騙された新人女優とマネージャー
第四部
七十六
ガツーン。
鈍い音が部屋の中に響き渡ると同時に玄太が崩れるように倒れ込む。
「茉莉さん。し、死んだの・・・、こいつ?」
「多分大丈夫よ。血が流れてないもの。脳震盪を起こしただけよ。でも急がなくちゃ・・・。」
何時息を吹き返してもおかしくないと判断した茉莉は深沢がいろいろ用意していた道具の中から手錠を選び取ると、床にのびている玄太の片方の手首に手錠を掛け、近くの柱に通してからもう片方の手首にも反対側の輪っかを掛ける。
「これで暫くは大丈夫だわ。由里っ。今縄を解いてあげる。」
「それより廊下の深沢監督の方が心配だわ。早く救急車を呼ばなくちゃ。」
「そうだったわ。ごめん。すぐ戻るから。」
茉莉は自分のバッグから携帯を取り出すと、深沢が倒れている廊下に走っていくのだった。
再び由里の元へ戻ってきた茉莉は、由里の縄を解いてやる。
「大丈夫だった、由里?」
「あ、ありがとう・・・。あいつを仕留め損なった時、もう駄目かと思った。」
「貴女が時間を稼いでくれたから助かったのよ。でも危なかったわ。それと深沢先生も大丈夫だと思う。微かだけれどまだ息をしてたし、救急車はすぐに駆け付けてくれる筈だから。」
「この男の悪企みも全部私のスマホに録音されている筈だから・・・。」
「ありがとう。由里ちゃんがここへ駆けつけてくれなかったら、私どうなっていたか。」
「私のほうこそ、新垣さんが居なかったらどうなっていたか。ほんとうにありがとう。」
夫々の協力で何とか事なきを得た二人は再度抱き合って互いの無事を喜び合うのだった。
完
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