看護17

妄想小説

恥辱秘書






第五章 付き添い婦への姦計


 二

 吉村の点滴は、フロアの隅にある役員応接室が臨時に使われ、そこへ診療所からストレッチャーを運んできて、そこに寝かせて行うのだった。作業そのものは栄養駐車と大差ないので、看護婦一人で充分だったが、2時間ほど掛かるうえ、急な容態変化に備えて看護婦がずっと付いていなければならないのだった。

 そして明日がその点滴をやる予定日だった。芳賀は帰り際に、明日の点滴には必ず晴江が来るようにと命じて、診療所を後にしたのだった。

 その日の朝、芳賀は美紀に命じて、午前中に行う点滴の前に、執行役員の吉村が飲むお茶に手渡した薬を入れるように指示しておく。晴江から手に入れた睡眠薬である。早く聞き始めないように、点滴のぎりぎり前にお茶を出すように細かく指示をする。

 10時になって、晴江が設計本館最上階の役員応接室に、ストレッチャーを押してやってきた。事前に吉村にお茶を出しておいた美紀は、晴江からの「準備が出来ましたので。」というインターホンでの連絡に、吉村に点滴の時間になったことを報せにゆく。
 美紀は吉村を先導して、事務所の隅にある吉村の席から扉で仕切られた廊下に出て、建物隅にある役員用応接にはいってゆく。来ている看護婦は、体育館で恥をかかされたあの看護婦とすぐに気づくが、装って知らぬ振りをする。美紀も晴江もこの時点では何が起こるのか、芳賀が何を画策しているのか知らない。

 「じゃ、お願いします。」一礼して美紀は吉村を残して応接室を後にする。
 「ああ、君か。いつもその白衣が、可愛いね。」吉村は短く裾を上げてある晴江の看護婦の白衣の制服から露わになっている晴江の太腿を眺めながら、セクハラぎりぎりの言葉を口にする。
 晴江は吉村をストレッチャーの上に仰向けに寝せるとワイシャツの袖を捲り上げ、手際よくアルコール消毒してから点滴の注射針を指す。

 ストレッチャーの上で、じっと寝ている吉村だったが、そのうちすうすう寝息を立て始める。点滴中に寝てしまうことは珍しくないので、晴江は少しも怪しまない。後は寝返りなどで針が外れないように見ているだけですることもない。
 椅子を捜して座ってまとうかと思っているところへ、応接室のドアが静かに開いた。芳賀だった。

 芳賀が昨日、点滴には必ず晴江が来るように命じたのは、何かあるとは思っていた。が、吉村が居る前で、何かを仕掛けて来るとは思えなかった。
 芳賀はたっぷり水の入ったピッチャーを持っていた。それを晴江に差し出すと、顎でそれを呑むように命じたのだ。吉村のほうを振り向いて見るが、相変わらずスウスウと寝息を立てている。

  次へ   先頭へ




ページのトップへ戻る