
凋落美人ゴルファーへの落とし穴
第四部
七十一
「そこのバッグの中よ。ほらっ、これ。このポシェットごと持ってっていいかしら?」
「まあ、いいだろう。」
ヨンは取り敢えずウェアのロゴがすっぽり隠れる大き目のスェットセーターをウェアの上から着こみ、何時もの帽子とサングラスにマスクを着ける。
「それじゃ車に乗るまでは両手を縛らせて貰うぜ。逃げ出したりしないようにな。もし逃げようとかしたらこいつでぐさりとやるし、その前にスカートは毟り取ってやるからな。」
男は縛ると言ったが実際には事前に用意してきたらしい手錠を出してきて、ヨンの両手を後ろ手で拘束する。その上で手錠の上からショールのようなものを掛けてカムフラージュしてヨンの片腕をがっしりと抱えるように持つと何時でもナイフを出せるように別のショールで隠しながらヨンをマンションから外へ連れ出すのだった。ヨンには逃げ出す隙は1ミリも与えないのだった。

マンションから外に連れ出されたヨンは、マンションのすぐ前にある時間貸駐車場へ連れていかれる。そこには男が乗ってきたらしい以前襲われそうになった時のタクシーと同じ車型の車が駐車してあった。ヨンはその車の運転席に手錠を掛けられたまま、乗り込まさせられる。
「この車、あの日のタクシーと同じ車型なのね?」
「憶えていたかい? そうさ。なるだけあの日の気分になれるように選んだレンタカーさ。」
「もしかしてこれからドライブに行くって言うのは、あの日のあの場所へっていうこと?」
「察しがいいな。さ、手錠を外してやるから背中の両手をこっちに出しな。手錠を外したらそのスェットセーターも帽子、サングラス、マスクも全部取るんだぜ。」
「わかったわ。」

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