妄想小説
牝豚狩り
第九章 想定され得ぬ事態
その6
美咲が目を醒ました時は、既に地下室の檻の中だった。衣服は下着を含めて全て奪われて全裸状態で、後ろ手に手錠を掛けられている。更には首にも革の首輪が巻かれ、檻の桟を通して天井の滑車に繋がる細い鎖で繋がれていた。足首にも、1mほどの長さの鎖で繋がっている足枷を嵌められている。
床は打ちっぱなしのコンクリートだが、美咲が寝かされていた部分には古い毛布が敷かれていて、部屋にはエアコンも入っているらしく、裸だが寒くはなかった。連れて来られた時に着けさせられていた紙オムツは既に外されていた。
ガチャリと音がして、鉄製の頑丈で重そうなドアが開くと、男が入ってきた。美咲は膝を上げて、不自由ななりながら、剥き出しの乳房と股間をなんとか隠そうとする。
後ろから襲われたので、男に見覚えがなかった。サングラスを掛けているところを見ると、冴子たちが話していた首謀格の男だろうと見当をつける。
「貴方なのね。私をおびきだして、こんなところに拉致したのは・・・。」
美咲は男を睨みつけるが、男は何も返事をせずに、美咲を品定めするかのように見下ろしていた。
「どうして、こんな恥かしい格好をさせるの。変態?」
後ろ手錠に素っ裸では、襲われても何も抵抗できず、ただ犯されるのに任せるしかない。美咲は身体を蹂躙されるのを予感して身構えていた。
「変態趣味って訳じゃない。少なくとも俺はな。服を着せないのは、用を足したくなった時に、いちいち脱がさなくても一人で用が足せるようにだ。それから、身体を洗うのにも都合がいい。大事な商品だから、汗臭くなっても困るんでね。これから毎日、食事と入浴は女に世話をさせる。シモの始末もな。暴れないでおとなしくされる通りにするんだぜ。さもないと、もっと恥かしい格好で繋がれることになるんだからな。いいか、判ったか。」
男に言われて、美咲はさっきから尿意を催していたことを思い出した。それで目が覚めたのだろう。思い出すと、途端に我慢が出来なくなってくる。膝をすり合わせるようにして、もじもじし始めた。後ろを振り返ると白い便器が檻の真中に据えられているのが見える。男が行ってしまうまで我慢できそうもなかった。
「お、おトイレを、・・・、おトイレを使わせて。」
下を向いてやっとのことでその言葉を口にした。
「トイレはそこにある。今見ていたやつだ。使っちゃいけないなんて、言ってない。その為にわざわざ服を着けさせていないって、今言っただろ。」
男はそう言って、檻の外にある椅子を引いて、そこへどっかり座り込んだ。
男の目の前で、放尿することを強いられているのだと判って、美咲は唇を噛む。しかし、今の美咲にはどう反抗することも出来ないのは判っていた。
ゆっくり立ち上がると、あとずさりして便器のところまでゆき、便座の蓋を後ろ手であげる。跨るとすぐに括約筋の力が緩んでしまう。
ジョボジョボと大きな音が地下室にこだまして、美咲は耳を塞ぎたいが、それも叶わなかった。
思いっきり出してしまうと、美咲は後ろを振り向いて、水洗コックを手錠を掛けられた後ろ手で倒し、水を流す。その音が聞こえたせいなのか、再び鉄の扉が開いて、陰気そうなメイド服を着た娘がお盆を両手に抱えて入ってきた。お盆の上には、トイレットペーパーが一つ載っている。
メイド服の娘は、男のほうには見向きもせずに無言で檻の脇にある鎖が繋がっているハンドルをくるくる廻し始めた。すると、美咲の首輪に繋がれている鎖が天井の滑車から引かれ始めた。
便座に座ったままで、ぎりぎり首輪がぴんと張るぐらい鎖を引き上げると、メイドはポケットから鍵を取り出し、檻のひとつだけある小さな扉の錠を開く。頭を下げるようにして小さな檻の扉を潜って、便座の美咲の前に出ると、膝をついて美咲の前に座り、トイレットペーパーの端をくるくると巻き取って丸めると美咲の股間にあてがった。
見知らぬ女にシモの始末をされるのは、屈辱的だった。美咲は、良子も瞳も、こんなことをされたのかと思うと、自分だけでない口惜しさに涙が出そうになる。
メイドは淡々と、美咲の股間をトイレットペーパーで拭ってから、水洗コックを倒してそれを流し、再び檻の扉を潜って外にでて、錠をかけてから、鎖のハンドルを廻して、首輪の鎖を緩めた。
「これからこの娘に面倒を見てもらうのは、こういう要領だ。いいな。下手に暴れても、あそこに監視カメラがあるから無駄だぞ。」
そう言うと、メイドの娘を従えて、鉄のドアの向こうへ男は消えていってしまった。
三日間、美咲はメイドに料理を口まで運んで貰って食事をし、排泄をすると、シモの世話を受け、夕方になると入浴させられた。手錠を掛けられたまま湯船につかり、メイドに身体じゅうをシャボンで洗われてからタオルで拭ってもらう。背中の手錠さえなければ、お嬢様気分だが、気分は奴隷か家畜にされたようだった。
男のほうは一日に一度だけ様子を窺うかのように無言できて、直に出ていった。一度だけ、メジャーを持って現れ、裸で拘束されたままの美咲のウェストやバストのサイズを測っていった。それが、コスプレ店で美咲にぴったりサイズの婦人警官の制服を誂える為だとは美咲は思いもしなかった。
美咲には、冴子たちに連絡がついていないとは思いもしていなかった。すぐに助けに来ないのは、犯罪の物的証拠を掴むタイミングを見計らっているのだとずっと思っていたのだ。だから、その邪魔をしないように、じっと男とメイドの女にされるがままになって、堪えていた。
三日目の夜は、いつになく丹念に身体が綺麗にされた。洗髪もされて、メイドが器用に美咲の髪をセットし、顔には化粧を施された。化粧が終わった頃、男が何やら服を一式抱えて持ってきた。美咲はいよいよ「牝豚狩り」なるものの本番が近いのを悟って、緊張する。
「明日は朝が早いからな。今のうちに準備をしておく。服も着せてしまうので、トイレの代わりにこのオムツでするんだ。」
そう言って、紙オムツのパックを美咲にかざしてみせる。拉致されてきた時も着けさせられていたのだが、美咲は意識がなかったので、それを使わせられたことすら知らない。
男は裸の下半身にオムツをあてがってから、美咲に服を着せ始めた。抵抗されないように慎重に、片手、片脚を檻の柵に繋ぎながら、手錠、足枷をはずし、片方ずつ着せていく。美咲には逃げる隙を与えなかった。尤も、美咲のほうでも冴子から指示があるまでは、勝手な抵抗はしないつもりだった。
着せられているうちに、美咲はそれが自分の正規の制服でないことに気づく。
(冴子さんは制服の胸章の下に発信機を縫い付けると言っていた。まさか、それがばれたのでは・・・。)
みるみる不安が美咲の胸のうちに広がっていく。発信機に気づかれて、冴子たちが撒かれてしまったのでは、自分を助けにくる術を失ってしまったのではと次々に不安が募ってくる。
制服のスカートは美咲は自分で短めにしているほうだったが、着せられたものはそれよりもっと短かった。ちょっと腰を屈めるだけで、下着が覗いてしまいそうなほどだ。
「明日は朝が早いからな。今のうちにたっぷりと寝ておけ。」
そう言い残すと、再び手錠で繋がれた美咲を残して男は出ていってしまったのだった。
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