことをするかしら・・・。浅川には、もう既に恥かしい写真を何枚も握られている筈だ。そもそものはじまりが、樫山との秘密のプレイの最中に割り込まれてしまった時の筈だ。今になって、どうして・・・。)
 浩子は写真を送ってきたのが、浅川ではない第三者だった場合に、更に脅し手が増えることになることに気づいて、愕然としてしまうのだった。

 次の日、朝一番で、浩子は意を決して、昼休みに二階の例の倉庫へ浅川に来てくれるようにメールで頼み込んだ。メールでは大事な相談があるとだけ触れておいた。定時後にしなかったのは、ついでに何かを仕掛けられないかを心配したのだ。昼休みなら、時間に限りがあるので、変なことは求めてこないだろうと踏んだのだ。もっとも、浅川にその意志があれば、浩子に命令してくるだろうし、浩子はその命令に従わざるを得ないのは変わりないのだが。

 メールを入れてから、浩子は午前中何度も、浅川の顔色を窺がったのだが、浅川は素知らぬ振りで終始通していた。昼休みになる直前、浩子は例の封筒をいれたポーチを手にとり、何食わぬ顔で事務所出口のほうへゆっくりと移動し、昼休みを告げるチャイムが鳴るや、出口をすり抜け、エレベータホールを通り過ぎて、非常階段のドアをすり抜けた。浩子の姿を認めた者は誰も居ないと思われた。浩子は音を立てずに階段を2階まで小走りに下りて、ひと気の無い廊下を抜け、電車の線路に向けて窓のついた、倉庫部屋に音を立てないようにして滑り込んだ。浅川より先に来て、待ち受けるつもりでいた。浩子のほうから頼みごとをして、この場所へ浅川を呼び出すのは、貞操帯を一晩嵌めさせられて、懇願して外して貰った時以来だった。あの時、浅川の見ている前で、洗面器の中に放尿させられた屈辱の思いが蘇ってきた。浅川に対する恨みはあったが、しかし何時の間にか浩子は浅川に飼い馴らされてしまったようだった。浅川の無慈悲な命令に盲目的に従うことに、既に違和感を憶えなくなってきているのは事実だった。
 浩子が繋ぎ留められたテーブルをふと見て、その上に何かが乗っているのに気づいた。近寄ってみると、一枚の紙の上に見覚えのある目隠し用のアイマスクが載っていた。字は見覚えのある浅川のものだった。
 (これを着けて待ってろ)
 紙きれにはそれだけ書かれていた。自分が先に来たつもりだったが、先回りして一旦浅川がこの小部屋に来ていたことが判った。浩子は机の上にポーチの位置を確認して、アイマスクを着けた。目を蔽ってしまうと、途端に自分が非力になってしまうのを感じた。浅川はそういう演出には長けていると浩子はいつも思うのだった。
 その時、ガチャリとドアが開く音が背後で聞こえた。さっと振り向く浩子だったが、勿論アイマスクで相手は見えない。
 「浅川・・・さん・・・ね。」
 浩子は敬語を使うべきか、迷った。自分から卑屈になることはないと言い聞かせていたが、部長代理になってからの浅川は、何かにつけて浩子に高圧的な言い方をするので、受け答えがつい敬語になってしまうのだった。
 沈黙が流れた。相手は浅川でしかあり得ないと思うのだが、これから話そうとすることは、部外者には絶対に喋れない話なのだ。間違いなく相手が浅川だと確認しておきたかった。しかし、浅川にこの時間にメールで呼び出していること、浅川の字で書かれたメモがあること、そして何より、自分に目隠しをして待たせるなどということをする人間は浅川には考えられないことから、浅川と信じるしかないと思った。
 浩子はどういう表情で立っているのか判らない浅川のほうを目隠しのまま向きながら、後ろ手に自分のポーチを探った。
 「浅川さんに見て貰いたいものがあります。」
 そう言いながら、浩子はポーチを手探りで開けて、封筒を探り当てると、見えない目の前の相手に向かって差し出した。
 「これは浅川さんが出したものですか。」
 震える手で封筒の写真と脅迫状の便箋を差し出した。見えない相手は浩子の手から封筒を引ったくるように受け取った。封筒から写真が引き出されるのが、音で浩子にはわかった。続いて便箋を開いている音がした。
 「これは、浅川さんが出したものですか。」
 浩子は再び同じことを訊いた。
 「知らないなあ。」
 はじめて目の前の男は答えた。間違いなく、聞き慣れた浅川の声だった。ちょっとだけ、浩子は安心する。
 「やはり、違うのですね・・・。」
 自分で答えて、今度は別の心配がむらむらと湧き起こってくるのを感じていた。それは新たな脅迫者の出現を意味していたからだ。
 「私、どうしたら、いいのでしょう。300万円なんてお金、私には払えません。貯金だってそんなにある訳ないし・・・。」
 浩子は途方に呉れて、本来目下である浅川に助けを請うように相談する形になってしまった。浩子にとってみれば、こんなことになってしまった一端の責任は浅川にもあるのだからという気持ちがあった。
 「こんなもの、払う必要はない。馬鹿じゃないのか。」
 浅川の返事は浩子には意外なものだった。どんな表情をしてそんなことを言ったのか、浩子には見えない。が、それは浅川が浩子に表情から何かを悟られまいとしている苦肉の策だったということには気がつかなかった。
 「脅迫者なんて奴は、一旦金を払ったら、弱みに付け込んで、際限なく金を要求してくるものだ。そんなものに一銭の価値もない。」
 「そ、そんな・・・。だって、言うことを聞かないと、こんな写真をばら撒くって言っているんですよ。」
 「だからお前は馬鹿だって言っているんだ。こんな写真をばら撒かれて、誰が困るっていうんだ。お前が犯されているシーンなんか、飲み屋の下ネタ噺にしたって、一回持ちゃいいほうだ。何を永遠の処女が穢されたみたいなことを言ってんだ。こんな写真はそこらに幾らでも売っているエロ雑誌ほどの価値もないじゃないか。だいたい誰に見られたら困るっていうんだ。結婚を間近に控えた最愛の恋人が居るとでも言うつもりか。犯されたお前の写真が見られたからって、お前の価値が減るなんて考えてるんじゃないだろうな。そんな価値は最初っから微塵もありゃしないっていうんだよ。こんな写真見たって、オナニーひとつ出来ねえよ。」
 一方的に浅川に捲し立てられ、浩子は打ちのめされてしまった。しかし、次第に冷静になって、浅川の言う通りかもしれないと思い出していた。会社には知り合いは居るが、親身になってくれる友人というと、はっきり居ると言う自信もない。ましてや、恋人はおろか、男友達と呼べる存在だって浩子には無かった。独りで上京してきている浩子には、こんな写真をこちらでばら撒かれたといっても、身内は親も親戚も誰も居やしないのだ。
 強姦されたところを公開されても減る価値のない人間・・・。その言葉は悲しい響きがあったが、(そんなことは無い)と大声を張り上げて反論するだけの自信はなかった。口惜しいよりも惨めだった。
 「こんなもん、出されて、困るのはお前じゃなくて、こんな写真を盗み撮りしている犯人自身か、せいぜいここに写っている強姦者じゃないのか。」
 浩子は、浅川の言葉にはっとした。そうなのだ。この写真には磯山も写っているのだった。自分の恥かしさのことばかり考えていて、他には目が行っていなかったのだ。こんな写真が公表されたからと言って、せいぜい擦れ違う後輩や同僚に侮蔑の眼差しを浴びせられる程度なのだ。が、一緒に写っている磯山には少なくとも浩子にはない社会的地位があるのだ。浩子は被害者だが、磯山は間違いなく犯罪の加害者なのだ。
 「じゃ、無視してていいの。この手紙のこと・・・。」
 「ああ、今のところはな。・・・。だが、いいか。今度また何か送ってきたら、必ず俺のところに相談に来るんだぞ。」
 「わ、わかりました。ありがとう、ございます。」
 「じゃ、昼飯食べる時間がなくなっちまうから、もう行くぜ。」
 そう浅川らしき男は言うと、バタンと倉庫室のドアの音を立てて出て行ってしまったようだった。後に残された浩子はゆっくりと目隠しのアイマスクを外した。急に明るくなった視界に、目が眩むようだった。浅川に相談したことで、大きな安心を得た気がした。あの嫌いだった浅川が頼もしくも思えてくるのだった。

 外のファーストフード店で立ち食いのハンバーガーで食事を採った浩子が、職場に戻ってみると、磯山は席で新聞を読んでいたが、浅川の姿は見えなかった。課員全員の行き先が乗っているホワイトボードの浅川の欄には、「外出 営業 不帰社」となっていた。浩子はパチンコ屋だなと見当をつける。浅川が課長代理になってから、社内領収書の伝票処理をしたことがあった。領収書の取れない小物の社用出費は、社内規定の用紙で領収書の代わりをすることになっている。課長、課長代理の二人分の秘書業務をやらされることになった浩子は、経理に提出する伝票なども、課長二人分のものは、自分が庶務的処理をやらされるようになった。その時、浅川から「経理に回しておいてくれ。」と頼まれた社内領収書に添付されていたレシートにはA.G.センタとあって、額面は1万円だった。A.G.センタは、浩子が乗り降りする電車の駅と会社のあるビルの丁度中間あたりから、裏手に逸れたところにある、アミューズメント&ゲームセンタというパチンコ屋であることに気づいていた。社内領収書には、浅川が浩子命じて作らせた磯山の三文判が押されている。課長代理になった時に、代理として押す場合に使うからと説明されたのだったが、浅川のものではなくて、磯山の銘であるのが、浩子には不審に思われたが、命令されて反論出来る立場ではなかった。以来、時々席から居なくなっては、その後に限って、A.G.センタのレシートと社内領収書を持ってくるので、ほぼ間違い無いと見当を付けたのだった。
 浅川が課長代理になってから、浅川はだんだんやりたい放題のことをするようになっていた。それを何故か本来の課長である磯山は咎めようともしない。浅川が突然、磯山から課長代理に任命されたというのは青天の霹靂ではあったが、その裏には浅川と磯山の密約があり、しかもしれが浩子自身が関係があるなどとは思いも寄らないのだった。

 昼休みの終わるチャイムが事務所内に鳴り響くと、磯山は浩子を呼びつけた。
 「おうい、桂木君。ちょっと。」
 あの日以来、極力磯山のことを無視するようにしていた浩子だったが、直属の上司と部下という関係上、職場の中では無視するにも限度があった。浩子の側にも、周りから変だと思われて、色々詮索されるのも困ることだったのだ。
 「ちょっとここへ座って、パソコンの操作の仕方を教えてくれよ。随分前に使ったきりなんで、もう忘れちゃったんだよ。」
 浩子は、自分の居るグループが供給しているパソコンシステムのインストラクタをやっている関係上、こういう頼みは断われない。嫌々ながら磯山の傍へ行くと、磯山は既に自分の席の横にしっかり回転椅子を用意している。そこに座って横から教えろというのだ。磯山の横に廻り込んで、横に腰掛ける。回転椅子が随分低くセットしてあるらしく、座り難いので、高さを調節しようと椅子の下にあるレバーに手を伸ばしたのだが、何故かレバーが見つからない。それがまさか、磯山が予め、昼休みに低くセットしておいて、調整レバーを取り外しておいたせいなどとは浩子も思いもしない。脚の長い浩子が一番低くセットされた椅子に腰掛ければ、膝の位置が高くなり、自然とタイトなミニからデルタゾーンが覗きやすくなることを計算に入れてのことだった。そんな意図には気づかない浩子は片手を膝の上に乗せて防ぎながら、片方の手を調整レバーを捜していたが、磯山が画面の方に話を持っていったので、直ぐ済むと思って、椅子の高さの調整は諦める。
 「ここなんだけど、ここからどう入れればいいんだっけ。」
 「これですか。会社のID登録番号を入力するんです。」
 「登録番号って何だい、そりゃ。そんなの一々憶えちゃいないよ。そんなの打たなくても済む設定に出来ないのか。」
 「それは、出来なくはありませんけど。まあ、このパソコンは事務所の席に固定なので、それほどセキュリティを高くする必要はありませんから。」
 「そんなら、そういう設定に変えてくれよ。」
 そう言って磯山は自分の机の上のキーボードを心持ち、横の浩子の方へ寄せる。仕方ないとばかりに浩子が磯山の前のキーボードのほうへ両手を伸ばしたので、ミニスカートの裾のガードがおろそかになってしまうことに気づかなかった。
 「えーっと、課長の職員番号の上5桁は何でしたっけ。」
 「あーっと、51515だったかな。え、違う。あ、そうそうそれは下5桁のほうか。22325だったと思うが・・・。」
 何度やっても、エラーが出てしまう職員番号入力に、苛々して、磯山のほうを振り向いた浩子は、磯山の視線が、自分の腿のほうに注がれていたことに気づいて、ドキッとした。
 慌ててキーボードの手を外して、ずり上がってしまっていたミニのタイトスカートの裾を隠す。
 「な、・・・・。」
 (何を覗いているの)と言おうと大声を挙げそうになって、周りの視線に気づき、言葉を呑み込んだ。わざと間違った番号を教えて、パンティを覗かせてしまっている浩子の恥ずかしい格好を、目の前の冴えない小男が、愚弄するかのように覗き込んでいたことにやっと気づいて、浩子は逆上した。が、そこは浩子の職場だった。迂闊にはしたない姿を曝け出していたのは、自分の過ちだった。怒鳴りつけたくても、どうみても落ち度は自分のほうにあった。下着を覗かれた口惜しさに憤りを感じながらも、攻め入る余地のないことに、無念さだけを感じ取っていた。
 「真面目にやる気がないのなら、もう教えるのは止めます。」
 きっぱりそう言い切って、浩子は椅子から立ち上がろうとした。その浩子をすかさず露わになった太腿の上に力を籠めた手を置いて、磯山が制した。
 「まあ、まあ、そういきり立たないで・・・。年寄りはパソコンが苦手なんだから。」
 磯山は浩子の動きを封じながら、周りにも聞こえるように釈明する。浩子は周囲に居る者たちを憚って、それ以上、声を荒げることが出来なくなってしまった。浩子の剥き出しの腿に当てられた磯山の手に更に力が入って、浩子の腿を揉みしだこうとする。その手の甲に向って、浩子は机の上にあったシャープペンシルを取上げて、思わずその先を突きたてた。
 「ぎゃおうっっっ・・・。」
 今度は磯山が辺り憚らない大声を挙げてしまった。その隙に浩子は磯山の手を逃れて、回転スツールから立ち上がっていた。
 「課長、大丈夫ですか。」
 浩子はあたかも、磯山が何かの粗相をして、自分を傷つけたかのような印象を与えながら、磯山の傍から一歩離れた。
 (く、くそう・・・。)
 手の甲の痛みに耐えながら、何事も無かったような顔を必至で装う磯山だった。
 「それじゃあ、私はクライアントとの約束がありますので。これで一旦失礼します。」
 そう言い残すと、磯山を置いて、事務所の出口のほうへ、さも用ありげにさっさと歩き出した浩子だった。

眼鏡あり

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