S149

早季子先生





 四

 次の朝、明に廊下で擦れ違った早季子は、放課後健二と一緒に職員室まで来る様に命じた。というより命じるつもりだったというほうが正しかったろう。
 「先生、職員室なんかで話をして他の先生に昨日のことがばれたりしたら困るのは先生のほうじゃないの。俺たちだけで話をしてやるから、授業が終わってから。うーん、そうだな5時に理科室に来いよ。一人でだぜ。わかったな。じゃ、あばよ。」
 そう言い捨てると、早季子の返事も聞かずにどんどん行ってしまった。
 早季子にはそれを制する力はなかった。
 最初から早季子にはどうしていいのか分からなかった。ただ、そのままにしておけなくて放課後職員室に来いなどと言ってしまったのだ。
 (どうしてあんなことしたの。)
 というようなことを何となく言うつもりでいたのである。しかし、(あんなことって何ですか。)などと大声で聞き返されでもしたら、それこそ明の言うとおり、困るのは早季子自身であった。
 (とにかく、今は独りで解決するしかないんだわ。)
 そう心に決めると、黙って自分の教室に向かった。

 午後五時、生徒はもう下校していなくてはならない時刻である。理科室は三階の奥にあり、誰もいなくなった教室を幾つも抜けて行った先にある。おまけに職員室のある棟からも離れており、おそらくこの建物内には誰も今の時間は居ない筈だった。
 ひっそりした廊下を抜けて理科室の手前の戸を開けた。
 がらがらと必要以上に大きな音を立てて、扉が開く。中には誰も居ないように見えた。
 しかし、早季子が中に入ってしまうと、後ろから扉が閉められた。
 明だった。どこから手にいれたのか、理科室の扉の鍵を取り出すと、錠をおろした。
 「誰にも邪魔されないほうがいいんだろ、お互いに。」
 そう言うとゆっくり早季子のほうに近づいてきた。いつの間にか、反対の側の理科準備室に通じる扉からは健二が出てきた。そしてそちらにも鍵を掛けている。
 「何であんなことしたの、あなたたち。」
 「そんなつまらねえ質問するなよ。きまっているだろう、先生をものにする為だよ。」
 「ものにするって・・・。それ、どういう事なの。」
 「鈍いね、先生も。先生の身体を自由にしようっていうんだよ。」
 「そんなこと、絶対させないわ。」
 「それはどうかな。先生の恥ずかしい写真やビデオ、自由に出来るんだぜ。」
 「何ですって。あなたたち、それをどうしようというの。」
 「学校じゅうにばらまいてもいいんだぜ。」
 「そんなことしたら、あなたたちの捕まるのよ。」
 「捕まるようなドジな真似はしないさ。例えば、あの視聴覚教材のビデオテープってのがあるだろ。あの中の一本の途中に先生の人には見せられないようなシーンのやつをダビングしておくんだよ。そしたら先生、どうする。あのテープは何百本ってあるんだぜ。そんなかから捜し出せるかい。そうこうしているうにち先公の内の誰かが教材として授業で使ったりしたら面白いことになるんだぜ。」
 「なんて卑劣なことを考えるの。許せないわ。」
 「先生、まだ自分の立場ってものがよく分かっていないようだな。そんな口の利き方が俺達に出来ると思っているのか。」
 「まさか、そ、そんな酷いことしないでしょ。」
 「それは、先生の心掛け次第という訳さ。俺達の言うことをおとなしく聞けばだな。」
 「 . . . 。わたしにどうしろというの。」
 「やっと少しは言うことを聞くような気になったらしいな。どうだ、俺たちの言うことを聞くか。」
 「 . . . 。あなたたちの言うことを聞けば、ビデオや写真を返してくれるのね。」
 「そうはいかないさ。ただ、ばらまかないでいてやるだけさ。いやなら、いいんだぜ。この学校中の男子生徒の間に先生のあんな写真がばらまかれたらどんな事になるかな。」
 「や、やめて。わかったわ。言うことを聞きます。それでいいんでしょ。その代わり、わたしが言うことを聞くから、由紀子さんの写真だけは返して頂戴。そしたら渡しは貴方達の言うとおりにするわ。」
 「じゃあ、言うとおりにするという証拠を見せてもらおうか。いいか、俺達が命令するとおりにするんだぜ。」
 「え、どうするの。」
 「スカートをまくりあげろ。パンティを丸見えにするんだよ。」
 「何ですって。」
 「言うことを聞きたくないってのならいいんだぜ。」
 「ま、まって。わかったわ。」
 早季子はうつむいてスカートに手をかけた。白い太腿が次第に覗いていく。そして遂に早季子の下穿きがあらわになる。
 「パンティは膝までおろすんだ。あそこを丸出しにしろ。毛を剃られたつるつるのものを見せるんだ。」
 少年たちは早季子が昨日受けた辱めを全て知っているようだった。早季子は口惜しさに唇を噛みながらも、言われるままにせざるを得なかった。

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