
凋落美人ゴルファーへの落とし穴
第四部
七十二
両手の戒めを解かれ、両手が自由になったヨンは車をスタートさせる。道はよく分からないヨンだったが、次第に記憶の中に薄っすらとある風景の中を自分達が進んでいくのが分かった。
「どうして私のマンションに忍び込めたの?」
「ふふふ。別にそんなに難しいことじゃないさ。タクシー会社をクビにされた俺は復讐を誓ってお前のゴルフ試合を全て観戦に行っていたのさ。そして試合終了後お前の乗った車を付けさせて貰ってまずはマンションを突き当てたのさ。次は宅配便の変装をして他のマンション住人が入口を抜ける際に宅配がある振りをして一緒に玄関ゲートを潜り抜け、お前がやってくるのをずっと待ってたのさ。お前が郵便受けに立ち寄るのを待って部屋番号を確認したって訳さ。お前の郵便受けをその時調べたらスペアキーが入っているのを見つけたんで針金で取り出して合鍵を作らせて貰ったのさ。マンションの入口の暗証番号もお前の部屋番号じゃないかと試したところビンゴだったって訳さ。」
往きの車中でそこまで聞かされてヨンはぐうの音も出なかった。と同時に男の執念深さには舌を巻いていたのだった。

車が斜面を登り始め、Y市霊場建設予定地の看板を通り過ぎる頃からヨンは完全に記憶を取り戻していた。
「さあて、この辺でいいだろう。そこの空き地に車を停めるんだ。よおし・・・っと。じゃあ、そのスカートは自分で脱いで貰おうか。」
「え? スカートをここで脱げって言うの?」
「ふふふ。そうさ。スカート無しでこの車から降りるんだよ。そうすりゃ、幾らなんでもそんな格好で走って逃げる訳には行かないだろ?」
ヨンには男の言うことに抗う術は何も無かった。言われた通りスカートのホックを外し、足許まで脱ぎ下すと男にそのスカートをさっと奪われ後部座席の方に投げ捨てられてしまうのだった。
「さ、次は両手の自由を奪わせて貰うかな。この前は油断して股間を蹴られちまったんで、今度はそういう事のないようにまずは後ろ手錠で自由を奪わせて貰うぜ。」
男は前回のことに懲りているらしく、ことの他慎重だった。ヨンを後ろ手錠で拘束すると、下半身丸裸のヨンを運転席のドアを開けて外に突き出すのだった。

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