新課長

妄想小説

営業課長・桂木浩子 ~ 嗜虐の誘惑 (淫乱インストラクタ続編)



第一章

 「あ、樫山部長様でしょうか。その節は大変お世話になりました。憶えていらっしゃいますかどうか・・・。営業と研修インストラクタをやっておりました、桂木と申します。桂木浩子ですが・・・。」
 正直、浩子は不安だった。自分のことを覚えていてくれているかどうか、自信はなかった。最後に逢瀬があってから半年が経過していた。
 (自分にとっては、一生忘れられない衝撃的なことだったが、樫山のような男にとって、もしかしたら、よくあることだったのかもしれない。行きずりの女のうちの一人にしか過ぎないのかもしれない。)そんな思いがどうしてもよぎってしまう。
 「桂木さん、桂木浩子さんっていうと、シエラシステムの桂木さんですか。」
 思わず浩子の胸が高鳴る。
 (憶えていてくれたんだ・・・。)
 浩子の脳裏をさまざまな場面がフラッシュバックする。その記憶に顔がぱあっと赤くなり、耳たぶが熱く感じられる。
 「もしもし、シエラの桂木さんですよね。」
 「あ、はい・・・。憶えていてくれたか、不安でした。その節は大変お世話になりまして・・・。」
 「いやいや、こちらこそです。すっかり、ご無沙汰しちゃって。システムは順調に稼動してますよ、おかげさまで。」
 システムの事は、本当はどうでもよかった。しかし、樫山に電話するには何かのきっかけは必要だった。
 「そうですか。よかった。お客様の中には、思ったように動いてなくて、そのまま放っておかれちゃうようなケースもあるんですよ。半年もフォローしないままになってしまったものですから。」
 「いや、あの時、何度も足を運んで貰って、細かく教えていただいたものだから。今ではすっかりシステムも定着して、便利に使わせて貰っています。」
 「いや、そう言って頂けると本当に嬉しいです。私も、遠くまで出掛けていった甲斐があります。・・・そ、それで、・・・。」
 そこから先を何と切り出すか、浩子はまだ迷っていた。相手の状況によって、臨機応変に話を切り出していかなければと思っていた。しかし、様子が判らないだけに、予めストーリーを決めかねていたのだ。
 「実はですね・・・、前回、お邪魔させて頂いた折に、上司の磯山というものが課長で居たのをご存知だったかと思うのですが。」
 「ああ、磯山さんね。何度かお会いしましたよ。お元気ですか。」
 「それが、磯山は一身上の都合で退職しまして・・・。今は、実は私が課長を務めさせて頂いております。」
 「ほう、それじゃあご昇進ですね。おめでとうございます。すると、一緒に仕事をされていた浅川さんと言う方は・・・。」
 「浅川は海外に転勤になりまして、今はもう居りません。」
 「そうですか。それじゃあ、もう私が知っているのは桂木さんだけなんだなあ。」
 自分だけと言われて、浩子は少し嬉しくなる。
 (そうなのだ。もう誰にも邪魔されることはないのだ。あいつ等には二度と戻れないようにしてやったのだった。)
 浩子は、さんざん、磯山や浅川に弄ばれていた頃を苦々しげに思い起こしていた。
 「そうです・・・。もう、彼らに何かされることもなくなりました。・・・やっと、自由になれたのです。・・・あ、いえ、何でもありません。それで、システムの具合を確認して、保守の必要性も確認しておきたいので、一度そちらにお伺いしたいのですが。」
 「そうですか。来て頂けるのであれば、歓迎です。私がご相手いたしますよ。」
 「まあ、嬉しいです。・・・あの、何でも致しますので、・・・何でもお申し付け・・・ください。・・・ど、どんなに恥かしいことでも、樫山様の為に、させて頂く覚悟でございます。」
 最後のほうは早口になったが、きっぱりと言い切った。
 「・・・・。」
 一瞬会話が途絶えた。浩子は思いが伝わったか、不安になった。しかし、匂わすだけで通じるものがあるのではと期待もしていた。
 (もう少し、具体的に言ったほうがいいだろうか。「縛って、虐めてほしい。」言ってしまおうか・・・。)
 「私だけの為に、来てくれるということですか。」
 あくまでも樫山は丁寧に訊いてきた。
 「そ、そうです。樫山様だけに・・・お仕えする為に・・・。」
 浩子は思わず、喉がごくっと鳴ってしまった。それが受話器を通して向うへも伝わった気がした。

眼鏡あり

  次へ   先頭へ




ページのトップへ戻る