
凋落美人ゴルファーへの落とし穴
第四部
七十六
「あ、ありがとうございました。鮫津さん。」
「いや、よくGPS通信機を持ちだせたね。あれが無かったらここまで追跡は出来なかったよ。」
「さっきの男がナイフで私を脅してここまで運転させるって言った時に、免許証が必要だって言ってその時にこっそり通信機の入ったバッグを持ちだせたんです。」
「危ないところだったね。ところで君、スカートは持って来てないの?」
「そ、それが・・・。あの男が車の中で私にスカートを脱ぐように命じて車の中に放りこんでしまったので今は取り出せないんです。」
「それだったら大丈夫。車のキーはここにあるから。」
「え? さっき藪の中に投げ込んだんじゃ・・・?」
「あれは僕のバイクの方のキーさ。そっちは後でゆっくり捜すとしてまずは君のスカートの方を取り戻さなくちゃね。警察が来た時に下半身丸出しじゃ幾らなんでも不味いだろ?」
そう言うと、鮫津はポケットから取り出したキーで男が断念して放置した車のドアを開け、後部シートからヨンのスカートを取り出してヨンに渡す。
ヨンは何とかパトカーが到着する前にスカートだけは穿くことが出来たのだった。
「あの人は逃げてしまったけれど大丈夫かしら?」
「問題ないさ。こっちの道は一本道しかないから、どんなに急いで走ったってパトカーを振り切るのは所詮無理だろうな。捕まるのは時間の問題さ。君は警察の調書取りを受けなければならないと思うけど、起きたことを正直に伝えれば済む筈だ。」
「あ、ありがとうございます。多分、私のマンションに侵入した際に使った合鍵も出て来ると思うので私を拉致して強姦しようとしたのは証明出来ると思います。」
「じゃ、パトカーがやってきたらさっと事情を説明して警察署で待っていて。その間に君の下着とかは届けるから。事情聴取の間、スカートは穿いていてもノーパンのままっていう訳にはいかないだろうからね。」
「あ、ありがとうございます。」
そんな会話を交わしている二人の前にパトカーが到着したのはすぐのことだった。
完

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