闖入者ナイフ

凋落美人ゴルファーへの落とし穴



 第四部



 六十九

 「だ、誰なの、貴方? いったいどうやってここに入ったの?」
 男が手に持つナイフがキラリと光る。ヨンは男の方を向きながら後ずさりしていく。しかしすぐに壁際に追い詰められてしまう。
 男はヨンの方にナイフを翳したまま、顔に着けていたマスクとサングラスをゆっくり外す。
 「あ、貴方はあの時の・・・。」
 「憶えていてくれたようだな。俺の方は一日たりともアンタのことを忘れたことはないがね。」
 男は忘れようもない、リ・ジウに無理やり出席させられたパーティの翌日、ブーメランパンツの男から貰ったタクシー券で自宅に帰ろうとしていて自分を山の奥に連れ込んで犯そうとしたタクシー運転手だった。
 「忘れる訳ないでしょ。あんな事されたのよっ。」
 「された? それはこっちの台詞だぜ。アンタはされかかっただけで、俺は山の中に置き去りにされたんだ。しかも俺の車を飛んでもない所に置きっ放しにしやがって。あそこはY市の議員の屋敷だったんだぞ。おかげで警察にレッカー移動されただけじゃなくて、その議員が警察と一緒にうちの会社にも抗議の電話を入れて来たおかげで俺はクビにされる始末さ。」
 「そ、それは自業自得っていうものじゃないの? 私はただ必死で逃げただけなのよ。」
 「お前の恋人だか何だか知らないが、お前にタクシー券を呉れてた男が俺にそそのかしたんだぞ。お前はさせ子で何でもさせて呉れるってな。その証拠にノーブラ、ノーパンなんだって。」
 「うっ・・・。た、確かにあの日はノーブラにノーパンだったわ。でもそれには事情があるの。貴方には言えないけどね。それとタクシー券を呉れた男は恋人でも友達でも何でもないわ。」
 「それじゃ、何だってあの日、ノーブラ、ノーパンであんな男と一緒にタクシーに乗ってたって言うんだ?」
 「そ、それは・・・。」
 「とにかくあの日、俺を唆して襲わせた責任はお前にもあるんだ。あの時の落とし前はきっちり付けさせて貰うからな。」
 「お、落とし前って・・・。どうするつもり? 私をここで犯そうって言うの?」
 「いや。今すぐここでって訳じゃない。只お前を犯しだけじゃ腹の虫は収まらないからな。あの時のリベンジをさせて貰うのさ。」
 「リベンジですって? どういう意味、それ・・・。」
 「ふふふ。すぐに分かるさ。さあ、これからお前の運転で俺とドライブだ。着替えて貰おうか。」
 「き、着替えるって何に・・・?」
 「あの時と同じ服さ。お前の会社の公式ウェアだから、ここにちゃんとある筈だ。」
 「あの時のウェア・・・? それは勿論あるけど・・・。」
 「痛い目に遭いたくなかったらさっさと着替えな。」
 「わ、分かったわ。分かったからそんな危ない物、振り回さないで。」
 ヨンはなるべく相手を刺激しないように言葉遣いを気をつけながら一旦は男の言う通りにするしかないと判断したのだった。

部屋闖入

 「これでしょ?」
 ヨンは男が後ろで見ている前でクロゼットを開き、あの日身に着けていたデセックスの公式ウェアを出して見せる。
 「今着替えるからこっちを向かないでっ。」
 「そうはいかない。見ている前で着替えるんだ。」
 「ううっ・・・。わ、分かったわ。」
 ヨンは男に背を向けて外出着を脱ぎ取ると、男の指示するウェアに着替える。



yon

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