葬儀10

妄想小説

恥辱秘書






第六章 二人の葬儀


 八

 翌朝、芳賀が目を醒ました時には、傍らに両手を背中で縛られたままの美紀がまだ目を醒まさずに寝ていた。着ていた喪服のままで、裾は完全にはだけきって、白い腿ばかりかその付け根に黒い茂みさえもが露わになっていた。芳賀は、美紀の痴態をそのままに放置して、身繕いを始めた。
 背広を着てネクタイを締めなおして出掛ける準備がすっかり整うと、座敷の隅に落ちていた黒い鋼鉄製の器具を取り上げた。そして、眠っている美紀の前に座り込むと露わになっている下半身に鉄のベルトをまわす。丸い筒状のものが美紀の陰唇に深々と挿し込まれ、カチンという音と共に錠前がしっかりと嵌った衝撃で、美紀は目を醒ました。股間をまさぐる異和感にまだ朦朧としている頭の中で、自分が今何処にいて何をしていたのかを思い出そうとしながら目を見開いて、やっと昨晩の出来事を思い出す。はっとして身を起こそうとして、両手がきっちりと背中で戒めを受けたままであるのに気づく。

 肩を畳みに突くようにしてやっとのことで身を起こし、横座りになった美紀だったが、裾の乱れは縛られたままでは直しようもなかった。
 芳賀は美紀の背後に回り、後ろ手の戒めを少しだけ緩める。

 再び芳賀は、美紀の眼の前に立ち、美紀を見下ろして言う。
 「それじゃあ、向こうで戻ってくるのを待っているからな。こっちのことを片をつけて戻ってきたら、股間のものは外してやろう。」
 そう言って、美紀に手にした貞操帯の鍵をかざして見せてから、くるりと踵を返すと、旅行鞄を取って玄関に向かう。背後には縄を解いて貰えず、自分で緩めるしかないあられもない格好の美紀が独り残されたのだった。


 芳賀は、何事も無かったかのように、美紀の家を出ていった。既に田畑に出ていた村の老人たちが、芳賀の車が通り過ぎるのを盗み見るようにしてみているのを、芳賀は全く気にもせずに、無視して走る。男たちの脳裏には、昨晩の妖しい記憶がまざまざと蘇えってくるのだった。

 残された美紀は、必死に縄を自力で解こうとしていた。芳賀が縄目を少し緩めておいてくれたおかげで、もがいているうちに次第に緩みは広がってきてはいるようだったが、解ける前に何時、誰がやってきてしまうかも知れず、それだけが不安だった。離れから年老いた老夫婦が起きてやってくることはあるまいとは思うものの、それとてあり得ないことではない。ましてや、村人の誰かが訪ねてきたりしたら、申し開きの出来ない格好だった。

 昨晩は思いっきり乱れて、恥ずかしさも感じていなかったが、一晩経って冷静になってみると、何ともはしたない格好だった。眼の前の畳の上には、脱がされたパンティがぼろ布のように丸まって落ちている。その向こうの色褪せた古い畳には、昨夜の失禁の跡らしき染みが出来てしまっていた。

 やっとのことで、片方の手首を縄から抜き取ることが出来、急いで戒めを解く。手首には縛られた痕の赤い痣がくっきりと出来てしまっていた。

 喪服はもう脱ぐことにした。一昨日の日にこちらへやってきた時に、義母が屋敷奥の長持ちから出してきてくれたものだった。ぷうんとナフタリンの臭いがしていたが、今はもうその残り香もなかった。

 シャワーを浴びたかったが、田舎の古い屋敷にそんなものがある筈もなく、薪で風呂釜を炊くしかなかったので、諦めることにした。鉄製の頑丈な貞操具の上に薄手のパンティを上から穿く。下手に動くと、破れてしまいそうだったが、貞操具剥き出しのままという訳にもいかないと思った。
 喪服の紋付を脱ぐと、こちらへやってくる時に着てきた黒いスーツに着替えた。一応まだ喪服でなければならないと思ったのだ。

 身支度を整え、軽く化粧をすると、バッグに入れて持ってきた離婚届け、遺族保証金放棄の誓約書を揃え、義理の父母の居る離れに向かった。最早、ゆっくりしていたくはなかったのだ。

 そして、芳賀を乗せた飛行機が空に上がってしまった頃、美紀は、夫の両親に暇乞いを告げていた。両親の前には離婚届けが判を押されて差し出されていた。最早、村に残ることは出来なかった。夫の賠償保険を全額、田舎の親に渡す引き換えに、離縁させてもらうことを美紀は選んだのだった。前の夜、芳賀の前で、性の奴隷となることを誓わされていた時からこの決心は出来ていた美紀だったのだ。

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