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新任教師 美沙子





  三

 その日はやっとやって来た休日だった。連日、下着を付けないで短いスカートの格好をさせられたせいで、緊張の毎日だった美沙子は、神経が疲れきっていた。まだ慣れない学校ということもあったかもしれないが、それだけではなかった。

 (今日は一日家でゆっくりしていよう)と思い、朝寝をしている美沙子だったが、玄関のほうで、ガタっという物音を聞いたような気がして、飛び起きた。
 上にガウンを羽織ってそっと玄関に向かう。が、特に誰がきた様子もなかった。
 念の為、玄関を開けて外を窺う。が、そとにも誰一人見えなかった。気のせいだったのだろうと、
 戸を閉めて戻ろうとした時、扉の下に何やら包みが置いてあるのに気づいた。

 辺りをもう一度窺って、誰も居ないのを確かめると、美沙子はその包みを拾いあげ、玄関の鍵を厳重に掛けて部屋に戻った。もう眠気は完全に消えていた。

 (あの男だわ。)
 美沙子はこれから起こるだろうことを、何となく予感した。

 茶色い紙に包まれた包みを開くと、中から出てきたのは、黄色いスカートだった。それは美沙子の持っているお気に入りのスーツのものとまったく同じだった。違っていたのはただその丈の短さだ。
 美沙子のスーツもミニの類いだったが、送られてきたそれは、更に10cmは短かった。
 予想どおりに手紙が一緒にはいっていた。いつものように紙切れにぎこちない文字が並んでいる。

 (今日はデートに付き合って貰う。10時に駅前の喫茶店「テラス」に送ったスカートを穿いて来い。楽しみにしてるぜ。)
 たったそれだけだった。

 時計を見ると9時をもう過ぎている。あまり時間の余裕はなかった。

 いつものスーツにスカートだけ送られたものに穿き替えた。サイズはぴったりだった。着終わって姿見に前身を映してみる。
 すらっと伸びた脚が、強調されるような超ミニサイズのスカートで、女の自分が見ても艶かしい。まっすぐ立っていれば、下着が覗いてしまうようなことはないが、試しに少し屈んでみると、しゃがまないまでも白い三角形の布きれが股間に覗いてしまう。
 ガードルを着けようとも思ったが、無駄な抵抗という気がして、少し厚手のストッキングだけを上から穿いた。

 家を出る時はもう10時に10分前になっていた。美沙子はスカートの裾を気にしながら、小走りに駅前の「テラス」に急いだ。



 その店は入ったことこそなかったが、駅前にあるのでよく知っているところだった。駅を降りて出て来ると、真正面に見える建物の2階にあった。前面ガラス張りで、白い柱、白い家具で統一された、いかにもテラスという感じの喫茶店である。

 問題はその入り口だった。2階にあるテラスに上がるのに、店の真正面にある少し急な階段をあがらなければならないのだ。
 美沙子は店の前に立ち、階段の上を見上げていた。日曜の朝で、まだ人通りは少なかった。美沙子は意を決して、店に向かう。
 手にしていたポシェットをさりげなく後ろ手に廻し、スカートの裾のあたりを抑えるように隠しながら一気に階段を駆け昇った。

 通行人が何人か目聡く美沙子の姿に気づいて見上げるものがいたが、美沙子は無視した。それほど美沙子の剥き出しの長い脚は人目を引いた。

 階段を上がってすぐの入り口の扉をカランコロンと音を立てて開くと、男を捜した。店内には殆ど客は居らず、窓際に一人だけ新聞を読んでいるサングラスを掛けた男が居るので、それに違いないと見当をつけた。想像していたより若そうに感じた。
 美沙子はゆっくり近づいていった。

 「あ、あのう、・・・」
 何と声を掛けていいか分らなかった。
 男が新聞から顔を上げた。じっと美沙子の顔を睨むように見つめてから、顎で斜め隣の席を示した。
 その席はガラス窓のほうを真正面に向いている。美沙子は男の意図を感じた。眼下には駅から歩いてくる通行人が往来しているのが間近に見える。

 美沙子は膝の上にポシェットを置いて、両脚をぴったりくっつけるようにして言われた席に腰掛けた。が、男はやはり無言で、顎を使ってテーブルの上を指す。
 美沙子には何のことか分っていた。ポシェットをテーブルの上に置けという意味だ。

喫茶店丸見え


 美沙子は脚をぴったりくっつけたまま、ゆっくりポシェットをテーブルの上に置く。片手を膝の上に載せてなんとか隠しているが、ぴったりしたタイトなミニは座った為にすっかりずり上がってしまい、手をどかせばどんなに脚をすぼめていても下着は丸見えになってしまう筈だ。

 男はポケットから何やら取出してテーブルの上に置いた。美沙子は訝しげにそれを注視する。
 それは、硬質のビニールで出来たクリップのようなものだ。電線などを束ねる時に使うもので、細い棒状の片側に孔があいたところがあり、もう片側の先は尖っている。その尖った先を孔に通し、引っ張ると物を束ねて縛ることが出来る。ラッチが付いていて、一回引っ張るとそのラッチに引っ掛かって抜けないようになっている。美沙子も引越しの時に使ったことがあった。

clip


 次に男は一枚の紙切れを美沙子のほうへ押し遣った。
 美沙子はあたりを憚りながら、さっと読んだ。
 (親指を揃えて背中に回せ。)
 両手を広げて親指のところをくっつけた絵まで示してあった。

 美沙子は男を睨むように見つめた。が、逆らうことは出来ないことは分っていた。男もじっと待っていた。

 美沙子は唇をかんで口惜しさを噛み締めながら男の命令どおり手を後ろに廻した。手を膝から離すと、剥き出しの太腿の付け根に白い三角形にパンティが露わになってしまった。

 男の手がゆっくり伸びてきて、ビニルクリップを取り上げると尖った先を孔に通し輪を作った。そして、美沙子のほうに肩を寄せるような格好で近づいて輪になったクリップを添えられた美沙子の背中の2本の親指に通す。
 (逃れるなら今しかない。)そう思った美沙子に諦めを告げるかのように、急にクリップの端が引っぱられた。美沙子の親指の付け根にビニルクリップが食い込むのを感じた。

 その時に向こうからウェイトレスが水をトレイに入れて運んでくるのが目に入った。
 美沙子は焦った。上から見ても、ずり上がったスカートは美沙子の下着を隠してくれない。もはや手を膝に乗せることも出来ないのだ。しかもテーブルも分厚いガラス板で出来ていて、下半身をテーブルの下に隠すことも出来ない。
 美沙子は両手を背中に合わせた不自然な格好で、ただ恥ずかしさに下を向いて無視をすることしか出来なかった。
 すぐ傍にウェイトレスの女の子が立っていた。美沙子は顔を上げることも出来ない。自分の股間がウェイトレスに注視されているのを痛いように感じる。

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