葬儀13

妄想小説

恥辱秘書






第六章 二人の葬儀


 十

 晴江が貞操帯のことを相談できる相手は一人しか居なかった。その事情を知っている唯一の人間、芳賀だ。晴江は夜遅くなっていたが、知っていた芳賀の携帯番号を使って、夜の公園に芳賀を呼び出した。人影のない住宅街のはずれにある小さな公園である。芳賀の家は正確には知らなかったが、棲んでいる傍にある公園だとは聞いていた。家人の居る芳賀は、夜遅くまで晴江に付き合わせ、この公園まで連れて来て、最後の務めを果たさせた。晴江は芳賀の恋人ではなく、単なる性の捌け口でしかなかった。ひと気のない公園での別れの前の最後の勤めは、甘いくちづけなどではなく、暗がりに跪いてのフェラチオなのだ。
 しかし、晴江にとってのそれは、弱みを握られての厭々させられているだけの奉仕ではなかった。嫉妬深いが、どちらかといえば性には淡白なパイロットの恋人との営みには物足りなさを普段も感じている晴江だった。若い晴江のほうが、性行為には貪欲だった。晴江のそんな満たされない気持ちを埋めてくれる存在でもあったのだ。
 晴江は芳賀の家庭での性生活のことは知る由もなかった。が、倒錯した性的嗜好は、家庭内で必ずしも満たされた生活を送っている訳ではないことを予感させてはいた。

 その晩はもう家に戻っていた芳賀だったが、晴江からの電話に「今から出るからちょっと待っていろ。」という返事だった。
 公園にぽつんとあるブランコに載って、独り淋しく待つ晴江に、暫くして足音が聞こえてきた。暗がりに目を凝らすと、ラフな格好に着替えていた芳賀らしき姿を認めた。晴江はその暗がりに向けて、走り寄って行った。

 「芳賀さん。私、一人では生きていけません。死んだ恋人の代わりになって頂けませんか。」
 晴江は、もはや芳賀に身を投げ出すつもりになっていた。自分の身を預けられる人間は芳賀以外にはないと思い込んでいた。芳賀の胸にすがるように抱きついていた。
 「駄目だな。」
 芳賀の返事は意外にも素っ気無く、冷たいものだった。晴江の身体を冷たく突き放したので、晴江はその場に尻餅をついてしまった。ミニスカートの裾が割れて、奥が丸見えになる。

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