泣き顔

新任教師 美沙子





  九

 再び強烈な尿意が迫ってきていた。エレベータはゆっくりゆっくり各階に止まりながら上がってゆく。美沙子等が乗り込んだ2階の次ぎの3階で、おばさん風の連れ5人組が乗って来た。美沙子はぶるぶる震えながら尿意に耐えていた。
 「おや、おしっこでもしたいの。」
 エレベータじゅうの者に聞えるような聞えないような声で突然男が美沙子に向かって言い放った。美沙子は羞恥心に耳たぶを真っ赤にして俯いてしまう。
 (おしっこ)そう聞えた気がした他の客等は、横目で美沙子の身なりを眺める。股の付け根まで見えてしまいそうな短いドレスの美沙子の剥き出しの脚は挑発的で、おばさん等には顰蹙を買っていた。
 「漏れそうなの。」
 再び男が言った。
 「や、やめてください。」
 美沙子は恥ずかしさに消え入るような声でそっと男に言った。が、男は容赦しなかった。
 「おむつでも穿いていれば、立ってしても平気なのにね。」
 まわりの連中は、聞えてくる言葉をどう理解していいのか、怪訝な顔をしながら、それとなく窺うように美沙子らを横目でみている。
 しかし、だんだん我慢が出来なくなってくる美沙子である。
 5階に来て、扉が開くと、美沙子は飛び出ようとするが、男の手が美沙子の腕をがっしり掴んでいて逃げ出せなくしていた。
 (ゆ、許してっ、・ ・ ・ 。)
 心の中で、美沙子はそう叫んでいた。
 「出してしまえよ。」 
 男が耳元で囁く。
 美沙子は、立ったままでどうやって出来るのか、自信がない。が、もうトイレに駆け込むまでは持ちそうもなかった。
 いざ、出そうとしてもなかなか出ない。少し、脚を弛めて膝を落とし脚を気持ち開く。泣き出したいような気持ちだった。思い切って括約筋を緩めると、じゅるっと音がしたような気持ちがした。すぐに股の間に生暖かい感触が走る。美沙子は唇を噛む。
 「出てるのかい。」
 まわりにも聞えそうな声で男が非情にも囁く。美沙子はただ俯いているしかなかった。まっすぐ立つことも出来ず、脚をすこしがに股に開いていないとうまく出せない。そんな格好をまわりのおばさん等が珍しいものを見るように斜め見している。
 突然、男の手が美沙子の股間をミニのドレスの上からがっしり掴んだ。
 (あっ、)大声を立てそうになる。自分の出していたものが、おむつから漏れだしそうになって、その場にしゃがみこんでしまう。脚を閉じることができないので、ドレスの下に穿いているものが丸見えになった。慌てて手で膝を抱えるようにして隠す美沙子だった。
 まわりの女たちは侮蔑の表情で、美沙子の痴態を見下ろしていた。
 そして6階になって、女たちはエレベータをどやどや出ていった。
 (まったく、非常識な格好よね。)
 遠ざかり様に、そんな声が聞えたような気がした。

 「お次7階へ参ります。」
 案内の声で、エレベータガールがまだ居ることに今更ながら気づく美沙子だった。エレベータガールは美沙子のほうを見ないようにしているが、そうとう意識しているのは分った。ずっと男が喋る言葉を聞いていたはずだった。
 「次ぎ、最上階、屋上でございます。」
 その言葉に、もう降りるしかなく、閉ざされた部屋の中から解放されるのでほっとした美沙子だった。しかし、屋上はまた、次ぎの試練が待っていたのだ。

 吹き曝しの屋上は強風が吹いていたのだ。
 思わず、男の意図を意識して、短いスカートの裾を抑える美沙子である。が、おかまいなしの男のほうは、美沙子に顎で指し示して、屋上の真中あたりのベンチを指し示す。スカートの裾をさりげなく両手で押さえながら、なんとかそこまで辿りつくと、翻ろうとするスカートを膝の上におさえながらベンチに腰を下ろした。横に男が脚を大きく組んで座る。
 屋上は子供用の遊戯具が幾つかと、パラソルのついたベンチと椅子があちこちに並んでいて、後は端にスタンド風の売店があって、飲み物やアイスクリームなどを売っている。屋上には子供を連れた母親やおばあちゃんと言った連れが数組いるだけだった。
 男は再び、その奥の売店を顎で指し示した。
 「あそこへ行ってソフトクリームを二つ買って来い。」
 強い命令口調だった。何も持っていない美沙子に、男が千円札を一枚渡す。
 強い風の中を、再び立ち上がった美沙子だった。逆らうことは出来ない。なんとかスカートを抑えながら売店まで行った美沙子だったが、注文してお金を渡し、おつりと二つのソフトクリームを受け取ってしまうと、もはやスカートが全くの無防備になってしまった。お釣りを落とさないようにしてソフトクリームを2本とも片手で持つことなど出来る筈もなく、両手を使わざるを得ない。

パンツ丸見え


 観念して、スカートが翻るのも無視して、男のほうへゆっくり歩いていく。さすがに風が美沙子のスカートを大きくまくりあげ、下に穿いている紙オムツを露わにしてしまうと、屋上にいた親子の誰もが、注目して美沙子のほうを眺めはじめる。美沙子はただ、知らん顔をするしかなかった。

 「はい、買ってきました。」
 素早く手渡してしまおうとソフトクリームを男に突き出す美沙子だったが、男は受け取ろうともしない。
 「立って、はやく嘗めてしまえよ。ふたつともだ。」
 「そ、そんな。・ ・ ・ 」
 ソフトクリームなど嘗めたくはなかった。が、手を自由にするには早く食べてしまうほかはない。
 男は座ることさえ、許してはくれなかった。ベンチに座る男の前で、スカートをひらひらさせながら、ただ、ひたすらソフトクリームを嘗めなければならない美沙子だった。
 その間にも、再び尿意が襲ってくる。強力な利尿剤だった。そんなものを飲まされたことすら気づかない美沙子は、さっきからひっきりなし催してくるのを喫茶店で飲まされたタバスコ入りの二本のジュースとコップの水のせいだと思いこんでいた。
 「どうした。またしたくなったのか。さっきみたいにがに股になって、立ったままお漏らししてみろよ。ここで見ててやる。」
 男の非情な言い方に美沙子は深く傷ついた。しかし、両手も自由にならないまま、男の言うとおりにするしかないのだった。
 脚をわずかに折って股を広げた格好は不様としかいいようがない。しかも時折、強い風がスカートを煽りあげ、下に穿いた紙おむつを丸見えにしてしまう。
 美沙子は観念して、目をつぶって括約筋をゆっくり弛めはじめる。しかし3度目になる放尿に、その紙おむつはキャパシティを越えてしまっていた。ずっしりとおむつは重くなっていて、股のギャザのあたりから美沙子の内股に滴が漏れ始めるのを感じた。生暖かいものが内股を伝って足元に流れていく。しかし、もう美沙子にはどうしようもなかった。
 「垂れているぞ。しかも丸見えだ。」
 男は美沙子をなぶるように言葉で虐めた。
 美沙子は口惜しさに涙でいっぱいになっていた。

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