170丸太担ぎ

妄想小説

牝豚狩り



第三章 三箇月前

  その5


 由紀が目を醒ましたのは、睡眠薬の効き目が切れてきたことと、夢の中でも次第に募ってくるのが感じられてきた尿意のせいだった。はっと気づいた時には、自分が何かの棒のようなものに括りつけられて車に乗せられていることだけは振動と音からすぐに分かった。手足を動かそうともがいてみたが、どうにも身動き出来ない。両手は頭の下の丸太にしっかり縛り付けられていることと、両脚がそれぞれ足首と太腿をぴったり合わせるように括り付けられているせいで身動き出来ないことはすぐに分かった。口に貼られたガムテープのせいで声も挙げられない。くぐもったうなり声を挙げるのがやっとだ。

 首を横に振ることで、何とか頭の上から布を払いのけた。車の後部に荷室らしきところに寝かされていることが分かる。肩口から覗くもので、制服を着せられていることには気づいた。が、まさか下半身に穿かされているものが紙おむつだということまでは分からない。由紀は垂れ流してしまう訳にもいかないと、額に脂汗を掻きながら、じっと尿意に耐えていた。
 車の前方の座席には男が三人、横に並んで座っているのが見えた。そのうちのひとりが後部を振り返り、由紀と目があった。由紀は声にならないくぐもり音と、頭を振って窮状を訴えるように男に合図を送った。
 男は不思議そうに由紀の表情を見ていたが、直に由紀の窮状に気づいたようだった。ベンチシートになっている前部の背もたれを乗り越えると、後部荷室の由紀のほうへ近づいてきた。
 男はガムテープを貼られた由紀の顎をしゃくるように俯かせる。
 「おしっこがしたいんだろ、えっ。」
 屈辱的な問いかけだった。が、由紀には羞恥心で知らぬ振りをする余裕はもう無かった。目配せでそうだと男に応える。
 男の手が由紀の上に掛けられていた黒い布を手繰り除けた。下から制服姿で、下半身のスカートの中を丸出しにしている由紀の姿が露わになる。
 「その為にちゃんとあらかじめ、おむつを穿かせてるんだ。いいんだぜ、そのまま洩らして。」
 男は由紀に分かるように、手を伸ばして由紀の股間をまさぐる。がさがさという音に、由紀にも下半身に穿かされているものが何かすぐに理解する。が、そう言われてもすぐにはそのまま出せなかった。男の見ている前で、おむつに垂れ流すというのは、さすがに絶え難かった。しかし、尿意は募るばかりでいつまでも我慢が持たないことは由紀にも分かっていた。
 (せめて、こっちを見ないで。)
 由紀の痛切なる願いは声にならない。しかも男はそんな由紀の気持ちを見透かしたかのように、由紀の顔をじっと見つめ、横を向こうとする由紀の首を髪をつかんで真正面を向かせる。由紀は観念して目を閉じて、ゆっくり括約筋を緩める。漏れ出した小水が広がっていく嫌な感触に思わず表情が歪む。男は由紀のその表情の変化を見逃さなかった。
 「おっ、出したな。女警察官の空手の達人もおしっこは我慢が出来なかったか。」
 嘲りの揶揄に、由紀は顔を真っ赤にしてしまう。しかし、股間のほとばしりは止まらない。脚を折るようにして固定されている為に両足は腰の上に持ち上げるような格好に寝かされている。その為に漏れ出した小水は尻の割れ目を伝って背中のほうへ流れていく。が、背中から漏れ出す前に吸収体が小水を吸い取っていくのが分かる。
 我慢していた小水を出し切ってしまうと、由紀も腹が据わって、男のほうを睨み返す。由紀の心の中は、恥かしさから次第に怒りと憎しみのほうが募っていった。しかし、手も足も出せないのだった。
 由紀の怒りと軽蔑のこもった眼差しは、却って男の嗜虐心を煽ってしまった。抵抗の出来ない由紀を少し弄んでやろうという気をおこさせてしまったのだ。
 「怒っているつもりか。だが、今のお前には何の抵抗も出来ないんだぜ。ほれ、いい顔にしてやろう。」
 そういうと、男は由紀の鼻の下に指を当てて、思いっきり上へ押し曲げた。
 「まるで豚だな。ほら、鼻の穴をおっぴろげて、雌豚そのものだ。」
 由紀は目だけは睨み付けているが、男の卑劣な虐めにどうすることも出来ない。由紀には鼻が曲がってしまうのではと思うほど鼻腔を押し広げさせられたあと、漸く顔から指が離された。由紀のまなじりには薄っすらと涙が浮かんでいる。

 男は、由紀の目に涙が浮かんだことで、屈服しだしたことに嗜虐心をくすぐられ、自由の無い由紀に更に虐めを加えることを思いつく。男は無造作に広げられた由紀の下半身に手を伸ばし、内股の肉を二本の指で思いっきり摘んで捻った。
 (ううううっ・・・)
 ガムテープの下で由紀が声にならない悲鳴をあげる。
 「どうだ、痛いか。口惜しいか。許してくださいって、顔をしてみろ。」
 しかし、由紀は痛みを堪えて男を睨み続ける。男の指に更に力が加わる。
 (ううううっ・・・)
 「おい、やめとけ。客に出す前に身体に傷をつけると、こっぴどく叱られるぞ。」
 前の席に座っていたもう一人の男が由紀をいたぶる男のほうに声を掛けた。
 「ちえっ、分かったよ。しぶとい女め。」
 やっとのことで男は由紀の内股から手を離した。由紀の白い腿の肌には、薄っすらと赤い痣が出来かけていた。
 「そうだ、身体を傷つけないでも、いたぶってやる方法もあったな。ええっ。」
 男は再び由紀の顎を捉えて上向かせる。
 「今、洩らしたばかりの紙おむつを、剥ぎ取って臭いを嗅がしてやろう。自分の出したものがどんなだったか、見ておきたいだろう。」
 そう言うと男は由紀の腰骨の辺りに手を伸ばす。由紀は顔から血の気が引く気がした。由紀は自由にならない身体を捩るようにして動かせる限りで暴れて逃れようとした。あまりの騒ぎに前部に居た男がまた声を掛ける。
 「いい加減にしろよ。もうこっちへ戻れ。俺達は客じゃなくて、主催者側のスタッフなんだ。大事な商品に手を出して、こんな身入りのいい仕事を無くしたくないからな。」
 「わかったよ。ちぇっ。仕方ねえか。」
 最後の男は、由紀の内股をするっと撫でると、如何にも惜しそうにしながら、再び由紀の身体をしっかりと黒い布を被せて蔽ってしまうと、前の席に戻っていった。由紀は男の卑劣な辱めを何とか逃れられたことに安堵を憶えていたが、これからやってくるらしいことへの不安が高まるのも同時に感じてじっとしていたのだった。

 
 山奥の目的地に着くと、由紀はまず口のガムテープを剥がされた代わりにアイマスクのようなもので目隠しされた。それから足首に部屋に監禁されていた時と同じ1mほどの鎖で繋がれた足枷が嵌められてから足首と腿を括りつけていたロープが解かれた。無理な姿勢をずっと強いられていたので、脚に力が入らず、男達に肩を捕まれて乱暴に車から引き摺りだされたが、ちゃんと立つことが出来ず、地面に膝を着いてしまう。肩に荷負わされた丸太がずっしり重かった。
 後ろからやってきたらしい男に何やら首に巻かれ嵌められた。それは二本の長い鎖が繋がっている太い首輪だった。それで二人の男が両方から牽いてゆこうというのだった。相手の居る場所も見えない由紀には何もすることが出来なかった。ただ、鎖に引かれるまま、歩いていくしかなかった。男達はいつもの広場のようになっている製材所跡の空き地まで由紀を引いてくると、鎖の両端を二本の樹にそれぞれ繋ぎ、由紀を逃げられなくしてから目隠しを外した。

 「今はまだおとなしくしてろよ。どうあがいたって、その格好じゃ逃げられもしないんだからな。」
 三人の中でもリーダー格のような、ずっとバンを運転してきた男が、由紀に自分の置かれた立場を言い含めるかのように話し掛ける。
 「じっとされるままにしてろよ。そしたら今パンツを穿かせてやる。おいっ。」
 その男は先ほど車の後部荷室で、さんざん由紀をいたぶっていた小男のほうに顎で合図した。小男は嬉しそうに、由紀の物らしい白いショーツを手にして由紀のほうに近づいてきた。
 「おとなしくされる侭にしてるんだぞ。さもないと、最初からノーパンだ。分かったか。」
 由紀は、どう抵抗しても今のままではどうにもならないことが分かっていたので、小さく頷いた。男は由紀の下半身に手を伸ばし、スカートを引き摺り上げる。小水を吸って少し重くなった紙おむつが皆の前で露わになる。男は態とのように、両脇の粘着テープをゆっくり引き剥がすと、今度は一気に紙おむつを由紀の股間から引き剥がした。山の冷たい空気の中で、由紀の股間が剥き出しのまま晒されてしまう。
 由紀は男が自分の股間の臭いを嗅いでいるように思われて、居たたまれずに目を伏せてただじっとしていた。由紀の股間が濡れタオルのようなもので拭われていた。由紀は恥かしさに目を開けることが出来なかった。一通り股間が綺麗に拭われてしまうと、今度は足枷の鍵が外された。脚は自由になったが、ここで蹴り上げてみても何の役にも立たないことはよく分かっていたので、じっとされるがままになっていた。
 男は由紀に片方ずつ足をあげさせて、ショーツを足に通していった。そして由紀の後ろに回ると、腰骨のところまで一気にそれを引き上げた。
 下着を身に着けることを許されてから、やっとスカートが下ろされたが、その丈は、ちょっと不用意に脚を広げると、下着を覗かせてしまいそうな頼りない長さしかなかった。おそらく股下から裾まで数センチしかないだろうと思われた。ストッキングは着けさせてもらっていないので、大きく剥き出しにされた生脚の太腿が妙になまめしい格好だった。

 その時、峠の向こうから土煙をたてながら近づいてくる四輪駆動車の音が聞こえてきた。客を連れた首謀者の到着だったのだ。

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