rapeend

アカシア夫人



 第一部 不自由な暮らし



 第十三章

 (やっぱり後を付けてきている・・・。)
 貴子は時々チラッとだけ後ろを振り返って、遠かった男の影が少しずつだが、次第に近づいてきているのを確認していた。最初のうちは一定の距離を取っていたように思っていたのだが、今はどんどん距離を詰めているのが分かる。
 貴子は走り出さないまでも、少し早足にしてみた。それでも男との距離は縮まってきている。男も早足でつけて来ているようだった。
 (家までは、まだ大分ある。このままでは追いつかれてしまう・・・。)
 貴子は恐怖を感じて、とうとう走り出してしまう。しかし、それは男に走って追いつくことを決意させてしまったようだった。
 「嫌っ。来ないで。」
 叫んでも、無駄なことは分かっていた。この山道では誰も通り掛かることも期待出来ない。もう一度後ろを振り向く。もうすぐ傍まで近づいてきている。男の顔が黒っぽくで今まではっきりと確認出来なかったのが、覆面レスラーのような目抜き帽をすっぽり被っているせいだと判った。
 このままでは追いつかれてしまうと、貴子は道から逸れて、脇の藪のほうへ入り込む。しかし、藪のほうが実際は走りにくく、却って裏目に出てしまう。貴子は背中のカーディガンの上から襟首を掴まれてしまうと、そのまま引き摺り倒されてしまう。
 「や、やめてっ。誰か、助けてぇ・・・。」
 貴子の悲鳴が虚しく山の中に響く。男は引き倒した貴子の背中に馬乗りになる。何とか男から逃れようと、もがく貴子だったが、男の力には叶わない。貴子が男を振り払おうと手をばたばたさせると、男はその手首を捉えて後ろに捩じ上げ、更にはもう片方の手首も捉えて背中であわせる。親指同士を片手でしっかり握られるだけで、貴子には手錠を掛けられたも同然に、身動き出来ない。男は片方の手で貴子の両手を押さえ込んでおいて、もう片方の手で腰からベルトを抜き取る。その革のベルトを貴子の手首に巻きつけると、両手を後ろ手に縛りあげてしまう。貴子が完全に抵抗出来なくなってしまうと、男は馬乗りになったまま、後ろに手を伸ばして、貴子のスカートの中を探り始める。
 「い、嫌っ。やめてっ・・・。」
 貴子の叫びも虚しく、男の手は確実にスカートの下のショーツを探り当て、引き剥がし始めた。
 (脱がされてしまう・・・。)
 しかし、革のベルトで縛り上げられた貴子には為す術もない。あっと言う間にショーツが膝下までおろされると、いとも簡単に足から抜き取られてしまう。男が投げ上げたショーツが宙を飛び、貴子の目の前にぽとりと落されるのをどうすることも出来ずにただ見届けた貴子だった。
 男は貴子の下着を剥がしてしまうと、貴子の身体に乗ったまま、腰の上から身体を下半身のほうへずらしてゆく。男の腰が貴子の尻を掠めるとき、男のモノが既にズボンの中で硬く屹立しているのを感じた。
 (犯される・・・。)
 貴子は陵辱される自分の姿を想像する。
 「お願い、やめて・・・。」
 男は更に貴子の太腿の上に馬乗りになる。男の手が貴子の短いスカートの裾に伸び、上へたくし上げていく。貴子の白い尻たぶが剥き出しにされる。それが男を更に欲情させたようだった。
 男は閉じられている貴子の両腿の間に手を割り込ませ、下から陰唇のほうへ手を伸ばしてくる。貴子は腿に力を篭めて挟み込み、何とかそれを阻止しようとする。
 「駄目っ。やめてっ・・・。た、助けてぇ・・・。」
 パシーン。
 その時、突然、遠くで甲高い炸裂音がした。鉄砲の音のようだった。
 男が振り向くのが気配で判る。
 「おーい。誰か居るのかあ・・・。」
 遠くで叫んでいる声がする。
 「助けてぇ~。」
 人の声と分かって、貴子は精一杯の声を振り絞る。
 馬乗りになった男は慌てて、貴子の口を手で塞いだが、遠くの声の主は近づいてきているようだった。男は地面に這いつくばっている貴子の肩を突き飛ばすような勢いで飛び起きると、貴子の目の前に落ちていた白いショーツをいきなり掴んで森の奥へと走り出した。
 「た、助け、て・・・。」
 貴子のほうも、声に力が入らなくなっていた。

 「大丈夫かね、あんた。」
 男は森で狩りをしている猟師のようだった。貴子は両手を縛られているので、服の乱れを直すことも出来ない。縛られた手を後ろに突いて何とか上体を起こすことで、捲れて上がってしまっていたスカートの裾を何とか股間が隠れるぐらい程度には引き下ろす。
 「何か取られたものはないかね。」
 貴子の様子から、物取りにあったのではないことは明白な筈だった。まさか、パンティを奪われましたとも言えない。
 「あ、あの・・・。解いて、貰えませんか。」
 貴子は蹲ったまま、背中の両手を猟師に翳してみせる。
 「ああ、縛られとったんか。」
 猟師は貴子の背後のほうへ回りこんできて、しゃがみこむ。貴子の縛られた手首に男の手が掛った一瞬、手の動きが止まる。男が生唾を呑むのが貴子には感じられた。
 「助けて・・・、くださいっ。」
 貴子は涙声になってしまう。
 「犯される・・・ところじゃったんか、あんた。」
 貴子は俯いてしまう。
 「あ、あの・・・。」
 そうですとも答えられない。貴子には何と言えばいいのか分からなかった。
 「あんた。その下、パンツ穿いとらんのじゃろ。」
 「・・・・。」
 (やっぱり、見られていたんだわ。)
 貴子が答えられないでいると、男は貴子の手首から手を離して、すくっと立ち上がった。
 貴子は顔をあげて、男の表情を窺がう。
 「今、解いちゃるけん。ただ、そん前に、あんたにして貰いたいことがあるんよ。」
 そう言うと、男は貴子の目の前でズボンのチャックを下ろす。
 「そ、そんな・・・。ああ、貴方までが・・・。」
 男の手が、ズボンの中をまさぐる。貴子の目にそれが飛び込んでくる。
 「ああ・・・。」

 その時、貴子は目を覚ました。ベッドの中だった。何時の間にか自分の指を股間に充てていた。その下のクロッチが潤ってしまっているのだった。
 (夢だったのだわ・・・。でも、森を独りで歩くのは、やっぱり危ないのかしら。)
 貴子は夫に相談すべきなのか、逡巡していた。夫に言えば、間違いなく独りで外出することを止められるだろうと貴子は思うのだった。籠の鳥のようになってしまう自分は寂しいし虚しい。自分だって、偶には他人と触れ合いたい、そう思う貴子だった。

madam

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