バイク救援

凋落美人ゴルファーへの落とし穴



 第四部



 七十五

 それはヨンが免許証を持参すると言って持ち込んだポシェットに入っていたGPSが位置を知らせて異変を教えて、やってきた鮫津に間違いなかったのだった。
 その姿を確認するや、ヨンは立ち上がって両手を後ろ手に戒められ下半身丸出しの姿のままバイカーの元へ走り寄る。

背後逃げ込み

 「おい、お前。何者だ? 邪魔をしようってえのか?」
 男は凄んでみせるが、明らかに動揺していた。
 「もうこれまでだ。さっき警察に拉致された女がY市霊園建設予定地の山の上で強姦されようとしているからすぐ来て欲しいと通報しておいた。もうじきパトカーも到着する筈だ。」
 「な、何だと・・・?」
 そう言い終わる前に、遠くの方からパトカーのサイレンが聞こえ始め、徐々に近づいてくるのが分かる。
 「く、くそう・・・。」
 男は慌ててポケットから車のキーを取り出し、ロックしてあるヨンに運転させてここまで乗ってきた車に走り込もうとする。その姿を見ると鮫津は一気に男に向かって走り出す。車の施錠を開けようとした直前に鮫津は男に追いついて後ろから体当たりを咬ませる。男の身体が横に吹っ飛び、手にしていた鍵が地面に落ちると、すかさず鮫津が拾い上げる。
 「て、てめえ。その鍵を寄越せっ。」
 男が凄んでみせて鮫津から鍵を奪い返そうとするが、鮫津は手にした鍵を遠くの草むらに向けて投げてしまう。
 「あっ、何をしやがる・・・。」
 男は車のドアノブを慌てて引いてみるがドアはしっかりとロックされたままだった。その間にもパトカーのサイレンの音はどんどん近づいて来ていた。
 「畜生っ。覚えていやがれっ。」
 そう言い捨てると男は車を捨てて、山を下りるもう一方の道のほうへ一人走っていく。



yon

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