妄想小説
営業課長・桂木浩子 ~ 嗜虐の誘惑 (淫乱インストラクタ続編)
第五章
真直ぐ数百メートルほど進んだ浩子にも、直感でここのことだとすぐにピンときた。それは平らな畠ばかりが続く土地の道路沿いに突然現れた古い工場跡のようだった。錆付いた鉄の門と、腰の高さほどの煉瓦塀で囲われた、少し小さめの学校の敷地ほどの広さの跡地だった。既に建物は殆ど取り壊された後のようで、建物らしきものは殆どない。廃材などがあちこちに乱雑に残っているだけのように見えた。門らしきところから真直ぐ入ったところに、何故か立派な前栽の植木だけが数本残されている。様子から、その直ぐ後ろに正面玄関のある建物があったように思われる。しかし、建物はすっかり綺麗に取り壊されていて、植木だけが残されていたようだった。 指示された場所はその敷地のほぼ中央付近のようだった。門は一応閉ざされているので、どうやって中に入ろうかと一瞬躊躇った。鉄の門は上背のある浩子には跨いで渡れないこともない気がしたが、あまりにはしたなく思われた。しかし、誰が通り掛るとも判らない場所にいつまでも不審者のように佇んでいたくなかった。浩子は意を決して鉄の柵を乗り越えることにした。両手を柵の上の桟に付くと、片脚を大きく開いて桟の上にかける。当然のことながら、スカートからパンティは丸見えになる。(えいっ)と気合を入れて、浩子は身を投げた。運動神経は必ずしもいいほうではないが、大柄なだけに、跳躍や鉄棒などは得意なほうだった。ひらりと柵の向こう側へ舞い降りると、ずり上がってしまったスカートの裾を急いで降ろす。その時、浩子のすぐ横で、ギィーッという音がして、柵の一部が倒れてきた。浩子が乗り越えた振動で、腐った鉄の柵の一部が崩れ落ちたのだ。しっかり錠が掛かっていると思った鉄の柵は、蝶番の部分が朽ちていて、押せばすぐに崩れる状態だったのだ。浩子は無駄にはしたない真似をしてしまったことを悟った。 しかしすぐに気を取り直して、樫山からの指示らしい地図を頼りに、印のついた場所を捜す。正面に見えた植木の陰に隠れて、敷地のほぼ中央らしきところに小さな小屋のようなものが見える。塀の位置関係からして、その小屋を地図は指しているように思われた。 浩子がおそるおそる近づいていってみると、その小屋はどうやら仮設の便所のようだった。おそらく解体作業をしていた業者の為の簡易トイレだったのだろう。トイレと呼ぶには忍びない、便所としか言いようのない場所だ。しかもそれももう朽ち始めているようだった。便所の半分は壁が取り壊されていて、便器が外に剥き出しになっている。かろうじて残っているのは、男子の小用便器が並んでいる小部屋のほうだけだった。最後の解体工事をする作業者たちには、それでも何とか役に立ったのだろう。おそるおそるその中に入ってみる。つうんと微かにアンモニア臭が残っているが、もうずっと使われてはいないようだった。
その時、浩子は妙に尿意が募ってきているのに気づいた。突然、便器を目にしたせいなのかと思ったが、気になりだすと、どうにも我慢が出来ない気がしてきた。冷静に考えることが出来れば、それがインド人老婆に飲まされたペットボトルに仕込まれていた強力な利尿剤のせいであることは、すぐに判った筈だった。しかし、辺りの異様な雰囲気に冷静に考えることが最早出来なくなっていた。浩子は何とかしゃがめそうな場所を捜したが、それは壁の剥がされた外から剥き出しになった便器しかなかった。壁の中にあるのは、男子用の立ってする小用のアサガオだけだった。したいと一旦思い出すと、尿意はどんどん募り出していた。最早、普通に立っているのも難しいほどだった。浩子は両脚をぴったり閉じて、手で下腹部を庇うように抑えて立っているのがやっとだった。最早一刻の猶予もならなかった。男子便器の前で、ショーツを膝まで下してみる。男子便器に股を開いて跨るように腰を突き出す。ちゃんと出せるかどうか確かめる余裕もないまま、浩子の股間からはゆばりが迸り出始めていた。立って放尿したのは、樫山に連れられて行った夜の公園の東屋に縄で吊られて洩らさせられた時以来だ。その時もしたたかに太腿を濡らしてしまっていた。何とか股間を押し付けるように放尿したのだが、立ってするのでは狙いが定まらない。大部分は何とか便器の中に流したものの、太腿を伝ってしまった分は浩子の膝に下されたショーツとストッキングを汚してしまっていた。下半身全部脱いでしまってからすべきだったと思ったが、あとの祭りだったし、脱いでいる余裕もなかったかもしれなかった。
出入り口の横にあった壊れかけた手洗いの蛇口をひねってみると、かろうじて水が出た。それで、浩子はポシェットからハンカチを出して水で湿して、股間の濡れたところを拭った。ショーツとパンストはぐっしょりというほどは濡れていなかったので、そのまま穿くしかなかった。
溜まりに溜まっていた小水を出し切ってしまうと、すこし落ち着いてきて、冷静になってきた。老婆に渡された紙切れには、この場所を示す地図しか無かったのだ。そこから先、どうしたらいいのか樫山からの指示がどこかにある筈だと浩子は考えた。便所の中を注意深く見回すと、アサガオの反対側の壁に四つに折られた紙が鋲で留めてあるのに気づいた。すぐさま浩子はそれを剥してみる。折られた内側にはワープロで打たれた指示の文があった。
「天井にある、ビデオカメラを外して持ってくること。道路に出て、車を拾い、XX町1丁目にある渡良瀬寮という場所まで連れていって貰う事。」とだけあった。ビデオカメラという言葉にはっとして、天井を見上げると、梁の上に赤く光る小さなランプが目に入った。落ち着いてみると、電源が入れられたビデオカメラが動いているのだった。浩子は近くに放置してあった大きなペンキの缶のようなものを持って来て、踏み台にしてカメラに手を伸ばした。カメラはガムテープで仮止めしてあるだけだったので、すぐに外れた。電源スイッチらしきものをすぐに切る。浩子にはそのカメラの中に映っている筈のものを悟っていた。誰にも見られたくないはしたない自分の映像がそこにはある筈だった。消去してしまいたいと思うが、機械に疎い浩子には、操作方法がわからない。それに樫山に無断で勝手に消す訳にはゆかないだろうと思ったのだ。浩子は手の平に入るほどの小さなビデオカメラをポシェットに仕舞うと、廃屋のような男子便所を出た。さっき入ってきた道路のほうへ戻る。無意識のうちに早足になってしまう。先ほど朽ちて崩れた鉄の柵の後を潜りぬけて道路に出た。車を拾えとあったが、通り掛る車は多くはなさそうだった。
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