騙された新人女優とマネージャー
第四部
七十一
「おう、なかなか似合うじゃねえか。どうだ、気持ちよくなってきたろ。」
「やめてっ。お願いっ。こんなもの、外してっ・・・。」
深沢に付けられたのだったら恍惚としてしまったかもしれない錘付きのニップルクリップは、見ず知らずの義理の息子によるものであれば屈辱の苦痛でしかなかった。
「その顔はそれだけじゃ足りないから、ここにあるピンクローターのバイブも陰唇の中に埋め込んで欲しいって感じだな。」
「い、嫌です。そんなもの、入れたりしないでっ・・・。」
「入れて欲しいからこそ、ここにこんなものが置いてあるんだろ。しかしそいつはもう少し後にさせて貰うか。まだ大事な仕事が残ってるんでな。深沢のオジキが変な遺言書を残してないか捜すのがここに来た一番の目的なんでな。それが済むまではこの乳首のクリップだけで我慢しておきな。ちょっとこれからオジキの書斎に捜し物をしに行ってくるんで、それまでここでおとなしく待ってるんだぜ。」
そう言うと、男は茉莉を放置したまま奥の部屋の方へ行ってしまうのだった。一人縛られたまま放置された茉莉は万策尽きた思いで項垂れていた。その時、廊下の方からゴソッという不審な物音を耳にしたのだった。
(えっ、誰かまだ他に居るの・・・?)
今しも玄太が出て行った扉から顔を見せたのは、思ってもみなかった由里の姿なのだった。あまりの驚愕に思わず声を挙げそうになるのを咄嗟に呑み込んだ直後に慌てて茉莉は口パクで(喋らないでっ)と合図したのだった。その無言の言葉は何とか由里に通じたようだった。無言で近づいてきた由里に茉莉は近くの部屋に居る筈の玄太には聞こえないように小声で由里に囁くように告げるのだった。
「不味い奴が近くに居るの。だから大きな声を出さないでっ。」
由里は(わかった)という表情で静かに頷く。
「深沢先生は?」
茉莉は一番気になっていたことを由里に訊ねる。
「廊下に倒れていました。どうしたのですか?」
(生きているの?)という言葉はさすがに発することが出来なかった。
「貴女はどうしてここに居るの?」
茉莉は一番訊きたかった言葉を発する。
「ごめんなさい。どうしても新垣さんのことが気になって飛行機に乗れなかったんです。それで事務所に戻って訊いたら深沢先生のお宅じゃないかというので住所を聞いてタクシーで飛んできたんです。あっ。今、縄解きますね。」
由里が新垣の背後に廻って縛られている茉莉の手首の縄を解こうとする。その時、背後から玄太が戻って来る音が聞こえてきたのだった。
「あっ、まずい。傍にやばい奴が居るの。こっちに戻って来るみたい。隠れてっ。」
咄嗟に茉莉は由里に急いで指示をする。由里が慌てて近くのソファーの陰に身を隠した直後に玄太が戻ってきたのだった。
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