掃除婦と鉢合わせ

妄想小説

営業課長・桂木浩子 ~ 嗜虐の誘惑 (淫乱インストラクタ続編)



第十三章

 「あっ、・・・。」
 食堂へ降りてきた浩子は、管理人がモップを使って柱の傍の床を拭っているのを発見して、顔を赤くする。
 浩子が挙げた声に、振り向いた管理人は、浩子に微笑みかける。
 「ああ、どうも。ご苦労さまです。」
 浩子は自分に話し掛ける管理人に、どこまで聞かされているのか不安になりながら、ゆっくりと近づいていく。足許に目を落とすと、床はもうすっかり拭われて綺麗になっているようだった。
 「いや、雨漏りでもしたんですかね。ああ、ゆうべは星も出るような天気だったから、そんな筈ないか。朝出てきてみたら、床の上にびっしょり水溜りが出来ていましてね。・・・、ああ、もしかしたらトイレの古い配管が修理中なんで、そこから伝ってきたのかもしれない。」
 浩子は耳が熱く感じながら、管理人の声に注意を傾ける。その場所は確かに昨夜遅くに浩子が繋がれていた筈の場所だった。浩子はそこで何をどれだけ洩らしたのか、もうはっきり憶えていないほど、激しく悶え、昇り詰めてしまっていた。何度いかされたかも記憶になかった。最初のうちは、突き抜かれる度に洩れそうになるのを必死で堪えていたが、身体の芯に突き抜ける官能は、やがて、浩子の自制心を全て奪い取っていったのだった。
 いつ、縄が解かれ、どのようにして部屋まで連れていかれたのか、浩子には全く記憶がなかった。気づいたのは、開け放たれた窓から途絶えることなく聞こえてくる鳥の囀りのせいだった。
 浩子はベッドで裸でうつ伏せになって寝かされていた。腰がというより、股の関節が、これ以上はもう使えないとばかりに、鈍い痛みを訴えていた。しわくちゃに乱れていたベッドのシーツの上にも微かな沁みの痕があったが、それが自分自身によるものなのか、それすらも記憶になかった。
 部屋を見渡しても、誰の姿も見当たらなかった。
 (自分は・・・、自分は樫山と一緒ではなかったのだろうか。)
 昨夜のことが全て嘘か夢のことであったかのような気持ちに、浩子は不安になる。ふらふらする頭を抑えながら立ち上がると、するするとシーツが身体から離れて、全裸の肌を露わにした。股間が熱く火照っていて、肉襞がじいんと痺れるような感覚があったが、その心地よさに酔いしれることに何故か罪悪感を感じてしまうのだった。おもわず、その割れ目を蔽う膨らみに手を伸ばしてしまう。指が触れただけで、潤みが伝ってきてしまう。
 (ああ、駄目。もう、いつまでもこんなことをしていては・・・。)
 浩子は服を探す。部屋の隅の椅子の上に、着て来たスーツとドレスブラウスがそっと置かれていた。自分で脱いで置いた記憶はない。
 ブラジャーはその下から出てきたが、ストッキングもショーツも見当たらなかった。ノーパン生脚での超ミニのタイトスカートは、さすがに心許なく、脚をすくませてしまうものがある。見られることの恥かしさもあったが、内腿へ滴を垂らしてしまうのではないかという虞が浩子を不安にさせた。
 (何か当てていないと)
 そう思ったが、浩子が身につけられるようなものが辺りに転がっている筈もなかった。
 シーツをさっと畳んで、沁みがついた部分を中に折り込んで見えなくしてから、浩子は階下の食堂へ向ったのだった。

 「あの、樫山さんは・・・。」
 やっとそう切り出した浩子だったが、管理人の返事はそれに答えずモップの手を止めてから浩子に告げたのだった。
 「駅まで私が送るように言われています。生憎、仕事用の軽トラしかないんですが、駅まで歩くよりはましでしょう。」
 そう言うと、車を取りに行くのか、モップを柱に立てかけて黙って出ていってしまった。
 管理人が居なくなるのを確かめてから、浩子はそっと膝を突いて、床に顔を近づけ、何か臭わないか、嗅いでみる。浩子が懼れていたアンモニア臭は特にしないようだった。

 軽トラに乗り込むのに、膝から裾の奥が覗いてしまわないように、浩子は細心の注意を払った。隣の運転席からじっと覗き込んでいる管理人の目に、自分の太腿が際々まで露わになってしまうのは、諦めざるを得なかった。それより、下着を付けていないことを悟られないことが大事だった。浩子は膝頭を外側に向けるようにして両腿を揃え、普通にしていても覗いてしまうデルタゾーンが運転席からは見えないように必死で隠した。
 「ゆうべはよく眠れたようですね。何せ男子寮なんで、部屋が男臭くて、寝苦しいんじゃないかと心配していたんです。」
 管理人は運転で前から注意を話さないようにしながら、話し掛けた。浩子は管理人が何を根拠に「よく眠れたよう」だと言ったのか、不安になる。まさか、自分の寝姿を見られたのではないかと心配になるが、訊いてみる訳にもゆかない。樫山と管理人の間でどんな会話が為されているのか判らないだけに、迂闊に何も訊けないのだった。自然と会話は途切れ勝ちになっていった。

 駅のホームに一人立って、管理人の軽トラが次第に遠のいていくのを見送った浩子だった。ローカル線は次が来るまであと暫く時間があるようだった。外国人労働者に囲まれて満員の電車に乗らねばならないのではと心配していた浩子だったが、駅には人っ子ひとり居ない様子だった。もっとも、工場へ出勤してくるのは下り路線で、上りの東京へ向う労働者はよく考えれば居ない筈なのだった。都心へ向う郊外のサラリーマンも、もう出勤時間帯は終わっている筈だった。結局、やってきた各駅停車のローカル線電車には、浩子の他に乗る客は居らず、電車内にも誰も乗っていなかった。ミニスカートの奥を覗かれる懼れがないので、浩子は安心してシートに腰を降ろす。見下ろす自分のスカートから太腿が惜しげも無く露わにされている。裾はもう股下ぎりぎりのところにあり、どんなに両腿をくっつけていても真正面からはその奥が丸見えの筈だった。往きの電車でもこんなに際どくパンチラが覗く格好をしていたのかと思うと、恥かしさに耳たぶが熱くなるのだった。

眼鏡あり

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