アカシア夫人

　第二部　和樹の嫉妬と貴子の迷い

　第二十五章

　「樫山君ね。やっぱり来て呉れたんだ。」
　貴子は山荘の玄関を開けて、訪問者を招きいれた。
　「転居通知にあった通りの建物だね。なかなか趣きがある造りだ。」
　「そうかしら。細かい造りは設計事務所の人に全てお願いしたものなんだけど。まあ、奥へお入りになって。今、お茶淹れるから。」
　「ああ、じゃお邪魔します。」
　貴子は、訪ねてきた男を居間の奥のソファに案内する。
　「木島は居ないの。」
　「今日は仕事の日なの。」
　「え、仕事・・・。まだ働いていたんだ。」
　「そう。週、三日なんだけど。」
　「じゃ、留守に悪かったね。あれ、だけど今日がいいって言わなかったって。」
　「そうだったかしら。ちょっとお茶、持ってくるわね。」
　貴子はお茶を取りにキッチンに行きながら樫山に寛ぐように言う。キッチンに入ってしまうと、スカートを腰のところで少し持ち上げる。生脚だが、今でも張りがあって自分でも綺麗だと自信があった。背は高くないので脚も長いほうではない。それを少しでもカバーしたくて、短いスカートを更に持ち上げるのだった。

　「家の中を案内するわ。こっちへいらして。」
　貴子は先に立って樫山を案内する。階段を先に上がっていくので、樫山の目に自分の脚が見えていることを充分意識している。
　「二階の上にロフトがあるの。ちょっと珍しい部屋なので、いらして。」
　そう言って、屋根裏部屋へ上がる螺旋階段を先に立って昇っていく。
　「へえ、この上、屋根裏部屋なんだ。結構、急な階段なんだな。」
　そう言いながらも樫山の目は貴子の短いスカートの裾へどうしても向いてしまう。

　屋根裏への入口の扉は押し開けるようになっている。そのすぐ下で立ち止まった貴子は直ぐ下まで来ている樫山を振り返る。
　「この扉、ちょっと重いの。手伝って下さる？」
　そう言うと、階段の途中で端に寄って場所を空ける。樫山は貴子の高さまで上がってゆく。階段の同じ段に乗ると、身体同士が密着しそうなほどの近さになる。
　「よいしょっと。」
　樫山が両手で観音開きになっている扉を押し上げると屋根裏部屋への扉というより、ハッチ状の入口が開いた。
　「へえ。面白い造りになっているんだな。」
　樫山のほうが先に屋根裏部屋に上がる。遅れて上がってくる貴子に手を貸すと、貴子も遠慮なく手を握る。
　「足許気をつけて。あっ・・・。」
　樫山が注意した傍から貴子が足を滑らせて階段を踏み外しそうになり、慌てて引き揚げる樫山のほうへ倒れこんできた。



　「ああ、ごめんなさい・・・。」
　そう言いながらも樫山の身体にしがみつく。樫山もバランスを崩して後ろに二人して倒れこむ。その瞬間に二人の顔と顔が近くなる。貴子は目を閉じている。その貴子の唇を樫山の唇が塞いだ。しがみついていた貴子の手の力が強まる。
　下になっていた樫山が貴子を抱いたまま身体を廻して、貴子の上になる。首に手を廻して貴子に唇を付けたまま更に引き寄せる。
　「ああ・・・。」
　貴子ももう夢中だった。

　「縛って欲しいの。」
　「えっ・・・。」
　貴子は恥ずかしさに顔を赤らめて俯いてしまう。
　「そのベッドの横の抽斗に、縄が入っているの。お願い・・・。」
　貴子は樫山に背を向けて、両手を後ろに重ねて出す。その手首に縄が巻かれたのを感じた瞬間、陰唇から何かが滲み出るのも自覚していた。じゅるっという音がしたのではないかとさえ感じていた。
　「ああっ・・・。」



　胸に残ったロープが巻かれるともう我慢出来ずに声を上げてしまっていた。両腕と胸がしっかりと括りつけられてしまうと、樫山の手が貴子の肌蹴てしまっているスカートの中に伸びてくる。尻の後ろから伸ばされた手が貴子のショーツの端を探り当てると、一気に引き剥がしてきた。貴子の股を大きく開かせると樫山が真正面から迫ってきた。
　「待って、お願い。咥えさせて。」
　自分からそう言うと貴子は縛られたままの上体を起こして、目の前の樫山の股間にしゃぶりついた。
　「ああ、逞しいのね・・・。」
　唇が触れただけで、その大きさに圧倒される。またも、股間から汁が滴り落ちたのを貴子は自覚していた。唇を尖らすようにして、樫山の反り返ったペニスを口に含む。
　（むむむ・・。大きいわ。）
　最早、貴子は口だけでは我慢できない。
　「ぷふあっ。お願い。もう我慢できないの。嵌めてえっ。貴子の、貴子の熱いおＸＸＸを慰めてぇ・・・。」
　樫山のペニスを口から放すと、貴子はのけぞって大きく股を広げる。
　「してっ・・・。お願いっ。」

　その時、樫山の背後から聞き覚えのある声が聞こえるのだった。
　「お前、何をしてる。おい、やめろ。やめるんだ。」
　「ああ、貴方。何故こんな時にやってくるの。いや、やめさせないでぇっ。」
　樫山のペニス欲しさに身悶える貴子。樫山の背後から二人を背後から引き離そうとする和樹。樫山の手が貴子の肩から離れ、そして遠のいてゆく。

　「ああ・・・、嫌っ。」
　その時、ふと貴子はベッドの中で我に返った。汗をびっしょり掻いていた。我に返るのに暫く時間が掛かった。
　（ゆ、夢だったの・・・。）
　辺りはまだ暗い。夜明け前のようだった。
　夢の内容のあまりの衝撃に、貴子はどうしていいか判らないでいた。
　（何時から、何処からが夢だったんだろう・・・。）
　思わず、貴子は股間に手を伸ばしてしまう。ショーツをちゃんと穿いている。その中に手を忍ばせてみずにはいられない。しかし、そこはつるっとして、一本の恥毛も残っていない。
　（ああ、あそこを剃られたのは、夢ではなかったのだわ・・・。）
　現実だったのは残酷な事実だけだと知って、貴子は更に打ちひしがれるのだった。



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