妄想小説
アニーから銃を取れ
五
「そこまでだ、アニー。銃を置いて両手を挙げろ。」
(え? まだ、誰か居たの・・・。)
アニーがゆっくりと後ろを振り向くと、黒ずくめの男がショットガンを自分に向けて構えているのに気づく。
(うっ、何時の間に・・・。)
一旦は応じる他はないとアニーは判断して、ゆっくりと拳銃を床に置くと、両手を挙げて無抵抗の意志を示す。
「へっ、助かったぜ。こいつは俺が預かっておく。」
すかさずゴンザレスが近寄ってきて、床からアニーの拳銃を奪い取る。アニーはそれを黙って見ているしかないのだった。
「随分、嘗めた真似をしてくれたじゃねえか。このアマがっ。」
ゴンザレスはそう言うと、アニーから奪った拳銃を逆手に持って、台座部分を手出しが出来ないアニーに顔面に打ち付ける。
「ううっ・・・。」
アニーの唇が切れて血が滲んで垂れる。
「おい、そこのゴンザレスっ。勝手な真似をするんじゃない。別にお前を助けた訳じゃないんだからな。」
「え? 俺の味方をしてくれたんじゃないのか。お前は誰だ。」
「俺はロックフォードっていう、しがねえ賞金稼ぎよ。このアニー・ザ・ガンレディって奴にはたんまり懸賞金が掛かってるんだ、この女に苦湯を呑まされた連中からな。撃ち殺したって百万弗、生け捕りにして連れ帰りゃ倍の二百万弗ってわけだ。だから、勝手に傷を付けたりするんじゃねえぞ。」
「そ、そうなのか・・・。わ、わかったよ。しかし、ちょっとぐらい仕返しをさせて貰ったっていいじゃないか。俺も煮え湯を呑まされた一人なんだからな。」
「駄目だ、今はな。ただ、お前にはちょっと手伝って貰おうか。さ、アニー。両手を挙げたまま、表に出るんだ。ゴンザレス、お前も後に続け。」
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