姦計8

妄想小説

恥辱秘書






第十四章 再びの仕組まれた接待


 八

 裕美はもう一刻の猶予もままならないことを感じた。思い切って、モップを洗う洗面台に片脚を掛け、蛇口を両手で掴んで、洗面台の上に股を開いてよじ登る。なんともはしたない無様な姿だったが、裕美には恥じらっている余裕はなかった。
 その時、トイレの入口のスライドドアがキーと音を立てて誰かが新たに入ってくるのが感じられた。
 「裕美、居るの・・・。」
 美紀だった。裕美は再びパニックに陥る。が、もう我慢の限界だった。裕美の股間から迸り出る小水に水盤がけたたましい音を立てて排水口に流れ込んでゆく。
 「誰か、そこに居るの。」
 掃除用具室には鍵が無いことに気づいて慌てて、背後の扉を手で押さえようとしたが、届かない。身を乗り出して、扉を抑えようとしたところで、無情にも美紀の手によって大きく扉が開かれてしまった。

 放尿はまだ止まっていなかった。振り向いた裕美は目を大きく見開いて自分を見つめる美紀に目が合ってしまった。
 「何てこと、してるの・・・・。」
 美紀は当然想像していた事態に、驚いた振りを精一杯演じて見せる。
 「お、お願い・・・。見ないで。」
 そう言うのがやっとの裕美だった。
 しかし、洩らし始めた放尿は止められなかった。やっとのことで最後の滴を落としたところで、裕美はそのまま凍りつくように動きを止め、声を上げないで泣きじゃくり始めた。恥ずかしいところを見られた悔しさよりも、自分の無様な情けなさが悲しかった。
 美紀は掃除用具室に入り込み、後ろに手を回して扉をそっと閉めると、裕美をなだめるように肩に手を当てた。
 「もしかしたら、失禁症ね。おしっこがしたくなって仕方がないのでしょう。そういう人の話、聞いたことあるわ。」
 美紀は芳賀に教え込まれた嘘をつく。
 「ある日突然、精神的なことでなってしまうことがあるらしいの。大丈夫よ。誰にも言わないから。さっ、降りましょう。」
 洗水盤から降りるのに手をかしながら、美紀は裕美に優しく言うのだった。
 「もう充分出た?いいのよ、思いっきり出してしまって。・・・このままの格好じゃ、外にも出れないわね。・・・いいわ。ちょっとここでこのまま、待っていて。わたしが何とかするから。」
 そう言うと、美紀は裕美を掃除用具置き場に残して一旦外へ出る。

 何処かへ何かを取りにいったような間合いを計って、再度トイレの中に入ってきた美紀だったが、実際には道具はもうトイレの外に置いたバッグの中に用意してあった。怪しまれないように、すぐには戻らなかったのだ。
 掃除用具室の片隅に縮こまって泣いていた裕美の元に戻った美紀は、持ってきたものを裕美に手渡す。
 「これを着けるといいわ。新しいものを貰ってきてあげた。こういうお店にも、こんなものが用意してあるらしいわ。お客さんで、使っている人も時々居るらしくて、替えを貸してあげたりすることもあるようよ。」
 そう言って美紀が手渡したのは、真新しい大人用紙おむつの一パックだった。
 裕美は洗面台の中に落ちている使用済の紙おむつを美紀が見て悟ったのだと勝手に解釈していた。美紀が何と言って、店の者から新しい紙おむつを貰ってきたのかを考えると、恥ずかしさに顔が赤くなった。俯いたままで美紀が手渡すパックを受け取るが、美紀には顔も向けられなかった。
 「それから、その服じゃ、外に出れないでしょ。お店の人に言って借りてきてあげたんだけど、ホステスが座興に使うこれしか、今は置いてないんですって。」
 そう言って、美紀が手渡したのは、白っぽい布着れのようだった。美紀が外に出るのを待って、裕美が広げてみると、それはバドワイザーの宣伝用のニットのワンピースだった。ボディラインをあからさまに見せる超ミニのワンピースで、一時、宴会の座興などにコンパニオンが着たりするのが流行った時期があったのを、裕美も知っていた。
 (こんなもの、恥ずかしくて着て出れない・・・)そう思う裕美だが、濡らした服ではもっと恥ずかしい。裕美には選ぶ道はなかった。
 鍵はないので、また何時、美紀が入って来るか分らないので、意を決して着替えるべく服を脱ぎ始めた。濡れたスカートを抜き取って下半身裸になると、美紀から貰った紙おむつを当てる。今度も洩れるのではないか、不安でならないが、何も着けない訳にもいかない。腰に嵌めて、股間のギャザーの当たりを直すと、上に羽織っていたワンピースも脱ぎ、バドガールのワンピースを頭から被る。裕美の着てきたミニのスーツも短い丈だったが、バドガールの衣装は度を超していた。
 ニットの裾を一生懸命引っ張って下げてみても、股下ぎりぎりまでしかない。しかも伸縮性があるので、肩を不用意に動かすと、ミニの裾から下に着けたものが覗いてしまいそうになる。しかし裸で居るよりはましと、裕美は諦めて我慢することにする。
 バドガールの衣装を身に着けるや否や、扉が開いて美紀が顔を見せた。手には用意よくおおきな紙袋を手にしている。
 「あら、いいわね。セクシーよ、とっても。それから濡らした服はここに入れなさいよ。おしっこ臭さいものをずっと持ってゆく訳にはいかないでしょ。お店の人に頼んで、預かって貰うから。」
 美紀は有無を言わさぬ調子で、引ったくるように裕美から服を奪い取ると、さっと手にした紙袋に突っ込む。
 「さ、早く。部屋に戻らなくちゃ。」
 そう言うと、裕美の手を引いて、廊下のほうへ裕美を促す。
 「もうこのまま帰らせて。」
 請い願うような目で美紀を見て頼み込む裕美だったが、これには美紀が眉を尖らせた。
 「何を言っているの。貴方、自分の立場をわきまえなさい。長谷部専務の名代で来ているのよ。相手にどれだけ失礼なことになると思っているの。まったく、重役秘書とも思えないわ。」
 「ご、ご免なさい・・・。わ、わたし・・・。」
 「さ、ごたごた言ってないで、すぐに行くの。」
 美紀は裕美の手を引いて、ずんずん廊下を突き進んでいき、沢村の待つ部屋の戸を開ける。

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