降参

妄想小説

牝豚狩り



第二章 半年前

  その11


 もう一人の男にはなかなか巡り合えなかった。お互いに山の中を探し回っているのだろう。一対一になると、お互いが動き回っていると、遭遇するのがむずかしい位の広さがあった。良子は歩き疲れて喉に乾きを覚えた。最初の男を繋いだ場所とはまた別の谷間に水の音がする場所があって、そこを注意深く降りていくと、そこにも清水が流れている場所があった。山の上から転がり落ちてきたらしい、大きな岩のすぐ下側に水の流れがある。そこへしゃがみ込んで、両手で水を掬って口にする。
 水を含むと、気分がやっと落ち着いてきた。それまで緊張の連続だったからだ。

 立ち上がろうと顔を上げて、ぎょっとなった。男はいつの間にかエアガンの銃口を良子に向けて立っていた。岩の陰に潜んでいたのだ。(迂闊だった・・・。)男は最初からここに居たのだろう。良子が近づいてくる音を聞きつけて身を隠して待っていたのに違いなかった。
 (二人を首尾よくやっつけたことで、つい油断してしまった。)
 良子は悔いたが、後の祭りである。
 エアガンは至近距離で外すことはないだろう。殺傷能力まではないと言っていたが、当たればかなりの打撃を受けるのは間違いない。足に何発も受けたら、まともに走れなくなるかもしれないと思った。良子は降参する時のように、両手をゆっくり挙げた。男も慎重に銃を構えている。
 「う、撃たないで。逃げないから。」
 「何時の間に手錠を外したんだ。さすがに現職の警察官だな。気に入ったぜ。しかし、残念だったな。もう逃げおおせないぜ。」
 良子はいきなり飛びついて倒せるかどうか計っている。撃たれる前に組み付くにはちょっと距離があった。相手に組み付ける前に身体のどこかにエアガンの衝撃を受けてしまうと、その後の格闘にも自信がもてない。
 「せっかく手錠を外したようだが、また掛けさせて貰うよ。だが、その前にしてもらうことがある。」
 「・・・・。」
 良子は男が何を考えているか、判らずに男の顔をじっと睨みつける。
 (スカトロ男のほうだろうか。サディストのほうだろうか。どちらにしても嫌な相手だ・・・。)
 「これからストリップをしてもらう。裸の肌にこのエアガンの弾は応えるからな。」
 男の言葉に背筋に水をかけられたような気がした。
 「まず、スカートの中に手を突っ込んでパンツを下げろ。膝までだ。」
 男の性欲は、普通ではないとは思っていた。しかしそれでも、いきなりの屈辱的な命令だった。
 良子は挙げていた両手をゆっくり下ろし、男に見えないようにお尻のほうからスカートを手繰る。パンティの端に手を掛けてゆっくり下へずり下ろす。膝頭の上に頼りなげにパンティが引っ掛かっている。ずり落ちてしまわないように脚を少し広げていなくてはならなかった。
 下穿きを男の前に晒させるのは、屈辱であるだけではなく、脚蹴りを封じられるという意味もあった。良子は今度の男が今までと違って、冷静で落ち着いているのを恐怖に感じた。
 「さて今度は、スカートを取ってもらおうか。パンティはそのままでいい。」
 男に命じられた通りにするしかなかった。
 良子はスカートの上に巻いたベルトを外し、新たに作り直された前開きのチャックを引き上げる。男の前でパンティを下ろしたまま、スカートを外して股間を顕わにするのはさすがに恥ずかしかった。片手に抜いたベルトとスカートを持ち、片手は股間を蔽って隠した。
 「ベルトとスカートをこっちへ投げて寄越すんだ。」
 仕方なかった。
 「じゃあ、今度は上半身だ。」男はライフルの先をぴったり良子に向けたまま、傍らの大きな石にゆっくり腰掛ける。良子が脱がされていくのを楽しそうに見物しているようだった。
 良子は制服の上着、ブラウスと順番に脱いでいった。
 「ブラジャーも取れ。パンツは膝のままでいい。」
 良子はパンティだけを膝頭のところにぶら下げただけの全裸にされて男の前に立った。男はそこまで裸にしてから、良子から目を離さないようにしながら片手で背からリュックを下ろし、中身を探り出した。男が取り出したのは、革の短いベルトと手錠、そしてその二つを鎖が繋いで一体になっている拘束具だった。
 「首輪を嵌めて、鎖を背中に垂らすんだ。そしたら、後ろ手に自分で手錠を嵌めろ。」
 拘束具を投げて寄越すと、男は命じた。
 最早、良子は恥部を隠すのを諦めた。首輪を拾い上げ、首に嵌める。背中に両手を回すと、恥部も丸見えになる。ガチャリという音がすると、良子の両手の自由が再び奪われてしまった。今度は前手錠にすることも、自分で首輪を外すことも出来ない。背中の鎖はそれほど長くないために、手錠に繋がれた両手を腰より上に挙げていなければ首が絞まってしまう。後ろ手で尻を庇うことさえ出来ないのだ。
 「ようし、牝豚らしい、いい格好になった。さ、尻を出せ。」
 男は良子のスカートを投げ捨て、良子が腰に巻いていた革のベルトだけを手にした。
 パシィーン。
 打たれたのが、自分でなければ小気味いい音に聞こえたかも知れない大きな音が山の中に木霊した。良子はあまりの痛みに、顔をしかめた。
 「じゃ、行こうか。」
 ベルトで鞭打たれた尻をさすりたいが、鎖で繋がれた手錠は打たれた場所まで手を届かせてはくれない。良子は男にうしろからこずかれるようにして、谷間を再び上のほうへ上がり始めた。身体を蔽ってくれるものが何もないので、笹の葉や、尖った小枝が良子の白い生身の肌を傷つけた。しかし、それよりも尻に受けた鞭の痕のほうがもっと痛かった。膝元まで下ろされたパンティは歩くのの邪魔にしかならなかった。
 再び林道まで登りきった。
 「さて、狩りの続きを始めようか。逃げていいぜ。」
 良子は男の意図を悟ってぞっとする。この格好で走って逃げさせ、後ろから追って行こうと言うのだ。男が手にしたベルトの鞭が空を切ってビュウと鳴った。それを合図に良子は走り始めた。転びそうになるので、自分でパンティを脚から抜き取った。すぐ後ろを男が付かず離れず付いてきていた。時々ベルトの鞭が飛んでくる。何度もしたたかに白い尻を打たれた。その度に足を速めるのだが、直に追いつかれてしまう。
 良子は泣きそうになりながら、ひたすら山の中の林道を走っていった。ふと、目の前に良子が手錠を掛けた男が見えてきた。まだ、外すことが出来ないようで、裸で走ってくる良子を見つけて、手を伸ばしてきた。その手が届かないように避けながら傍を通りぬける。そのすぐ後を、ベルトを持った男が追う。
 「おうい、助けてくれえ。手錠を外してくれえっ。」誰に頼んでいるのかも判らない情けない声が、背後で聞こえていた。良子を追っている男も無視をしていた。
 だんだん息が切れてきた。が、鞭で打たれる恐怖に良子は走り続けていた。気づくと、最初にゲームがスタートした場所まで来ていた。良子が最初に繋がれて晒されていた樹をみると、思わず力が抜け、膝からしゃがみこんでしまう。石ころだらけの道は剥きだしの膝には痛かったが、それも感じないほど、疲労困憊していた。そのまま倒れ込んでしまったが、男がすぐに追いついて後ろから良子の首輪を掴み、それにロープを通す。
 それから良子は首を曳かれるようにして最初に繋がれた樹まで引っ張っていかれた。ロープが横に張り出した枝に掛けられて、逃げられないように繋がれてしまう。男が吊られた良子のそばへ武器などを並べていたテーブルを曳いてきた。首輪に繋がれたロープは少し弛んで余裕があったので、良子はそのテーブルに上半身を持たせかけた。立っていられるだけの気力も残っていなかったのだ。手錠に繋がれた背中の両手を上にして、テーブルの上にうつ伏せに倒れ掛かる。白い尻が男の前に扇情的に突き出されてしまうのをどうしようもなかった。
 男が後ろでズボンを下ろしているのを気配で感じていた。まだ充分潤んでいない肉襞に屹立したモノが突き立てられた時、良子は最早これまでと観念していた。

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