妄想小説
牝豚狩り
第三章 三箇月前
その10
由紀はゲームの開始の時に首で吊られていた樹の枝に、今度は足首に掛けられた縄で逆さ吊りにされていた。身体は後ろ手に手錠をかけられたままうつ伏せになっているが、下半身は足首の縄で吊り上げられている。短いスカートはずり下がって、汚れかけたショーツを丸見えにさせてしまっている。時間の経過とともに、スタンガンの衝撃は収まってきていたが、まだ痺れは残っていた。
男から奪ったスタンガンは電池が消耗しきっていたのだ。おそらく持っていた男が無駄にエネルギーを使いきってしまっていたのだろう。由紀は事前に試しておかなかったことを悔いた。が、それはもう後のまつりだった。
由紀が晒されている格好は、普通の成人男子にも性欲を掻き立てない筈はない姿だった。白い腿は剥き出しで、その付け根の恥部を蔽っている頼りなげな一枚は丸見え。しかもそれは簡単に剥ぎ取れる状態なのだ。脚を開いて吊られてしまったら、前からも後ろからも犯し放題で何の抵抗も出来ないのだ。
しかし、由紀を捕らえた男は、普通に犯すということにはあまり興味がないようだった。捕らえられた野豚かイノシシのように由紀の動きの自由を奪うと、あとはそのまま晒して眺めているだけなのだ。男はこの後、どうやって料理しようかと思案している風にも見えた。
脚を高々と持ち上げられて吊られている格好は、苦しくはあったが、じっとしていると体力も少しずつ回復し、スタンガンの痺れも次第に収まってきていた。しかし、今度は手錠と縄が由紀の身体の自由を奪っている。
漸く男は立ち上がって由紀のすぐ近くまでやってきた。しゃがみこんで由紀の顎を掴んで自分のほうを向かせる。由紀の眼差しは怒りと抵抗の意思に燃えているように見えた筈だ。拘束されたままの女警察官がいまだに闘争心を失っていないのを見て、余計に男は嗜虐心をそそられてきた。
男は蹴飛ばすように、由紀の身体をひっくり返し今度は仰向けにさせると、転がされている由紀の上に馬乗りになった。
「なかなかいい面構えだ。まだ元気があるようで安心したぜ。」
由紀は男の意図が分からず、ただ男のほうを睨みつけていた。
男の手が由紀の胸元に伸びる。そして制服の上着、その下のブラウスとボタンを外し始めた。
(裸にされる。・・・いよいよ犯されるのだわ。)
由紀は観念した。武道の達人といっても所詮は男と女だ。ただ、由紀にはまだ男との関係という経験が無かった。大学時代からずっと武道だけに打ち込んでいて、性の経験には乏しかった。
上着とブラウスが左右に肌蹴させられ、ブラジャーは引き千切るようにして奪い取られた。裸の乳房がぶるんと震える。次にスカートのベルトが外された。横のファスナーが開かれ男の手によって腰から緩められる。男はそのスカートを、恥部を何とか蔽い隠していたショーツと共に、足首にまで引き上げてしまう。上着は拘束された背中の手錠のところまで押し開かれ、下半身の服は括られた足首まで押し上げられ、服をぶら下げたまま、肝心の恥かしい部分は丸出しにされてしまった。由紀には乳房も股間も隠すすべがない。
男が立ち上がって、ズボンのベルトを外し始めた。
(いよいよ犯される・・・)
由紀は覚悟を決めた。
由紀は男の陰部を見ないように顔をそむけていたが、男は由紀の下半身にのしかかってくるのではなく、由紀の脚を吊り上げている縄を解き始めたのだった。
由紀の脚を吊っていた縄は緩めないまま、足首のところの結び目を緩めだしたのだ。ある程度解けかかると、そこから手を離し、さっきズボンから引き抜いた革のベルトを手にして由紀の横に立った。
「後は、自力で解くんだ。解けるまでは、このベルトの鞭がいつまでもお前の尻を打つことになるから、急ぐんだな。縄が解けたら狩りの二回戦開始だ。」
由紀には最初、男の言っていることが理解できなかった。犯されるとばかり思っていたのが、どうやら違うらしいことだけは分かった。由紀が考えている間に、最初の鞭が由紀の裸の尻に炸裂した。
「パシーン。」小気味のいい音が山間に響き渡る。
由紀は痛みに顔を顰めながらも、必死で脚をすり合わせるようにして縄を解こうともがいた。
二発目が由紀の尻を襲った時、やっとのことで片足がロープから外れた。一本が抜けるともう片方もするりと縄を離れた。
三発目の鞭は空を切った。由紀はがくがくする膝で転げるようにしながらも何とか立ち上がった。膝下まで下ろされていたスカートとショーツは既に脱げてしまっている。肌蹴けさせられた上着とブラウスも背中に絡まってぶら下がっているだけで、殆ど全裸状態だった。
立ち上がった由紀に向かって、男はまだ鞭を振り上げていた。由紀にはただ逃げることしか出来なかった。その時、男の意図を理解したのだった。
男は、再び由紀の足を自由にして、裸のまま野に放とうとしているのだ。今度は後ろ手錠のまま。そして後ろから革ベルトの鞭で追いかけようとしている。鞭から逃れる為には、ただただ走って逃げるしかないのだ。
由紀は走った。丸裸の為に藪の中は走れない。小枝や幹の端で、身体が傷だらけになってしまう。それを裂けるにはただ、林道を走って逃げていくしかないのだ。男は追い駆けっこを楽しむかのように、着かず離れずに後ろを付いてきていた。少しでも由紀が歩みを緩めれば、容赦なく革の鞭が由紀の尻を襲った。由紀は無我夢中で走った。逃げ切れないのは分かっていた。しかし、今の後ろ手錠の状態では、男の空手の腕に反撃に出ても敵わないのは明らかだった。それに振り下ろされる革の鞭の恐怖が、反撃に出ることを考える余裕を与えてくれない。ただ、ひたすら息が切れるまで走るしかなかった。
峠を幾つか越え、由紀も、そして追う男のほうも次第に息がきれ、走る速度も落ちてきていた。その時に、最初の男を仕留めて手錠で繋いだ箇所に差し掛かったのだ。横目でそちらを見る。男が樹の根元にまだ繋がれたままじっとして、頭にリュックを被されたまま、こちらを窺っているのが見て取れた。男の目には、由紀の後ろ手に繋がれたままの全裸の格好は見えない筈だった。
「そうだ。ここらで、狩りを交代しよう。いい加減走り疲れた。今度はこいつに追いかけさせよう。」由紀にも聞こえるように、背後で男が大きな声で話し掛けた。
由紀の背筋に戦慄が走る。この男は折角由紀が捕縛し拘束した男を自由にして、再び由紀を追わせようとしているのだ。半日ほどの間、頭を殴られた上で、樹に繋がれたのだ。由紀に対して復讐心で燃えているに違いない。そんな男の前に手錠をかけられ裸に向かれた身を晒させようというのだ。
由紀は自分を追ってきた男が、樹に括りつけられた男のほうに向かってゆくのを横目で見る。
咄嗟に、由紀は男を手錠で樹に繋いだ時に、手錠の鍵を投げ捨てたのを思い出していた。
(あの藪の下だわ。)
手錠は簡単な構造のものだった。おそらく鍵もすべて同じものに違いない。藪の下に滑り込むと後ろ手に手探りで鍵を探した。
(もっと目印のある場所に落としておくんだった。)
しかし後悔している間はなかった。そうしている間にも男が樹に繋がれた男の手錠を外してしまいそうだった。由紀は焦った。向こうのほうで二人の男が立ち上がるのが見えた。
(間に合わないかもしれない。)
そう観念して、走り出そうかとした由紀の指先に金属片が触れた。それをさっと掴むと、もう走り出していた。向こうのほうで繋がれていたほうの男が走り出しているのがちらっと見えた。由紀はもう振り向かずに再び、走り始めていた。
追っ手は、最初は半日ずっと樹に繋がれていた為に足が痺れてうまく走れないようだったが、段々脚力を回復しつつあった。一方の由紀の方は、その前に既に全速力で走ってきたばかりで体力の消耗度合いは男の比ではなかった。次第に距離は狭められていった。遂に、坂を降りきった窪地のようなところで、背後から背中に絡まっていた服の端を掴まれてしまった。そのまま、林道の脇の草藪に引き摺り倒されてしまった。
もう体力の限界だった。膝ががくがく震えて足技も出すことも出来なかった。男は由紀を仰向けに倒すとその腹の上に馬乗りに跨って由紀の動きを封じた。男の手は由紀の顎を捉えた。由紀は観念したように目をつぶった。
男の強烈なビンタが由紀の頬を襲った。朝の仕返しのようだった。続け様に両頬を交互に打たれた。由紀は男の気が済むまでされるがままになっていた。
由紀の頬が真っ赤に腫れあがると、男の手は今度は由紀の裸の乳房に移っていった。優しい愛撫ではなく、引き千切らんばかりの鷲掴みだった。由紀は痛みに歯を食いしばって堪えた。
男の手は由紀に正面を向けたまま、背後に移っていった。そして自分の尻の下にある、由紀の剥き出しの陰唇を探り当てた。無防備の股間に指が挿し入れられた。クリトリスの上を親指でしっかり押え付けられたうえで、二本の指が乱暴に陰唇の中を掻きまわる。由紀は恥かしさも痛さももう感じられないでいた。ただ、少しでも痛みを避ける為に大きく股を割って男にされるがままに身体を許すしかなかった。そうしながらも、次第に潤んでゆく自分の生理的反応が情けなかった。
陰唇が、びちゃびちゃ音を立てるまで濡れてくると、男は一旦、馬乗りの状態から立ち上がり、急いでズボンのベルトを外し始めた。今度は間違いなく、性交を意図したものであるのは由紀にも分かっていた。男はズボンとパンツをいっしょくたにして膝まで下ろした。ちらっと見た男の股間に黒々としてみえた太い陰茎が首をもたげているのが見て取れる。
その時、由紀の背後でカチンという音がした。由紀もただ、男に身体を弄ばれていただけではなかった。背中の下の指は必死に手錠の鍵穴を探っていたのだ。
由紀は態と股を大きく広げたままにしていた。べっとり濡れた襞が露わに見えているピンクの陰唇が、黒々とした陰毛の下に口を開いている。男の目はそこに釘付けだった。男の硬くなった男根が更に上に反りあがる。
男が膝を折って由紀の股下にしゃがみこみ、将に太く尖ったペニスを挿し込もうとした瞬間に、由紀の両足は男の身体を挟み込み、背中から外した手錠ごと、両手の拳が男の頭に振り下ろされた。
一気に勝負はついた。男が由紀を陵辱することに夢中になっていたことが、一番の敗因とも言えた。まさか手錠を掛けられた獲物が、反撃をしかける準備をしているなどとは思いもかけない油断が由紀の一撃をまともに食らうことになったのだ。
男は最初の時と同じように、完全に脳震盪を起こして倒れていた。由紀は素早く立ち上がると、もう片方の手首からも手錠の鍵をはずし、それをそのまま倒れている男の手首に掛けた。
最初の時と同じように、手近にある手頃な大きさの樹に後ろ手に手錠をかけて繋いでおく。
男の自由を奪っておいてから、由紀は肌蹴けさせられていたブラウスと上着を羽織ってボタンを留める。下半身には身に付けるものは何も持っていない。しかし、この際格好を構っている余裕は無かった。すぐにももう一人のハンターが追ってくるかもしれないのだった。
次へ 先頭へ