DUMP搭乗

妄想小説

営業課長・桂木浩子 ~ 嗜虐の誘惑 (淫乱インストラクタ続編)



第六章

 その時、甲高いエンジン音が遠くから聞こえてきた。
 (チャンスだわ。)咄嗟に浩子はそう思った。
 しかし、近づいてきたのは、農作業に行くらしい軽トラックだった。荷台には、干草のようなものが山のように積まれている。浩子は近づいてくる軽トラックに手を挙げかけたが、運転席も助手席も農家の老夫婦らしき二人で塞がっている。諦めて手を下した浩子を、助手席の女将が不審者を見るように睨み付けている。運転席の人の良さそうな親爺は、さも惜しそうに何度も浩子の剥き出しの下半身を振り返りながら、通り過ぎていった。
 軽トラックが通り過ぎた後、暫く何の音沙汰も無く、行くべき方向もわからない浩子は途方に呉れていた。駅のほうへ戻って、場所を訊いてみようかと歩きかけたところに、別のエンジンの音が聞こえてきた。今度は大型のダンプカーだった。浩子は手を挙げるのをちょっと躊躇った。しかしこれを逃すともう当分車は来ないようにも思われた。浩子は思い切って近づいてくるダンプカーに向って手を挙げる。ダンプカーは一旦通り過ぎて急ブレーキを掛けて止まった。運転席から体を乗り出すようにして顔を見せたのは、手拭を頭に巻いたいかつい男だった。
 「なんだい、ヒッチハイクかい。今時、珍しいねえ。」
 ダンプカーの運転手は、露わな浩子の下半身を遠慮もみせずに嘗めるように見回している。それには気づかない振りをしながら、ゆっくりトラックに近づいていった。
 「XX町って、判ります?」
 「ああ、知ってるよ。いいよ、乗りな。」
 浩子は不安ながらも他に選択肢はないので身を任せるしかないと覚悟を決めた。浩子が助手席側に廻ると、男が中からドアを開けてきた。ダンプカーのキャビンはかなり高い位置にあるので、上背のある浩子と言えども、攀じ登るようにしなければならない。股下すれすれの丈しかないスカートなので、その中を覗かれてしまわないようにステップに足を掛けるのは難しそうだった。躊躇していると、男が手を伸ばしてきたので、それに掴まらざるを得なかった。キャビンに乗り込むのにどうしても脚を開かざるを得なかった瞬間を男の目は逃さなかった。助手席にさっと乗り込むとすかさず脚を揃えて膝の上にポシェットを乗せてカバーしたが、下着を覗かれたのは間違いないようだった。ポシェットの上に更に両手を置いて太腿が露わになるのを出来るだけ隠そうとしている横で、男の喉がごくっと鳴ったように思えた。
 「XX町の一丁目というところに、渡良瀬寮という建物があるようなんですけれど・・・。」
 おそるおそる切り出してみた浩子だったが、ダンプの運転手の答えは意外にも簡単だった。
 「XX町ったって、なあんも無い場所だから、間違いようはないさな。たしか、葦の原っぱの真中に、でっかい建物がひとつだけあるから、それだろ。あんな寂しいところへ、これから独りで行くんかい。」
 「あ、ええ・・・。知り合いが待っているものですから。」
 「ふうん。」
 男は不審そうに浩子の姿を頭の上から足先までもう一度撫でまわすように見てから、ギアをいれた。
 浩子は、寂しい場所、何もないところというのが気に掛かっていた。それで少なくともそんな場所で浩子独りではないという印象を与えたくて、知り合いが待っているという言い方をわざとしたのだ。知り合いが待っているというのはあながち嘘ではないが、確かに樫山が待っているという確証はまだ無かった。
 トラックが走り出すと、浩子は極力運転手のほうを見ないようにした。とにかく早く車が着いて呉れることを祈るしかないと思っていた。

眼鏡あり

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