妄想小説
淫乱インストラクタ ~ 嗚呼、勘違いの一人相撲
第十一章 丁字帯
翌朝、浩子は眠い目をこすりながら、目覚まし時計の音で何とか起き上がった。ぼさぼさの髪を梳かしつけながら、出掛ける準備をする。昨夜は、浅川に買わされたスカート類を繕うのに、深夜まで掛かってしまっていた。しかし、それを仕上げないことには着てゆく服もないのだ。
言いつけ通りに、渡されたものを身に着けていかなかったら、またどんな酷い目にあわされるか判らないのだ。浩子が安心して座れるような丈のスカートは殆どなかった。唯一膝近くまであるタイトスーツのスカートは無残にも前の部分でスリットを切り裂かれてしまっていて、綻びが出ないように、マチ縫いをすると、もう股下ぎりぎりまで切れ目が入ることになってしまった。
しかし、その部分さえうまく隠せば、一番覗かれ難いスカートとも言えた。浩子はそれを着てゆくことにした。前の部分さえ鞄などで蔽えば、昨晩のように痴漢の攻撃からも防御しやすいと思ったのだ。昨晩は股間と胸周りに穴をあけられた水着を下着代わりにつけさせられて、それだけで気が動転して、「牝豚奴隷マゾ女」という銘がはいったプレート付きの革の首輪を嵌めたまま電車に乗っていることすら気づかないでいた。もっとも、顔を近づけるほど近くに寄って、じっと見なければ文字まではそう簡単には読み取れない。何か字があると思ってもブランド名ぐらいにしか見えなさそうだった。それでも、浩子は襟の大きなブラウスに合わせて、昨日とは別のスカーフをまとって首輪をカバーすることにした。
問題は下着、それもショーツだった。生理ではなく、股間の汚れを吸わせる為にナプキンを装着していたことを浅川に知られてしまっていた。浅川がそれを見て、どこまで悟ったかは判らない。しかし、それを自分の鼻先で嗅がせて、臭いが染み付いているのを確認させたのは、大体のことが判ったからに違いなかった。
浩子は迷った。今日も、ナプキンを当ててゆくべきか、普通にショーツだけにすべきか。汚れたナプキンを見られるのはとてつもなく恥かしいが、かといって、ショーツの内側をべっとり汚しているのを見つかるのはもっと恥かしい気がした。浩子は、とりあえず、ショーツの替えを2枚ほどバッグに入れて、会社まではナプキンを当てていくことにした。
替えのショーツを入れる時に、中にしまっていたバイブのことを思い出した。これももうひとつの問題だった。浅川には必ず毎日バッグへ入れて持ってくるよう、命じられていた。そんなものが何時転げださないか不安でならない。そんな物を持ち歩いているのを若し見つかれば、変態のそしりを受けても言い訳が出来ないと思った。浩子はバイブをしまうのに、化粧品に使っていたことのある、布製の袋を使うことにした。口に紐がついていて、締めることが出来る。肉感的な感触のバイブを握ると、布袋にそっと押し込み、口の紐を固く縛って中身が露出しないようにしてバッグの奥底に詰めた。ピンクロータと呼ばれたもうひとつのバイブは、化粧台の抽斗の奥にしまいこんだ。一つ持っていれば、浅川には言い分けが立つと思ったのだ。
浩子は昨夜、スカートの裾をあげながら、それを使ってみる誘惑にかられなかった訳ではない。しかし、その感触の愉悦に酔いしれて、バイブの虜になってしまうことも懼れて手を出すことが出来なかったのだ。樫山に出逢って以来、オナニーを我慢出来なくなる夜が何度かあった。それを更に助長してしまいそうな気がしたのだった。
何とか無事、痴漢にも遭わずに会社の最寄駅まで辿り着いて、浩子はパンティの下のナプキンを外して置こうと駅のトイレへ向かった。その時、通り過ぎていたコンコースの傍らにあった駅備え付けのコインロッカーが目に入る。
(そうだ。駅までは違う服で来て、駅で着替えてコインロッカーに服をしまえばいいんだわ。)
浩子はそのことに何故もっと早く気づかなかったのかと思う。とりあえず、駅のトイレの個室に入り、スカートをたくし上げ、ショーツを膝まで降ろす。内側に貼り付いていたナプキンはまだそれほど汚れてはいなかった。が、気のせいなのか微かに臭うような気がしてならない。
ナプキンを外した後、クロッチの内側にバッグに忍ばせておいたコロンをさっと振りかける。外したナプキンは細かく畳んでスーパーのビニル袋にいれ、厳重に口を縛ってから、バッグの奥にしまう。その時バッグの奥には、化粧品袋に入れたバイブがずっしりと鎮座していることを改めて確認させられる。
身繕いを直すと、浩子はトイレを出て、会社のほうへ向かう。既に出社するサラリーマンやOL達で街は溢れ始めていた。
浅川は既に自分の席に着いていた。東京の下町のほうにあるアパートからやってくる浅川は通勤時間が浩子より大分短いせいか、早く着いていることが多いようだった。
浩子が事務所内を突っ切って自分の席へ向かうと、目の前を通る時に、ちらっとスリットが大きく開いたスカートを盗み見られたような気がした。
「桂木君、ちょっと。」
席へ着くなり、浅川に呼ばれた。最近では、すっかり自分のほうが目上かのように、浩子のことを君づけで呼ぶことが多くなっていた。それに文句をいえないのが口惜しかった。
おそるおそる浩子が浅川の席のある一番壁際のほうへ回ってみると、浅川は自分の席の横に既に置いてある予備の回転椅子に腰掛けるよう、顎で合図する。
浅川はパソコンの画面を見ながらマウスを操作しているので、周りにはプレゼ関係の資料を画面を見ながら相談しているようにしか見えない。
浩子は、スリットの切れている膝の上に両手を置いて、回転椅子に腰掛ける。浅川のほうを向かない訳にはいかないので、膝頭は浅川のほうに当然向けられることになる。
「システムが突然ハングアップした時の、修復方法ってどうするんだっけ。」
突然、素人のようなことを浅川は訊いてきた。
「コントロール、オルタ、デリートキーを同時に押すのよ。普通のパソコンのハードリセットと同じ。」
「そう思うだろ。やってご覧よ。」
(・・・。)
すぐには浩子には意味が判らなかった。が、やがて、浅川の企みに気づく。膝の手をどかさせようというのだ。三つのキーを同時に押す為には、両手を使わねばならない。浅川の横の席から両手を伸ばしてキーボードを押そうとすれば、深く入ったスリットの奥に腿の付け根が丸見えになってしまう。浩子は両足をぴったり合わせてから両手を伸ばしたが、スリットは超ミニと同じくらいまで深くはいっているので、デルタゾーンが覗いてしまっていた。
「そのまま押し続けていてご覧。ほら、変だろ。」
周囲の人間には、システムがうまく動作するかどうか、二人でチェックしているようにしか見えない。しかし、浅川は浩子にパンチラをさせて溜飲を下げているのだ。
「ちょっとそのまま押し続けていてくれないか。僕がマウスを操作してみるから。」
そう言って浩子の手をキーボードから離さないようにさせておいて、浅川は片手でマウスを動かしながら、もう片方の空いた手で、定規を握って、浩子のスカートのスリットの奥にこじ入れてきた。
(うっ・・・。)
浩子は声にならないようにするのがやっとだった。さんざん、浩子の股間をこじりまくってから漸く浅川は定規をスカートから引き抜いた。浩子もキーボードの手を引っ込めて露わだった股間を手で隠す。
「今度、システムエンジニアの連中に言っておかなくちゃな。これは大事な機能だから、明日ももう一度チェックしよう。いいね。」
「あ、はい。」
突然言われて、周囲の人達に不審がられないようにする為に、咄嗟に相槌を打つ浩子だった。(それじゃ。)と立ち上がろうとする浩子を浅川が手で制する。パソコンのモニタ画面に目配せしてから、無言でキーボードを叩く。カタカタッという音がして、浅川のパソコンの画面に文字列が並ぶ。
(机の左端に置いてあるコップを持て。)
浩子が目をやると、確かに机の奥の左隅に水の入ったグラスが置いてある。水はかなりたっぷり入っていて、浩子はこぼさないようにおそるおそるそのグラスを手に取った。
再び浅川のキーボードがカタカタと音を立てる。
(その水を口に含むんだ。)
浩子は何か嫌な予感がして、躊躇う。しかし、浅川の目は拒むことを許さないという鋭い目で睨んでいた。仕方なく浩子はグラスの端を唇に近づける。一口、水が浩子の口に含まれたのを確認すると、浅川はパソコンの画面下の最小化された画像ファイルをマウスでクリックする。
さっと画像ファイルが画面一杯に広がる。浩子は命じられたグラスを口にしたまま、その画面のほうをちらっと見る。
最初は何の画像なのか、よく判らなかった。が、浩子が手にしているのと同じようなグラスが映っているのだけは何となく判る。そのグラスにも水が満杯近く湛えられていて、その中に何か赤黒いようなものが突っ込まれているように見える。次の一瞬、浩子は凍りついた。それは、男のペニスに間違いないことに気づいたからだ。
突然、浩子はグラスの水を吐き出してしまった。
「うわっ、どうしたんだよ・・・。」
浅川が水しぶきを浴びて叫ぶ。
「ご、ご免なさい。む、むせて、しまったんです。今、雑巾を持ってきます。」
そう言うと、浩子はさっと立ち上がって、後ろを振り向かず、一目散に女子トイレに向かったのだった。
周りの他の人間には、浩子がグラスに汲んできた水を飲もうとして、突然むせてしまったぐらいにしか見えなかった筈だった。が、浩子には悪夢のような画像が頭に焼き付いて消えなかった。
フェラチオさせられようとした時に見た、あのグロテスクな浅川の勃起していない陰茎を思い出していた。間違いないと思った。浅川は自分の陰茎を浸したグラスの水を浩子に飲ませようとしたのだ。
吐き気がしたが、吐くまでには至らなかった。洗面台で何度も口を濯いだ。が、それでも浩子の口の中に何かが染み付いたような気がして、嘔吐感は止まらなかった。
一度は両手の自由を奪われ、無理やり口に咥えさせられて、口腔内射精までされた浩子だったが、それでも浅川のペニスに対する嫌悪感は変わらなかった。その時は、両手は後ろ手に縛られ、片足は机の下の桟に手錠で繋がれた状態で、顔をそむけることすら出来なかったのだ。
ペニスを浸した水を呑まされるなど、想像するだけでも悪寒が走る浩子だった。浅川には服従する他ないことは頭では分かっていた。が、それでもあのおぞましいペニスを受け入れることは浩子には到底我慢ならなかったのだ。
その日は、その後、浅川が浩子のほうには何も言ってこないことが、却って浩子を不安にさせていた。水の入ったグラスは浩子が席に戻ってくると、今度は浩子の机の上に置かれていた。浩子がトイレに雑巾を取りに行った振りをしていた間に、浅川が移動したのには間違いなかった。
浩子は浅川に気づかれないようにそっと、指で机の隅にそれを押しやった。観ているだけで嘔吐感に襲われそうだったからだ。昼休みに浅川が食事に事務所を出ていった時に、そっとそのグラスを給湯室に返しにゆき、シンクの中に中身を流した。洗っておくべきだと思ったが、手を触れるのも不潔に思われて出来なかった。そのまま誰かお茶当番の女性が洗ってくれるように、使用済の茶器の置いてある脇にコップを置くと、運んできた自分の手のほうを石鹸でしっかり洗う。
夕方が近くなり、今日はこのまま帰してくれるのかと淡い期待を抱き始めた頃、新着メールを告げるチャイムが浩子のパソコンで軽く鳴った。思わずどきりとする。動揺していない振りを装いながら、そっとパソコンのマウスを動かして、そのメールを開く。
(定時になったら、人が少なくなるまで少し待って、帰り支度をしてそのまま2階の倉庫へ行って待っていろ。)
簡単な文面だった。手首の時計をちらっと見ると、定時の5時まであと5分ほどだった。斜め前の浅川の席をちらっとだけ盗み見る。浅川は何食わぬ顔で下を向いて何やら書類を作っている風だった。
定時のチャイムが鳴る。事務所中一斉に、ばたばたと帰り支度を始める音がする。「おや、桂木君。今日も残業かい?」浩子の背後を、上司の課長、磯山が通りすぎながら声を掛けたのだ。
「あ、いえ。あと、もう少しだけ。」
「そうかい。じゃあ、よろしく。お先に。」
磯山は部下より先に帰ることに、まったく遠慮がない。浅川もさっと帰り支度を整えると、磯山の後を追うように出ていってしまった。どんどん事務所に人の気配が少なくなり、殆ど浩子一人になったところで、浩子はロッカーにバッグを取りにゆく。バイブが奥にしまわれているショルダーバッグはずっしり重く感じられた。
エレベータホールにはひと気がなかったが、敢えてエレベータを使わず、その脇にある鉄の扉を抜けて、非常階段を降りることにした。この時間、非常階段を行き来する者は居ない筈だった。浩子は人目にはつきたくなかった。
2階は、書庫やら機械室などで使われていて、普段からひと気はあまりない。しいんと静まり返った廊下を抜けて、指示された倉庫へ向かう。外の高架になった線路に向かって開いている窓のある、例の倉庫だった。廊下に誰も居ないことを確かめてからそっとその鉄の扉を開いて中へ滑りこむ。中には誰も居なかった。窓は相変わらず線路に向けて開いていて、カーテンもブラインドも無い。しかし、電車さえ来ていなければ、窓の外ははるか遠くに向かいのビルが見えるだけだ。
奥へ向かうと、机の上に何やら置いてあるのに、気づく。近づいてみると、1枚の紙切れの上に黒い物が載っていた。
それは、ゴムバンドで留めるアイマスクだった。夜間飛行の飛行機などで配られるようなものだった。紙には殴り書きで、(それを着けたら、両手を後ろに回して待っていろ)とだけ書いてあった。浩子はアイマスクを取り上げると、目に当てた。何も見えなくなることは不安だったが、それよりもこれから起るであろうことのほうにより大きな不安を抱いていた。アイマスクのゴムバンドを後頭部に回して固定すると、両手を背中に回す。その指示の意味は、浩子にはよく判っていた。
(縛られるのだわ。)
しかし、命令には逆らえないのだ。浩子は両手を背中に回して両手首を交差させて浅川を待つ。浩子の背後で微かな音がしたのが感じられた。
(ドアが開いたのだわ。浅川なのだ。)
そう思いながら、ふと、もし入ってきたのが、浅川ではなかった場合に、どんなことになってしまうのだろうと、別の不安がよぎった。
しかし、その不安を打ち消すかのように、手首に縄が巻かれたのを感じた。浩子の両手が手際良く括り付けられていく。縄が解けないようにきつく縛り付けられると、余った縄が後から浩子の首に回される。そして、首をぐるりと回すと、再び背後の手首のところまで縄の端が下ろされ、もう一方の縄の端に結わえ付けられる。浩子は首が絞まってしまわないようにする為に、交差して縛られた手首を背中の上のほうへ持ち上げていなければならなくなった。それはお尻さえも手で防ぐことが出来ないことを意味していた。勿論、身体の前部の股間もまったくの無防備なのだ。更に、余った縄の端が浩子の背後のテーブルの脚に結わえつけられた。
「脚を開け。」
声は確かに浅川のものだった。浩子は命じられるまま、脚を少し横に開く。深く切られたスリットから内腿が覗いていないか不安だが、確かめる術もなかった。
その内腿に何かが押し当てられた。感触からセルロイドの定規だとすぐに気づいた。尻を思いっきり打たれた時の感触は忘れられない。
その定規が、スカートのスリットに沿って、上のほうへ這いあがってくる。そして、それは浩子の穿いているショーツのクロッチ部分を押し上げる位置まで上げられて止まった。
「今日は、いいつけに背いたな。覚悟は出来ているのだろうな。」
浅川の声は、いつもより陰湿に感じられた。浩子は呑めと言われて呑めなかったグラスの水を思い出していた。
股間に当てられていた定規の感触がすっとなくなった。浩子のスカートの割れ目から引きぬかれた。浅川の手が今度は浩子のブラウスの胸元に伸びた。首に巻いていたスカーフがさっと解かれて引き抜かれる。
「牝豚奴隷・・・。マゾ女。」
ゆっくりと確認するかのように、銀色のプレートに刻み込まれた文字が浩子の耳元で囁かれる。
「ああ、言わないで・・・。もう、こんなものを毎日身につけているのは限界です。どうか、これを外してください。」
浅川の指が嵌められた浩子の首輪の中にねじ込まれ、ぐいと引かれた為に、浩子は頭を浅川のほうに向けて倒さなければならなかった。浅川は首輪を掴んだまま、浩子の顔をズボンの上から自分の股間に押し付けようとする。頬にあたる感触で、浅川がズボンの下で勃起し始めていることに気づいた。
「い、嫌。嫌です。」
浅川はわざと浩子の鼻先に自分の屹立しかかったものを押し当ててから、首輪を漸く放した。
「そんなに、これが嫌か。まだちょっとお仕置きが足りないようだな。・・・。ようし、そんなに言うなら、今日はこの首輪は外して帰してやろう。」
突然の浅川の言葉に、浩子は俄かには信じられない気持ちだった。
「ほ、本当ですか。ゆ、許してくださるのですか。」
「ふふふ・・・。喜ぶのはまだ早い。今晩は首輪が要らないってことだ。牝豚奴隷の証として別の物を着けてやるのだからな。」
浩子は浅川の言葉を聞いて、不安に身を震わせた。
その直後、スカートの中に手を突っ込まれ、ショーツを膝まで下ろされた。剥き出しにされた股間に、妙な感触を感じた。それは、おむつを当てられたような感じなのだが、妙に固い強張ったものだった。
「な、何っ・・・。あ、いやっ。」
浅川は浩子のスカートをすっかりたくし上げてしまうと、浩子の裸の腹のまわりにそのベルト部をしっかり回し、T字型になった帯を股間に通して、尻の上でベルト部分に嵌めこんだ。カチリという錠が掛かる音が浩子の耳にもしっかり聞こえた。
「なかなか似合うな。首輪よりもよっぼど牝豚奴隷らしい。・・・。いや、牝豚じゃなくて、雄豚だな。」
浩子には浅川の言っている意味が判らなかった。しかし、なにやら固い褌のようなものを股間に嵌められてしまったことは、感触から判った。しかもその腰回りのものはずっしり重かった。
「じゃあ、今晩はこの首輪は外してやろう。」
そういうと、浅川の手が再び浩子の首を捉えた。浩子は浅川に引っ張られるがままになるしかなかった。首の後ろで今度はカチンという音がした。浅川が鍵穴にキーを差込み、開錠したのだった。首の締め付けがすっと楽になった気がした。
浩子の頭から毟り取られるようにして、目隠しのアイマスクが外された。急に視野が開けて、眩しさに目を瞬かせる。そして気になっていた自分の下半身を見やって、愕然としたのだった。
(何なの、これは…。)
浩子の開かれた脚の付け根、深くスリットがえぐられたスカートの丁度一番深いところから生えているかのように、突き出ているのは、勃起した男根だった。勿論、本物である筈もなく、ペニスそっくりに模られた張り型であるのは間違いない。しかし、それがしっかりと浩子のスカートの下の股間に嵌め付けられているのだ。
「い、嫌っ…。」
思わず、浩子は振り外そうと腰を振ってみるが、股間の根本を中心にぶらぶらするだけで、腰から外れそうもなく、しっかりとまとわりついている。
「そのスカートのスリットが、勃起したペニスにはちょうどいい具合だな。へっへっへ。男みたいだな。」
「嫌よ。こんなもの、付けさせられるなんて。」
「どんな具合になっているか、見せてやろう。」
そう言うと、浅川は浩子のスカートの裾をつかんで、目一杯、上へたくし上げた。浩子の裸の下半身があらわになる。
それは、T字型になった分厚い革製の貞操帯だった。切り取ることも出来ないように鋼鉄製の鎖が埋め込まれているのが端にはみ出ている金属片で判る。股間の前を覆う部分は瓢箪型に膨らんでいて、そのちょうど中心に屹立した男根のような張り型が埋め込まれている。張り型は黒々した金属製のものだ。
「ほら、どうだ。」
浅川がその張り型のペニスを手でしっかり握ると、ぐいぐい横に揺らす。それと同時に、張り型の裏側にあるらしい突起が、浩子の陰唇に食い込んでいて、それがクリトリスの下側を強烈に刺激する。
「あうううっ…。」
股間を襲う強烈な刺激に思わず声を挙げてしまう浩子だった。
「いや、お願い。こんなもの、早く外して。」
「ふふふ。駄目だね。だって、それは罰なんだ。お前をたっぷり懲らしめる為のね。それを一晩突けっぱなしで過ごすんだ。明日、ちゃんと嵌めたままきたら、外してやろう。ちゃんと来ないと、一生それを嵌めたままってことになるんだぜ。」
「何ですって。これを嵌めたまま、一晩過ごす…。そ、そんな。これじゃ、おトイレにだって行けないわ。」
「なあに、垂れ流せばいいんだ。幸い、後ろは開いているから、大便のほうは出来るからな。」
浅川はそう言うと、浩子の股間に手を伸ばし、股の下をくぐらせて、尻のほうへ指を伸ばす。浅川の指の先が肛門近くに触れたことで、股の下を通ったあと、後ろで二股に貞操帯が割れていることが判った。
「貞操帯剥き出しのノーパンじゃ、恥かしいだろうから、こいつを穿かせてやろう。俺の穿き古しだけどな。」
浩子が浅川のほうを見上げると、いつのまにか浅川は白い男物のブリーフを手にしていた。両手が自由にならない浩子の脚を取って、片方ずつブリーフに足を通させる。両方の足が通ったところで、浅川はブリーフを浩子の腰まで引き上げ、器用にペニスの張り型をブリーフの前開きの部分に通して、男物のパンツを穿かせてしまった。男物のブリーフを穿かされ、その股間の部分から黒々したペニスを突き出させている姿は、却って恥かしさを強調するものだった。
「じゃ、明日の朝またここで。そうだ。明日は、この間買った、白いプリーツのミニスカートを穿いて来るんだ。あれなら、股間に勃起したペニスを嵌めていても、何とか格好がつくだろう。それとこのブリーフもな。いいな。言いつけを守るんだぞ。」
そう言うと、浅川は浩子の両手を縛った縄の片側だけを少し緩める。あとはもがけば少しずつ緩んでくるところまで解くと、そのまま浩子を残して、倉庫を出ていってしまったのだった。
浩子が緩みかかった手首に食い込む縄からようやく両手首を抜き取れたのは、浅川が出ていってから、15分は経った頃だった。もう追い駆けても浅川は捕まらないだろうし、追い着いても浅川がこの腰の戒めを外してくれるとは到底思えなかった。改めて、浩子はスカートをたくし上げて腰の貞操帯を調べてみた。腰に回したベルトと、股間を跨ぐ帯は真後ろのお尻の上あたりのバックルになった部分にしっかり嵌め込まれていて、浩子が力を掛けてもびくともしなかった。後ろ手に手探りで調べると、鍵穴があるのが判る。浩子は絶望感に見舞われた。そうするうちにも微かに感じていた尿意が次第に募ってくるのが感じられた。
浩子は上着を脱ぐと、スカートの前に片手で持って、スリットからはみ出ている張り型を隠した。上着を前に抱えている分には、スカートから突き出ている男根は何とか気づかれないで済みそうだった。その階には女子トイレはないので、浩子は非常階段を使って、事務所のある5階まで駆け上がった。もう事務所の明かりは消えていて、誰も残っていないようだった。浩子は事務所には入らず、まっすぐエレベータの脇の女子トイレへ駆け込んだ。
個室に入ると、スリットの入ったスカートと、浅川に無理やり穿かされた男物のブリーフを剥ぎ取るように脱ぎ捨て、個室の扉のフックに掛ける。しかし、それからどうしたものか、便器を前にして立ちすくんでしまう。このままではどうやっても垂れ流さずに放尿することは出来そうにもなかった。浩子は便座を持ち上げ、便器の上に跨ってみる。濡らすのを最小限にするには便器の上で、股を大きく開いてしゃがむしかなかった。我慢の限界がきて、股間からちょろちょろと小水が洩れはじめる。滴が貞操帯の内側を伝って、下腹部全体を濡らしてゆく。そして、貞操帯の端で溢れた小水が横から便器に向かって、ぽたぽたと垂れてゆく。
浩子は情けなさに目に涙を溜めた。
放出し終わって、まだぽたぽた滴が落ちているのを、脇からペーパーで出来る限り拭うが、貞操帯の裏側まで拭うことは出来ない。革製の部分が小水を吸ってじめじめして、気持ち悪かった。が、それ以上はどうすることも出来ない。便器から降りると、水を流してスカートだけをとりあえずまとう。それから個室の扉をそおっと少しだけ開いて、外に誰も居ないのをしっかり確認してから、洗面台へ向かった。バッグからハンカチを出して、水に浸してよく絞る。スカートのスリットからそのハンカチを股間に突っ込んで、もう一度貞操帯のまわりを拭う。微かにアンモニア臭が漂うのを否定できない。しかし、今はそれ以上はどうしようもなかった。浅川に穿かされたブリーフは身につけるか迷ったが、少しでも臭いが発散するのが防げればと、貞操帯の上に重ねることにする。そして、股間に突き出たペニスの張り型を上着で隠すようにしながら、女子トイレを出たのだった。
その夜の帰宅は屈辱的なものだった。浅川に居残らされた為に、帰宅時は超満員のラッシュ時に重なった。満員の電車を避けて、タクシーで帰ることも考えたが、それほど給料の高くない浩子の懐ろ具合では、都心から横浜までのタクシー代は痛かった。それでなくても、このところ浅川に衣装やら妖しげな道具やらをクレジットカードで一杯買わされてしまって、貯金の残金も心許ないのだった。もうひとつタクシーを躊躇わせた理由は、運転手と二人だけの密室に長時間居なければならないことだ。小水を含んで拭い切れない濡れた革の貞操帯が匂って来るのを運転手に気づかれるのが嫌だったのだ。満員の電車ならば、多少臭ったところで、誰のものかは判らないだろうと考えたのだ。
前の部分を常に上着で蔽って隠さなければならなかった。駅に電車が停まって、乗客が雪崩れ込んで来る為に、押されてつい上着を股間から離してしまわないか、気が気でなかった。
一度だけ、電車が急ブレーキを掛けた為に、吊り革の手で支えきれなくなり、隣に居た若いサラリーマンに倒れかかってしまった。その時に、浩子は股間の突起を思いっきりその男性のお尻に突き立ててしまったのだ。その異物感に立ち直ってから、その男性は不可思議な目でじろじろ見つめられてしまった。
男は勃起したペニスで突かれたように感じたに違いなかった。それで振り向いたところに浩子を発見して驚いたのだ。ある筈のないものを、男は浩子の上着で蔽った股間に想像したに違いなかった。浩子は顔が赤くなるのを隠し切れず、ただ俯いて堪えることしか出来なかったのだ。
浩子が堪えねばならなかったのは、それだけではなかった。満員電車を漸く降りることが出来た頃から、募り来る尿意と戦っていたのだ。会社で出した時、革の貞操帯が濡れてくるのが嫌で、思う存分出し切れなかったのがいけなかったようだ。駅から浩子のアパートまでは15分ほどを歩かねばならない。アパートまで堪えきれるか、自信がなかった。
最後は洩れそうになるのを股間を抑えながら、漸くアパートに辿り着いたのだった。トイレでは出来ないのが判っていたので、バスルームへ直行した。が、バスルームに辿り着くまでの廊下で、もうぽたぽたと股間から滴が垂れだしていたのだった。
バスルームでシャワーを下半身に当てながらの放尿も惨めだった。それでも、後に残る臭いを洗い流しながら出すのは、会社で放尿した後拭えないままで居なければならなかった時よりもずっとましだった。しかし、困るのがシャワーで洗い流した後始末だった。革製の為、中途半端に濡れてしまって乾かないのだ。ドライヤーを当ててみたが、半乾きにしかならないし、内側にはドライヤーの風は当てられないので、いつまでもじめじめと湿ったままだった。やっと乾いたと思うころには、また尿意が生じて、シャワーを当てねばならない。
仕方がないので、タオルを何とか貞操帯の下に滑り込ませ、褌のように股間に当てて少しでも内側が乾くようにしながら、濡れた革が肌に直接触れるのを防いだ。外側もタオルを巻いて、その上から浅川に強制的に着けさせられた男物のブリーフをオムツカバーのように当てた。それは見るからに惨めな姿だった。そして眠れない夜が開けた後、その惨めな格好の上に浅川に指定された超ミニのプリーツスカートを穿いたのだった。
浩子はドレッサーの鏡の前に立ってみる。プリーツスカートはフレアな為に、股間がもっこり膨らんでいても、あまり不自然には見えなかった。しかし、風で翻ってしまわないかが心配で、気がきではない。スカートの前を少し捲くってみると、すぐに黒光りするペニスの張り型が露出してしまう。せめて会社の近くまでは短いスカートをカバーしようと、上から別の長めの襞スカートを羽織ってゆくことにした。格好が野暮ったく見えるので、会社へは穿いて行ったことのないもので、箪笥の奥から引き出してきたものだった。上京してきたばかりの頃は穿いていた時期もあったが、都会慣れしてくるにつれ、浩子自身、服のセンスも向上してきたのだった。
これで会社近くの駅までは取り合えず、安心でいられると浩子は思った。
朝早くに一度、バスルームで放尿しておいた。もう一度出してからと思ったが、また貞操帯を濡らすのもしのびなかった。何としても拝み倒して、浅川にこの腰の戒めを外してもらうしかないと固く決意して、浩子はアパートを飛び出た。
いつもの駅に着いて、すぐに構内のトイレを目指す。ここからはセミロングの襞スカートは脱いでゆかねばならない。浅川に知られたら、またどんな罰を受けるか判らないからだ。トイレの個室で、襞スカートを脱ぎ、短いプリーツスカート姿になると、脱いだスカートを紙袋に入れる。募ってきつつある尿意を目の前の便器を使って、せいせいとしてしまいたいのだが、それが出来ないことがもどかしかった。
浩子は駅のトイレを後にすると、コインロッカーを目指した。それはトイレから少し歩いた先にあった。浩子が袋を空いているボックスの一つに押し込み、コインを入れようとした時だった。
「何してるのさ。そんなとこに仕舞う必要はないよ。」
どきんと心臓が鳴った。声は振り返らなくてもすぐに判るものだった。
「あ、浅川・・・。」
おそるおそる振り返る浩子の背後に浅川が立っていた。浩子はつまみ食いを見つかった子供のようなおどおどした表情になってしまうのを止められない。
「その袋を貸せ。」
そう言いながらも分捕るように浩子の手から紙袋をひったくっていた。
「ふん、こんなものを上に羽織ってきたって訳か。小賢しいやつだ。」
「そ、それは・・・。」
「まあいい。着いてくるんだ。」
浅川は返事も聞かずに、くるりと踵を返すと、会社のあるビルのほうへ向かって歩き出す。浩子はうなだれて、ただ浅川に従ってついてゆくしかなかった。
警備室のある通用門を警備員に挨拶しながら通り抜け、浅川は真直ぐエレベータへ向かう。早めに出てきたので、まだ出社してくる社員は殆どいなかった。浅川とふたりきりで、エレベータに乗るのは嫌だったが、拒むことは出来なかった。
浩子が浅川に続いてエレベータの庫室内に入ると、浅川は2階のボタンを押す。扉が閉まると、浅川は浩子に向き直る。
「壁を向いて立て。それから両手を後ろに回すんだ。」
威圧的な口調だった。浩子は黙って浅川の命令に従う。その浩子の後ろに出した両手首に冷たい金属片が当てられるのを感じた。手錠だった。
「あ、うっ・・・。そんな・・・。」
いきなり、会社の中で後ろ手に手錠を掛けられて、浩子はうろたえた。いつ、何処で誰に出遭わないとも限らないのだ。
しかし、朝早い会社内には人の姿はまだなかった。しかも、肩を突かれるようにして下ろされた二階のフロアは普段でもひと気の少ない場所だった。両手を拘束されたまま、今度は浩子が先に立って歩かされた。行く先は言われなかったが、例の倉庫に違いなかった。
倉庫の扉まで来て、後ろから浅川が手を伸ばして、ドアノブを捻った。浩子は両手の自由を奪われているので、浅川が開けてやったのだった。浩子は黙って、開かれたドアの中へ入る。
ドアが完全に閉まってしまうと、浩子は何も言われる前から、立ちはだかる浅川の前に膝をついて、頭を垂れた。
「どうか、この腰に嵌めたものを外してください。これではおトイレにもいけません。朝からずっと我慢しているのです。もう限界です。」
浩子は泣きそうになりながら、やっとのことで、ずっと言おうとしていた言葉を口にした。それは屈辱的な降伏だった。
「昨夜はどうしたんだ。お洩らししたのか。」
浅川の非情な言葉に、思わず唇を噛み締める浩子だった。
「ど、どうしても腰のものが外せないので・・・、バスルームで・・・シャワーを当てながら流しました。」
昨夜の屈辱的なことを思い出し、再び涙がこみ上げてくるのを感じる。
「それじゃあ、革の帯はぐっしょりって訳だ。」
嘲るように言うと、浅川は浩子の顎に手をあてて、上向かせる。浅川のほうを向かされて、浩子は睨むような視線を浅川にあてる。
「タ、タオルを当てて、何とか凌いでいるのです。お願いです。後生ですから、もう、これを外して下さい。いつまでもじめじめして、気持ち悪いのです。それに・・・、それに、もう・・・、もう出そうで、たまらないのです。」
「何が出そうなんだ。」
わざと虐めるように、浩子に恥かしいことを口にさせようとする浅川だった。浩子は、もうプライドを捨てるしかないと観念した。
「おしっこです。おしっこがしたいのです。もう、洩れそうで我慢出来ないのです。ああ・・・、恥かしい・・・。」
浩子は恥かしさのあまり泣き崩れる。それを尻目に浅川は、ふんと鼻を鳴らしてから、跪いている浩子の背後に回り、背中を蹴飛ばすようにして浩子の頭を床にあてて、這いつくばらせる。両手は背中で手錠を掛けられているので、浩子は顔を床につけて尻を出すしかなかった。短いプリーツスカートから浩子が穿いている男物のブリーフが丸見えになって覗いて見える。そのブリーフは貞操帯の内側と外側に巻いたタオルで、もっこりしていて、まるでオムツカバーを嵌めた赤ん坊のような格好だった。
浅川は蹲っている浩子の背後にしゃがみこみ、丸見えのブリーフを浩子の膝の上までずり下ろす。浩子の腰のまわりから、オムツカバーを失ったおむつのように、貞操帯を上から蔽っていたタオルがはらりと落ちた。黒い革に銀色の鋲を打ち込んだ貞操帯が露わになる。尻の部分は縦に切れ目があって孔になっているので、その真ん中に浩子の菊蕾が露わになる。
浅川はポケットから貞操帯の鍵を取り出すと、後ろ側のT字の要になっている部分にあるバックルの鍵穴にキーを差し込んで回す。カチリと軽い音がして、バックルが外れ、そのまま褌のようになった股間の帯が前へ垂れる。その先はバックルに差し込まれる四角い穴の開いた金具になっている。浅川は素早くその帯の先の金具を捉えると、浩子が逃げ出せないように傍にあったテーブルの下に通っているスチールパイプの桟に大きな錠前で繋いでしまう。
急に腰にまかれた貞操帯のベルトを引かれて、浩子は倒れないように膝を立てねばならなかった。貞操帯のベルトの先が繋がれたテーブルの桟は、中途半端な高さにあるので、立つこともしゃがみこむことも出来ず、浩子は中腰になってテーブルの脇に蹲るしかなくなってしまう。
「あ、何をするんですか。早く、おトイレに行かせてください・・・。」
浅川に懇願する浩子だったが、その声を浅川は無視した。
「お前のような牝豚奴隷がトイレで用を足させてもらえると思っているのか。これからお前の立場をよくわきまえさせてやる。」
中腰になっている浩子を残して、浅川は倉庫の奥へ進んでゆき、何やら手にして戻ってくる。そして浩子の足元に置いたのは、あちこちがでこぼこにへこんでいる古いアルマイトの洗面器だった。
「お前のおまるだ。どんなトイレがお前にふさわしいか、ようく覚えておくんだ。」
「な、何ですって・・・。こ、こんなものにしろと言うの・・・。ああ、もう我慢出来ないのに・・・。お、お願いっ。見ないで・・・。」
しかし、浩子の願いは空しかった。蔑むような視線で見下ろす浅川を無視して、その洗面器の上に跨るしかなかった。我慢に我慢を重ねていた浩子の括約筋が限界を超え、尿道口から激しいゆばりがほとばしりでた。奔流は、洗面器に当たって甲高い音をたて、浩子の足のまわりにも滴が跳ね返った。耳を塞ぎたいのに、後ろ手の手錠はそれさえも許してくれなかった。
「あ、ああ・・・。惨めだわ・・・。」
恥かしさに泣き崩れながらも、放尿を止めることの出来ない無様な浩子の様子に溜飲を下ろした浅川は、浩子に惨めさを噛み締めさせる為に、浩子を繋いだまましばらく放置することにして、浩子のショルダーバッグを奪い、部屋を出ていってしまったのだった。
浅川が出て行ってしまった後、小水の溜まった洗面器を足で隅に押しやってから貞操帯が繋がれたテーブルの上にうつ伏せに突っ伏したまま、暫く動けない浩子だった。浅川から受けた仕打ちに、あまりに自分が惨めで、打ちひしがれてしまったからだ。
しかし、暫くしてこうしていても仕方ないと思い立った時、自分が会社に来たものの、事務所にはまだ顔を出していないままなのに気づいた。出社したことになっていないかもしれなかった。浅川が言い繕ってくれていればと思ったが、自信がない。不自由な手錠で括られた手だが、なんとか携帯で連絡出来ないかと思って、ショルダーバッグを持ち去られていたことに初めて気づいたのだった。携帯はショルダーバッグに入れてあった。浩子には外部に連絡することさえも出来ない状態で、いまや奴隷である自分の主人にあたる浅川の帰りを待つことしか、浩子には許されていないことに改めてきづくのだった。
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